8 入れ替り ひなサイドその3
庭つきの一戸建て。間取りは、3LDKと野郎二人で住むには少々広い家が、現在仁が住んでる家だ。
「 ただいま。」
私がドアを開けて入ると、スウェット姿でボサボサ髪の男性が迎えてくれる。彼の名前は、平原朝陽。仁の従兄弟であり、私のはとこだ。もう少し分かりやすく説明すると、私のお祖母ちゃんと朝陽さんのお祖父さん、更に仁のお祖父さんが兄妹なんだ。ややこしいけど、朝陽さんの亡くなったお父さんと仁のお母さんは兄妹だ。
うーん、やねこい。やねこいは、広島弁で、ややこしいとか難しいって意味だよ。って話それとるし。
「 お帰り。見た目仁で中身ひな。」
事前に伝えてあるとはいえさ、ツッコミ入れたくなるような言い方で、人を迎えるのはどうかと思う。
「 わざわざ、やねこい言い方せんでも。」
「 事実をまんま言うた《ゆうた》だけじゃ。それよか、早くシャワー浴びてこいや。汗臭い。」
「言われんでも分かっとるし。てか、訊かん訳? ウチと仁が入れ替わった理由。」
「 まあ、なんとなしには分かるし。ほら、俺って天才だから。」
「 さいですか。」
私は、そう言うと、仁の部屋に行き鞄を片付けて、着替えを持ってお風呂場に向かった。
――朝陽さんもどっちかというと、私タイプの人間だからな。私程じゃなくても、実験とかやりたがるタイプだ。
まあ、朝陽さん場合医者だから、実験とかしたら色々とヤバそうだ。
私はそんな事を考えながら、制服を脱いでいく。
学ランとワイシャツそれにスラックスを脱ぐと、白い半袖Tシャツとスポーツブランドのロゴ入りの黒いトランクス。
これを脱ぐと全裸になる。これが普通の女子なら、恥ずかしくて目をつむったりするとこだけど、あいにく私にはそんな可愛げはない。
実の兄が酔っぱらうと、全裸になって踊るという人間だから、男性の裸を見ても、全然恥ずかしくもないし、嬉しくもない。あっ観察したい放題って意味じゃ嬉しいかも、つう訳で、観察させていただきます。
「 全然楽しくない。」
観察したい放題なのに、鏡に写る全裸を見て全然楽しくないし、下を見ても変な気分にもなりません。
いつも自分の体を見てるのと変わんない。シャワーで汗を流して、ボディソープで体を洗いながら、ああ筋肉しっかりついてるね。って思ったくらい。
お風呂から出た私は、つまんないから、スマホの無料通話アプリで、仁にメッセージを送ってやる。
『仁の体を隅々まで、じっくりと観察させてもろうたよ。うひっひ。』
さてどんな反応するかな? 観察しても、全然楽しくなかった腹いせだ。
程なくして返信が来た。
『 そんな報告イチイチせんでええけ。それよか、お前、今日の課題やっとけ。しとらんかったら、明日疑われるで。そのかわりに、写させろ。』
なんじゃつまらん。冷静に返信してきたし、いや冷静に見えるけど、すんごい内心焦っただろうな。
リョーカイと返信し、私は、一人あたふたしながら、仁がメッセージを返信する姿を想像しながら、課題をやり始めたのだった。