ある日の短髪と三つ編み
「浅草やー!!」
短髪で活発そうな関西弁の女子高生が、両手を振り上げ、心底楽しそうに声を上げた。
そんな彼女の頭を、凛として静かな雰囲気の三つ編み女子高生が叩く。
「もう少し落ち着きなさい、恥ずかしい」
母親のような台詞を口走る、その三つ編みは少々呆れ顔だった。
けれど短髪は、そんな小言もどこ吹く風。マイペースにちょろちょろと動き回る。
「そんなことより見て見て!なんか有名なお寺さんやで!」
「浅草寺ね。ちゃんとパンフレットに…」
「あ、これテレビで見たことあるわー。ホンマにでっかい提灯ついとる!」
「それは雷門といって…」
「なにこれ、あまぁい!!」
「それは人形焼…っていつの間に買ったんですか!?」
あまりのマイペースさに、三つ編みの少女は呆れを通り越して、驚きの表情を浮かべる。
が、すぐに気を取り直して説教を開始した。
「というか人の話を聞きなさい!きちんと事前知識を持って観光を…」
「あっ、煙のやつや!」
たっぷり燻されたるで!と煙立ち上る香炉に駆け寄り、思いっきり深呼吸。
「ぅげほ!?げほごふ、げほぁ!」
当然ながら短髪は、女の子にあるまじき表情で、周囲の人が引くほど咳き込んだ。
「まったくもう、成長がないんですから。この前の旅行でも貴方は…」
しかし三つ編み少女は、「自業自得です」とバッサリ切り捨てて、涙と鼻水だらけな相手の様子にも頓着せず、
マイペースに説教を続けるのだった。




