震える少女は僕っ子でした
………さて、現在の状況を確認しておこうと思う。
さっき助けたフードの子に抱きつかれています。
泣いているので、俺の服が少し濡れる。
いや、この子を助けようとしたわけじゃない。あのチャラ男か俺をキモオタと言ったのと、クレーンゲームを動かせなくしたことへの苛立ちだ。だから、こうなることを期待して助けた訳ではないのにな………。その時の見返りがある意味凄いことになってるからな……。次はこうならないと思いたい。花音の時みたいにアイドルになってしまうことまではならないだろうけど。……………いや、普通あり得ないから、大丈夫か。
「こわかった……こわかったぁ……。」と、フードの子がいまだに泣いている。
落ち着けるにはどうしたらいいか考えて、とりあえず頭を撫でてみた。そうすると拒否されなかったので落ち着けるための方法として大丈夫なことが分かったのでしばらく撫で続けた。
周りからはリア充爆発しろとかの声も聞こえる。
はっきり言って、クレーンゲームの修理に来た女性スタッフにも言われた。
「百合でも普通でもカップルなんて滅んでしまぇぇぇぇぇ!!!」と。
だからカップルでも百合でもないんだけどな………。髪の長さから女に思われることはあるけどさ……。
とりあえず、場所を移動しようかなぁと思い、フードの子の手をとった。
ゲームセンター内を少し移動して、比較的静かな所に来た。
とりあえず、自分の荷物は少し大きいコインロッカーを三つ使い、財布だけにした。心愛みるくさんのを盗られたら元も子もないからだ。
フードの子が泣きやんできたので、話しかけてみる。
「大丈夫か?」
「う、うん……少し落ち着けた……。僕、カツ上げされて……うぅ……まだ怖い……。」
フードの子は、僕っ子らしい。フード付きのパーカーは水色で男っぽいが、よく見るとスカートを履いているので、女の子だと分かったのである。
「じゃあ、俺は大丈夫なのか?男なら同じようなものだろ?まぁ、多分カツ上げはしないがな……。そんな度胸ない。」
すると、フードの子は顔を赤らめた。なんでだ?さっきの間に風邪でもひいたのか?
「………でも、僕を助けてくれた……。それだけで………。」
「とゆーか、なんで、カツ上げされたんだ?普通女にカツ上げはしねぇーだろ。」
すると、経緯を説明してくれた。
大体こんな感じらしい。
前の財布が古くなっていて、数日前、新しい財布を買ってもらしい。しかし、開け方が前のものと違っていて、クレーンゲームをやろうと思い小銭と思った所お札などが入っている所で、それでさっきの奴にカツ上げされたらしい。嫌がっていたところ、チャラ男にキレてクレーンゲームで壁ドンされて、結果今の状態である。
確かに、マジックテープとチャックで分かれていて、それが前の財布と逆だということはあるだろう。
ちなみに俺の財布は両方同じ所にある財布だ。
すぐに取り出せるように、色々と試行錯誤したのである。
「クレーンゲームでは、皆と食べるおやつをとろうかなぁ~って思ったんだ。でも、その前にあの男の人が……ぶるぶる……。」
確かに、あのフィギィアの横は、お菓子の詰め合わせの筐体だったと思う。がんばれば100円で千円ぐらいの詰め合わせが取れるからなぁ……。
「あそこに行くのが怖いなら一緒に行ってやるが……。」
「ホント!?じゃあたのもうかな……えへへ。」
そして、あそこに移動した。
クレーンゲームの修理は終わっていた。まぁ、振動でクレーンの接触が悪くなっただけなのですぐに終わるだろうと思っていたしちょうど良かったかもしれない。
さて、自分用のフィギイアを取りますか………。
さて、取り終わった後、他のもまとめてとろうかなぁと思っていると、隣でやっていたフードの子が
「うぅ………やっぱり僕じゃできないのかなぁ……。」
と、財布の中の野口さんと両替機に視線をあっちこっちとさせている。
「はぁ………ちょっと貸して見ろ。あ、金はいらないから。」
と、俺はやっていたクレーンの返金レバーを下げて、百円玉を取り出した。
これは、一回だけならば、返金してもらえるのだ。まぁ、二回以上連続でやっていると返金はされないけど。
「ちょっと待てよ………これがいいか?」
「う、うん。二人も好きなの入ってるし………。」
「分かった。取ってやるよ。」
クレーンに集中する。隣とは違い、この筐体はやり方が違うのだ。隣のは、横に移動、奥に移動、高さの三つだ。
しかし、このお菓子のには回転というものがある。
とりあえずあのお菓子でどこを狙うべきか……。よく見ると、なぜあるか分からない開けるところの丸い穴を見つけた。
ここにさせばいいだろう。そう思った。
ミスするまでやった結果、3つ取れた。
とりあえ別のお菓子を取ろうとしたところ、回転中に別のお菓子に当たり、強制的に回転が止められ、終了となった。
誰だよ、クレーンゲームの中にコーンフレーク入れた奴。
「これぐらいあれば足りるか?」
「う、うん………僕もちょっと多めに食べるからね……。」
「そうか、じゃあよかった。ちょっと待ってろ。袋持ってきてやるから。」
「…………。」
袋を取りに別のクレーンについているビニール袋を探した。
その時に、フードの子は、別の筐体の中のぬいぐるみを見ていた。
猫だるまというアニメに出てくるぬいぐるみで、本物よりも大きいタイプだった。多分フードの子の腕の中に入るほどの大きさだ。
「あれ珍しい色らしくって……。でも、僕は一個も持ってないんですよ……。」
あれは紫の猫だるまだった。普通は黒か茶色らしい。
「欲しいなら取ってやれるが……。」
「わ、悪いよ………。」
「こーゆー人の好意は受け取っておけ。………よし取れた。」
猫だるまのぬいぐるみは大きさの割にすぐ取れた。
タグが偶然上の方にあったのでラッキーだった。
「あ、ありがとう………。」
フードの子は照れながら、猫だるまを抱きかかえ、右手にお菓子の袋を持ってそのままその友達の家に行くと言った。
しかし、少し危なかっしい。
「………しょうがないか………ちょっと持つぞ。少し暗いから送ってく。ま、役に立つかは分からないがな。」
とりあえず自分の荷物を出さないとな………。
一回コインロッカーの所に向かい、自分の荷物を出した。
そして、そのまま帰路に向かうことになった。