高校は当然近いところを選択しました
「よし………これで大体は買えたかなぁ~。」
とるんるんとした気分で、牧村さんのいるところまで戻ってきた。
前のイベントで新刊をだしていなかった千鹿毛さんの新刊もあったので、ホクホクだ。ちなみに、買った物のほとんどはBL要素が含まれております。
「あ、ヘルト君。この後の対応のために、この紙に色々書いてくれる?」
そこには、俺の住所や、電話番号、メールアドレスについて書かれていた。
これを見て、とりあえずだけどアイドルになってしまったと思ってしまう。
紙の上側に、アイドル事務所シュクレガトーと書かれているからだ。
後から知ったのだが、シュクレガトーは、基本的……というか、あの司会の人が言ったように、女性アイドルばかりだ。
このなかで唯一男なので、女子校に迷い込んだ男子という錯覚を覚える。まぁ、すぐに止めるようなことになるだろうけどさ。人気もでないだろうし。
「はい、これで書き終わりました。」
そして、それを渡すと、牧村さんが一枚の名刺を渡してきた。そこには、下の名前の影美の文字。
その名刺には、シュクレガトーの住所と電話番号、後牧村さんの電話番号とメールアドレスだった。
「多分、もうしばらくのつきあいだと思いますけど、この付き合いは大事にしたいですね。」
どうせすぐに埋もれてしまって忘れられるだろうからとネガティブに考えていると、
「そ、それなんだけど………。ヘルト君。」
と、申し訳なさそうなのか、それとも嬉しそうなのかという顔で牧村さんが言いだした。
「なんですか?」
「実は………………花音と、ヘルト君にドラマ出演の依頼が入ったんだけど………。」
「へ?」
後、花音って誰のことだろうか?
「いや、主役とかじゃないから安心して?一応一話だけ出てくる役だから。ほら、今放送してる『桜は僕らを見ていた』の………。」
「ホントですか!?あの、今高視聴率の!!」
「いや、ドラマ見てないから分からないんですが………。」
「役としては、主人公と幼なじみが小さい頃に憧れたアイドルの役ね。急に入れることにしたらしいのよ。映像を。子役は、その二人の息子役として出る子を使うらしいけど。」
「あ、あの………俺って演技とかできないんですけど……………………。」
これまで一度もそーゆーのをやったことがないのだ。
小学校は全て裏方に回りました。少々絵心があったので、先生達に王子様とかやってみない?とか言われても無視して大道具に回りましたとも。その結果、小学校の卒業文集の劇での役の所には全て大道具と書かれています。
ちなみにその時の将来の夢の欄に書いたのは確か最低でも週に一回は家族全員で食卓を囲める家庭だったかな………。
理由については割愛させてもらう。
また後で話します。
「二人は少し昔の歌をデュエットで歌ってもらうことになるの。男女でのね。まぁ、あんまり難しい曲じゃないから………事務所のトレーニングルームで多少合わせる練習はしてもらうからね。だから………明日時間あるかしら?」
「まぁ、明日は何も無いですし………たまに用事があるぐらいですね。学校は今春休みで、受験受かったからもうすぐ高校生かぁ~と浮かれてるわけで………。」
言っていなかったけど、今は3月23日です。卒業式は8日にあった。
「そういえば、通う高校は越肥高ですけど………。」
そこそこの所だ。
まぁ、部活に入らなくてもよし、講習も自由参加が多く、土日にあまり駆り出されないし、六限授業ばかりなので、今までの生活にはあまり問題の無い高校なのだけど………。
「その高校に入れるなら、編入しても大丈夫そうね……。」
「やっぱり、高校は変えないと行けませんか………。」
中学では追試が土日にあり、さらには授業中の小テストの合格点を取れなかった時は合格点を取らない限り放課後居残りなのだ。だから、要領よく勉強するしかなかった。
「じゃあ、申し訳ないんだけど、ここから近い霧橋高に変えてくれる?大丈夫。制服は支給できるから。」
「はい、分かりました。」
「そういえば、住所をみると、霧橋の方がいい高校だと思うんだけど………。」
まぁ、確かに越肥は電車で四駅ほど行かないと行けないが、霧橋なら家からなら徒歩でも行ける。まぁ、バスを使うだろうけど………。
「手続きに両親の面会が必要で………。その手続きで、どちらかはいないと行けないんですけど、両方いないんですよ。亡くなったわけでなく、どっちも別々に仕事行ってますからね………。家事は妹がやってることが多いですね。まぁ、親が面会に来ないので、受けられないから同じような環境の越肥に行こうかなぁと思ったんですよ………。」
霧橋高は、芸能科とかは無いが、生徒の理由がある早退や欠席にはおおらからしい。だから、この近くに事務所を建てたらしい。
そして、俺は入学前に行く高校を変更した。
「じゃあ、今日は帰りますね。」
「分かったわ。あ、その前に事務所に寄って、スプレー落とさないとね………。」
そうだった………。あのスプレーの持ち主はあのメイクの人だった……。
「じゃあ、事務所に行ってみましょうか。花音は、足動かせるようになったかしら?」
「はい。ようやく痛みが引いてきました……。」
そして、そのまま事務所に行くことになった。