本人は滑稽な、他人には神的な。
俺がステージに入ると、当然なのかそれとも打ち合わせされていたのか、客席の人が「おぉぉぉ!!」と、騒ぎ出した。
「さ~て、今日ご紹介するのは~。」
司会の人がハイテンションで俺のことを指さした。
にしてもこの司会の人、かなり異様な扮装だな……。
オーバーオールにシャツなのはまだいい。
が、坊主な髪をさらに星形に刈り込んでいる。
……気にしないで行こう。
「シュクルガトーの新人アイドルにして、なんと!!初のシュクレガトー所属の男性アイドルだぁぁぁぁぁ!!!」
「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」」」
会場が揺れる。
いや、男性も女性も両方騒いでいるんだけど………。
「さぁ紹介しましょう!!新人アイドルのフェア君だぁぁぁぁ!!!」
呼ばれたので自己紹介をする。
「えーと、今日からアイドルやることになりました、フェアと言います。これからがんばっていきたいと思うので、応援よろしくお願いします。」
とりあえず礼もしておく。すると、何か目から落ちた感覚があった。
それは、とても大事な…………。
…………カラーコンタクト、落ちちゃいました。
いや、あれだけ激しく動いた後だったし、その後も一旦外すという行動にも移れなかったし………。
しょうがないんじゃない?
ステージ裏の方を見ると、牧村さんも、あの女の子も呆然としている。客席の方もだ。
全員…………固まっている。
まぁ、翠色の瞳なんてめったにいないじゃない?
「す、すいません………コンタクト落としてしまって………。俺はこの目か人と違うのが嫌だったので、カラーコンタクトで隠していたんです………。隠していてすいません。」
すると、客はやや納得したのか騒ぎは収まった。
「え~、気を取り直して………次はトークですね。まぁ、簡単な質問をしますので、それに答えてください。」
どうやら、質問は全部で3つらしい。
「じゃあ、一つ目。なんでアイドルになろうと思ったのかな?」
こんな質問にはどう答えればいいのだろうか?
「え~っと………。小さい頃憧れていたから………ですかね?」
嘘です。小学校低学年で憧れていたのはお医者さんでした。
アイドルではなく。
「二つ目。好きな食べ物と苦手な食べ物は?」
「好きな食べ物はハンバーグ、嫌いな食べ物は手羽先ですね。」
なんなんだろう、この質問は。
「手羽先って食べにくいもんねぇ………分かるよ~その気持ち。」
司会の人も嫌いらしい。同士いてよかったぁ~。
「最後に、家族構成ってどうなってるの?まぁ、簡潔でいいけど。」
「妹が一人います。」
「かわいいのかな?その妹さんは?」
「まぁかわいい部類だとは思いますけど。」
質問に答えている間、客の人達はそわそわしていた。
こんな滑稽なアイドルがいるから面白がっているんだろう。
そう思いながら、次の指示を待つ。
「さて、次は歌唱力!!フェア君準備できてる?」
「できていますよ。」
「じゃあいってみよー、今回は本人の持ち歌ではありません!!すみませんが、既存の曲から二曲歌ってもらいます!!一曲目は『2月8日』!!」
『2月8日』は、まぁ、ラブソングだ。とゆーか、俺の歌えるのはほとんど恋愛関連の曲だと思う。
※サビっぽいところだけ表記します。by作者
「今日はいつもよりもついてなくて~、それでももうすこ~しで、君に好きだって伝え~られてぇ~。このつまらない世界を変えてく~れたぁ~。君にありがとうって~、君が好きだぁって~、伝えられるまで一週間をきる~。」
もう、いつも通り歌ったので、滑稽に見えると思うんだが。
歌唱力無いだろうし。俺は。
※ちなみに、この曲は女性目線で、事始めの日である2月8日からバレンタインへの思いをつづった曲というイメージです。最終的にポジティブに向かう曲となっております。
歌い終わると、司会の人が俺に賞賛の言葉を送る。
「よーし、会場が盛り上がってきたなぁ!!なので、次の曲にいくぜぇ!!準備はいいか?」
「「「イェェェェェェェェェ!!!!!!」」」
そして、次の紅ポーカーも歌いきる。
最後の、
「恋とはポーカーでさ、さぁ、ハートのロイヤルストレートフラッシュを狙え!!」
の所は中二臭い歌詞だが、それ以上に難しい。
なので、今回は上手く歌えたのかがすごい気になった。
まぁ、会場が騒がしいのを見ると、失敗はしなかったらしい。
二曲歌い終わったところで、今回のお披露目会は終了したらしい。
楽屋に戻って、服を着替えると、ふと時計に目がいった。
「あ、あの……………。」
「これからとりあえず打ち上げね………。にしても、予想外だったわ………。」
「す、すいません………。」
「なにかしら?何か用事があったの?」
「は、はい!!今日行くはずだったところです!!」
「すぐ車を用意して、その場所に連れて行ってあげるけど………どこかしら?」
目的の場所は、後二時間で終戦になってしまう………。
「コミケです!!」
うん、俺、一般的な腐男子というような物なんですよ。