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ふたりで紡ぐ物語  作者: にしのかなで
第一章
9/55

同窓会当日

朝からオブリー邸で入念に磨き上げられたカリンは、やはり皆どこか心配で結局魔除けに通じる薄紫のドレスを選ばれ髪を人妻らしく結い上げると薄っすらと化粧を施された。夏なので肩を出しデコルテも強調したデザインだがルディからあまり露出させたくないと薄いショールを羽織ることになり、女性陣からはブーイングと過保護だと言われながら二人はアナスタシアの用意した馬車に乗り込み送り出された。


「・・・似合ってないの?」


馬車の中でカリンが小首を傾げ悪戯っぽく問う。今日のドレスは背中も開いていて普段ならカリンも選ばない、だが目的があるのでつい周りの意思に従って選んだドレスだ。問いかけにルディは窓の外を向き黙っている。


ーあ〜あ、怒らせちゃったかな。ー


「こんなの着るにはまだ早過ぎたかなぁ。」


「・・・違う。」


「じゃあなんで何にも言ってくれないの?」


片手で額を押さえたルディが絞り出す様に声を出す。


「に・・・似合ってるよ。だけど、そういう格好は僕以外の男に見せたくないのっ。」


ーなんだ、やっぱりそうなんだ。ー


「ふふ。」


「なにさ?」


「いえ、成年の儀迄もよくかっちりしたタイプのドレスを着せてもらったな〜って懐かしくなって。でも、旅先では肩を出したワンピースとか着せてくれたのに。」


「あれは、僕しか見ないからいいの。」


ふてくされた様に言うルディに、なにそれ我儘〜っと笑っているうちに会場に着いた、そこでふたりは異変に気づく。やたらと会場周りに近衛兵が多いのだ。と、その中にウィレムを見つける。


「よう、久しぶり。」


「ウィレム、なんだか物々しいんだけど。」


「あれ、聞いてない?お前らが帰って来るからって、アルベリヒ殿下夫妻とオーランド殿下も今夜はいらっしゃるんだよ。」


成る程、なら警備も万全なはずだと納得する。


「で、エリカ・ペインのご機嫌が更に悪いらしいぞ。殿下方はカリンに対する口撃を防ぐ為にもいらっしゃるからな。」


だからそれが余計に火に油を注ぐのに・・・とふたりは思ったが口には出さなかった。


「まあルディ、カリンは頼んだぞ。エリカなんか放っといて、久々の友人と楽しんでこいよ。」


と、会場入り口まで送ってくれた。


「さて、行きますか。」


「はい・・・あ!」


「なに、忘れ物?」


「あ、いえあの・・・出かける前にオブリーさんが防御魔法をかけて下さったんですが、私ルディ以外の魔法は効果ないの忘れてました。」


「あ〜、久しぶりだなその話し。オブリーさんも忘れてたんだろうなぁ、どうしよう今から僕が防御しようか?」


「いいえ、それほどの事は起こらないでしょうし何かあっても側に居れば大丈夫でしょう。」


「だね。」


受付を済ませ、音楽の鳴る華やかな雰囲気の中にふたりは腕を組み入って行く。周りから続々と人が集まったかと思ったら、早速カリンを紹介してくれと言う。魔法師よりもその奥方やパートナー、つまり女性陣が熱い視線でカリンに挨拶を積極的にしてくる。


「あ・・・!もしかして、皆さん子鹿会の方・・・?」


きゃーっとそこでまた色めき立つ、職場恋愛の多い魔法師達のパートナーはほぼ子鹿会のOGであった。


「今日はカリンさんがいらっしゃると聞いてっ」


「私達、おめかしして来たんです!」


「あの、あちらでお話しできませんか⁈」


ワイワイと囲まれ唖然とするカリンを見てルディが吹き出す。


「じゃあ、妻をよろしくお願いします。行っといでカリン、大丈夫だから。」


後半は耳元で囁いた。ハッとしてルディを振り返り見上げると微笑っている。カリン自身も彼女達から悪い気配は感じられない、見上げたまま微笑い返し女性陣の輪に入りカリンを囲む会が始まった。


「あ〜あ、俺たち形無し。」


「ったく、お前の嫁さんどうなってんだよ。こういうとこが苦手なウチの嫁さんまで「カリンさんがいらっしゃるなら。」だと。」


「ははっ、未だに武勇伝が色々語り継がれてる女性だからな。」


「いや、みんなごめん。僕もこれは予想外だったよ、未だにあんな人気なんて喜んでいいのかなぁ。ま、あっちは置いといてこっちはこっちで楽しもうよ。皆、久しぶり。」


「おー、全く久しぶりだ。聞いたぞ嫁さんの為に一年も休暇取ったって⁉︎お前こそどうなってんの?」


「天才魔法師も単なる愛妻家かぁ。」


ルディはその場は笑ってしのぐしかなかった。

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