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ふたりで紡ぐ物語  作者: にしのかなで
第一章
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海辺の休暇から避暑地へ

滞在していた海辺の街はスレイスという名で、漁業が盛んで毎日新鮮な魚介類を宿の夫婦が美味しく調理してくれてカリンも食べたことのない料理を食べられてなんだか調子が良くなってきて、時々ふたりで釣りもして楽しく過ごした。

が、ある日の事そろそろ暑くなるから避暑地に行こうかと提案される。ここから少し離れた観光地で貸別荘があり既に予約しているというので、美味しい海辺のご馳走と気さくな宿の夫婦に名残惜しい別れを告げふたりは移動した。何せルディの休暇は長いのだ、オルボアの家で何故だか調子が悪かったカリンを労わり、見たことのない世界に連れ出しゆっくり休ませてくれる。


そして、暑さを避けふたりは避暑地に着いた。森に囲まれ近隣のコテージからも程よく離れている。新鮮な空気と柔らかな緑がとても気に入った。森林浴をしながら時々町に出て 食料を買い込み自炊するスタイルはまるで我が家にいる様で安心して寛げたし、静かに過ごせるこの日々が一時と解っていても心が穏やかになる。ルディはカリンの傷を知っていて癒そうとしてくれているのだ。それを思うと辛い気持ちが先に立つが、彼の優しさに甘えて立ち直れそうに思えてくる。


・・・カリンは一度妊娠し流産を経験している。彼には何も言っていなかったのにちゃんと解ってくれていたのだ、何もかも。あれは、結婚して間も無くのことだった。ちいさな命は形になる前に流れてしまった。だから、覚悟はしていたけれどそれでも現実は辛かった・・・受け入れるのに時間が必要だった。周りは妊婦に囲まれている、自分は母親に選ばれなかったのだ・・・。それでも気持ちを切り替えて、何とか平静を装ったそして彼以外にカリンの辛い経験に気付く者はいなかった、


ーどうして解ったの?ー


ルディにいつか問いただしたい。魔法なんか使わなくても私の全てを理解して受け入れてくれる彼に・・・。


海辺の街も人気の少ないコテージも、日頃我慢しているカリンの心のささくれを取り除き柔らかな気持ちにさせてくれる。でも、そんな日に突然終わりがやってきた。


「同窓会?」


「うん、気乗りはしないけど一旦オルボアに帰らなくちゃ・・・ごめん、せっかくゆっくりしていたのに。:


「いいえ、断れない集まりなんでしょう?」


「うん、それがさ・・・君も同伴しなくちゃいけない。」


びっくりした・・・なんで?


「それ、どうしてもですか⁈」


「うん、ごめんホントに。:」


なんかやたら謝り方が気になるなぁ・・・。


「ルディ?もしかして昔、お付き合いしてた人が来るとか?それとも初恋の人?」


僅かに汗をにじませシドロモドロ彼が話す。


「え、とね。向こうとしては一応形としては付き合ってた、つもりらしいんだけど、僕はほらそういう事に疎いからさ仲のいい友達の一人と思ってた子がいるんだよ。で、招待状がその子直々から来て君を見てみたいって・・・」


ん?なんだそれ。つまり、向こうは彼女のつもりでルディは友人として付き合ってた?で、結婚相手の私が見たい?つまり多分まだ独身で妬んでるのかな。


「その人、独身なんですか?」


「・・・そう。で、凄いヤキモチ焼きで当時の僕は恋愛とかそれどころじゃなかったからさ、まさか彼女気取りとは知らずに他の子とも同じに接してたら嫌がらせの魔法とか使ってたんで頭に来て距離を置いたんだよね。はぁ、君に何かしなきゃいいけど。」


ふーん。そういう過去の一つや二つあっても不思議じゃないけど、それにしてもカリンはなんだかモヤモヤした気分になる。


ー受けて立とうじゃないの。ー


カリンはにーっこり笑って返事した。


「私達の仲の良さを見せつけてあげましょうよ。ね?ルディ。」


過去に何があろうが、カリンがこれ迄もこれからもれっきとした彼の妻。ちゃんとご挨拶しなくっちゃと、俄然見せつけてやりたくなってくる。


「よし!滅多にしないけど、ドレス新調しよう。」


こうしてふたりは避暑地に別れを告げオルボアの家に一旦帰ることになった。


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