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ふたりで紡ぐ物語  作者: にしのかなで
序章
2/55

新しい命〜喜びと哀しみと〜

オブリー伯爵家とヴィグリー家に新しい生命が産声をあげた時期はそう大差なかった。


ただ、魔力持ちから産まれる赤ん坊にはその親の魔力に負けて折角授かった命が臨月まで持ち堪える事は少ない。そしていざ出産まで持ちこたえても産道を通る間にダメになる可能性が実に高く、つまり魔力持ちは子どもを持つ可能性が全く皆無ではなく、授かった命を失う事の哀しみを想像すると殆どが子どもを持つ人生を諦めるのだった。


また、逆のパターンもあり魔力なしの母が父の魔力を受け継いだ赤ん坊の力に負けてしまい母親が犠牲になる場合もある。どちらにしても、不幸な結末の確率が高く近年ではこの因果関係に魔法省はかなり力を入れて研究している。

だから、オブリー家に産声が上がった時にはその場の誰もが喜びに溢れた。しかも、男女の双子だったのだから。そして最後に少し間を空けてフェンリルが第三子の男の子を無事に出産した。

ところでこの間、王太子妃がまたご懐妊となり彼女は結局その後5人の子の母になるのだった。


季節は過ぎ、オブリー家の双子とヴィグリー家の女の子が舌っ足らずながらも言葉を発し走り回るようになった頃カリンは18を迎えていた。毎日のように見える知人の子ども達を可愛がり時には預かったりしていたが、その表情に陰りがあるのをルディだけが気付きそして知らない振りは出来なかった・・・。

仕事も随分落ち着いてきて、ある日試算したらかなりまとまった休みが取れる事が判明した。結婚後、三ヶ月も放っておいてその後もずっと忙しく何もしてやれていない。だから、この話を持ちかけた。


「うみ?」


「そう、海。見たことないだろう?」


「はい、連れて行って下さるんですか⁉︎」


見たことのない風景に期待を込めた瞳をキラキラさせて顔を近づけてくる。その頬に唇を落とし長期の休みを取ることと、気分転換に旅に出ようと話した。カリンはルディの頬にお礼のキスを返すと納戸へ走り旅行鞄を探し始める。

が、鞄を見つけ出すとかつての自分の部屋に入れてから体調が悪いと早々にベッドに横になった。聞けば、最近目眩や吐き気がするという。それってまさか・・・と思うと月のモノはちゃんとあるから違うと否定された。


「大丈夫?休みはホントに長期、一年休んでも支障ないんだ。身体が落ち着いてから旅行に行こう。」


「はい。」


僕の肩に頭を預けほろほろと涙を零す。身体だけじゃなく心も不安定だ。この頃から彼女の長い苦しみが既に始まっていたのだ、ルディは漠然とだけどその事を悟り彼女を護れるか自分に問いかけていた。

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