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プロローグ

 六歳の誕生日、私は前世の記憶というものを思い出した。いや、”この世界に来る前の記憶”と言ったほうがいいかもしれない。


 あ、意味わからない? …ですよねー。


 わかりやすく結論だけ言うと、この世界は前世で私が乙女ゲームとしてプレイしていた世界で、向こうで死んだ私はなぜかこの世界に転生してしまった、というわけだ。


 はい、頭イっちゃった人ではないからね。

 脳外科とか精神科に電話かけるのはやめてね、マジで。


 とりあえず、そういうわけでございますよ。

 あ、でも言っておくけど、私はヒロインの立場にはいない。もちろん、脇役ですよ。

 可もなく不可もなくクローズアップされることのないクラスメイトAですよ!! ……とかだったらよかったんだけどねー……人生、早々うまく回るようにはできてないんさ。

 私はサブキャラというか中ボスというかラスボスというか、とりあえずそういう立ち位置のキャラに転生してしまったらしい。


 今生での名前は”狩矢京かりやきょう”。

 男っぽい名前? だが、れっきとした女だ。


 ゲームの中の”狩矢京”は、中世的な外見と王子様のような立ち振る舞いが特徴で、常に多くの女の子たちを侍らせているというキャラだ。

 なんでそれが乙女ゲームの中ボスあるいはラスボスになり得るのかと言いますと…実は、狩矢京はレズビアンなのだ。

 ゲームの中で語られた話だが、どうやら過去――私からしたら未来――に変態オヤジに襲われかけた経験があるらしい。それがきっかけで男を憎悪するようになり、女の子らしい恰好もやめてしまったという。

 仕方ないっちゃ仕方ない理由だよな。実際、私が同じ経験をしたら絶対嫌いになる。


 ……いや、これから私が通る道か?

 ……とりあえず、いつのことになるかわからないが、今のうちに強くなっておこうと思います。


 話が逸れたけど、そういうわけで汚れた男が大嫌いな”狩矢京”は、高二のときに入学してきたヒロインちゃんの無垢な心に惹かれる、というのがゲームの中の”狩矢京”の流れだ。

 けど、ヒロインちゃんはほかの攻略対象たちと仲が良好になっていって――乙女ゲームだから当たり前だが――”狩矢京”には振り向いてくれない。

 だんだん心が病んでいった”狩矢京”は、BAD ENDのルートによって異なっていたが、攻略対象のキャラを殺したりヒロインちゃんを殺したり自分も心中したりする。


 ”狩矢京”の外見が好きだった私には、かなりショックの大きいENDばかりだったよ。

 一個くらい幸せになるルート作ってくれたっていいじゃないか!

 …あ、でもその場合の幸せってヒロインちゃんとイチャラブな関係になることになるのか?

 それじゃあ、無理かなあ。「乙女ゲーム」って銘打ってあるんだからね。


 というわけで、私はそんな病んでる女系王子様に転生してしまったわけです。

 けど私も女の子は好きだが、男が嫌いなわけではない。過去に男になにかされたって経験もないしね。

 これからされるみたいな感じだけど、それは全力で回避行動をとらせてもらう。でないと、十代後半という若い身空で死ななくてはならない。

 それは嫌だ。断じて嫌だ。


 ”狩矢京”は暴行未遂事件がきっかけで男を憎悪するようになったみたいだし、それさえ回避すれば私も同じ道をたどることは免れるだろう。

 なにより、前世の私も若い身空で死んだのだ。なにが原因で死んだかまったく覚えてないが、大学三年以降の記憶がないので、おそらくそのあたりに事故かなにかで死んだのだろう。


 さすがに、同じ経験を二度するのは嫌だ。私の夢は、長寿でギネスブックに載ることなのだから!

 早いうちに前世の記憶を取り戻せてよかった。今からならいくらでも対策が練れる。


 そういうわけでわたくし、狩矢京はゲームの中の世界という特異な場所ではありますが、この第二の人生を精一杯全力で生きていこうと思います!!

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