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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

無能と蔑まれた令嬢「妹のためなら火だって噴いてみせます!」

作者: はぢてる
掲載日:2026/09/03

今日の短編です。書きたてほやほやです。


作者は頭の中で主人公のクレアを「ゴジ◯令嬢」と呼んでいます。

「クレア、また縁談を反故にされたんだそうだな?」


 舞踏会の会場で意地悪そうな笑みを浮かべながらエリオットが話しかけてきた。


「ええ、今回は御縁がなかったようでして」


 私は取り繕った笑顔で答える。


「お前にないのは縁じゃなくて祝福だろう?」


 エリオットが吹聴すると、その事実を初めて知った者達は意外そうな表情を浮かべ、既に知っている者の口からはくすくすと嘲笑が小さく漏れる。

 この一年、何度も晒されたいつもの光景。


 エリオットはかつての私の婚約者だ。

 私が十歳の時、彼の父親ホーキンス伯爵が是非にと私の父モーム男爵に子ども同士のお見合いを申し込んできた。

 最初は渋っていた父だが伯爵の執拗な懇願に根負けし、一度顔合わせするくらいならと遂に承諾してしまった。ところがその途端、向こうは待ってましたとばかりに周辺に対し婚約したと派手に言いふらし始めた。

 当時派閥争いに巻き込まれ実家が弱っていたこともあり、外堀を埋められた私は半ばなし崩し的に私はエリオットの婚約者という立場にやり込められてしまった。

 母がなくなったばかりで気を落としていた父に無駄な心労をかけたくはなかったため、私も嫌とは言えなかった。


 しかし、そんな歪な婚約関係も私が”祝福”を受けてなさそうだと知れると一方的に破棄された。

 一年ほど前のことである。


「そういうあなたは良縁でも見つけられたのですか?」

 前回絡まれた時はこう言うと引き下がってくれたが、今回は反応が違った。ふ、と嘲るような笑いを漏らすと。


「ああ、とても良い女を見つけた。クレア、そいつが誰か知ればお前もきっと驚くぞ?」

 

 いつになく自信に満ちた彼の表情に、私は薄ら寒いものを感じずにはいられなかった。


*****


 かつてこの世界を救った英雄神は死に際して自らの肉体が新たな争いの種になることを厭い、妻に自分の遺体をバラバラにして山の頂からばら撒くよう申し付けた。

 それ以来、この世界の人間は成長期を迎えると体のどこかしらに”祝福”を宿し、奇跡を行使できるようになったと言われている。

 足に祝福を受けた者は空を駆け、目に祝福を受けた者は遥か遠くを見渡し、手に祝福を受けた者は火球や雷撃を放てるようになった。

 

 早い子では五歳頃から、遅い子でも十四歳までには何らかの”祝福”を宿すと言うが、今年で十七になる私は未だに何の祝福も授かっていなかった。

 専門家によると稀にあることらしいし、家族も祝福の有無に関わらず私を私のまま愛してくれたので私自身はあまり気にしていない。

 が、世の中は優しい人ばかりではない。


 祝福を受けられないのは前世で何か罪を犯したからだとか英雄神から見放されているだとかといった迷信を信じて、少なくない数の知人や親類が私や我が家に対する態度を改めた。


 特に豹変したのはエリオットのホーキンス家だ。

 今考えると、代々強力な祝福を授かる者を輩出してきた我が家に最初から目をつけていたのだろう。無理やり婚約させたのは向こうだと言うのに、アテが外れたと言わんばかりに罵声を浴びせて関係解消を求めてきた。


「お前のような無能を婚約者にしかけたと思うと虫唾が走る。頼むから元婚約者だったなどと周囲に言いふらすなよ?」とか何とか。


……いや、どの口が言ってるんだか。


*****


「お姉様にもいつか素敵な方が見つかる筈です」


 舞踏会で起こったことを耳にしたアリシアは頬を膨らませてひとしきり怒った後にそう言った。


「お父様にこれ以上心配さえかけないのであれば私はどこに嫁いでもいいんですけどね」


 私はお茶で軽く濡れた唇で溜め息を吐いた。

 昨日あたりから口の奥に違和感があった。だがお茶を飲んでも痛くないので喉ではないらしい。


「お父様は前のめり過ぎだと思います」

「かもね」


 父は元々エリオットの家に丸め込まれて私を婚約者にさせてしまったことに対して負い目を感じていたようだが、去年の婚約破棄でいよいよ心労がたたり一時体調を崩していた。現在は回復し以前より元気になったくらいだが、私に対しては相変わらず罪悪感を抱いているらしく、新たな縁談をまとめるため西へ東へと奔走している。尤も私が祝福を授かっていない件もあり、成果は芳しくないが。

 この日もだいぶ離れた場所にある他家の領地へ外遊しており、屋敷の中は少し人手が少なかった。


「私よりそろそろアリシアのことを考えなくちゃでしょう。もし既に意中の方がいるなら早めに伝えて置きなさいね。あなたなら引く手あまたでしょうし、あらかじめ自分の希望を伝えておかないとお父様が暴走して勝手に”良縁”を進めてしまうかもよ?」

「私はお姉様が大好きですっ」


アリシアはふんす、と鼻を鳴らして息巻いた。

そのやる気に満ちた表情が愛らしくて、思わず昔のように膝の上に乗せて抱き締めたくなる。


 七歳で右手に祝福を宿したアリシアは指の数に応じて水、雷、火、氷、風を操ることが出来る。現在齢十にして既に国内でも有数の才女と持て囃されており、連日に渡って縁談の話が我が家に寄せられている。


 そんな彼女だがこのとおり、私が祝福を授かっていないことを意に介することなく慕ってくれている。


「大体、祝福だけで人を判断するような輩は破談してむしろ幸い、そんな奴はこっちから願い下げです。お姉様は器量も良ければ気立ても良し。勉強に運動にお料理に剣術にと、あらゆることに長けているような方なのですからそれに見合うような方……そう、例えばケイリー様くらい出来る方でないと」

「言い過ぎ、アリシア。それにケイリー様は確かに優秀だけど、私みたいなのはなおのこと興味を示さないでしょうね」


 若干二十五歳にして最近実家の家督を継いだというデレク・ケイリー辺境伯は文武に優れ、その祝福を宿した鋼の腕で以前、魔物の大群を退けたとかで婦女子に大変人気のある方だ。ところが最近、舞踏会で群がる女性たちに嫌気が差して「強い竜のような女とでなければ結婚するつもりはない」と言ったとかで話題になっていた。

 まあ、私には関わりのない人ということ。


「……?お姉様、どうかしましたか?」


 私が顎を手で擦るのを目聡く見つけたアリシアが尋ねるてきた。


「ああ、いや。実は昨日の晩くらいから口の中に違和感があって…」

「虫歯ですか!?すぐ歯科医を呼ばなくては!」

「そう慌てないで。虫歯ではないと思うから。でもそうね、一応かかりつけの歯科医に相談してみるのも…」

私が言いかけていると使用人の一人が慌ただしく部屋の中に駆け込んできた。


*****


「話になりませんっ」


 一通り手紙の内容に目を通すと怒りのあまり思わず紙を握り潰しテーブルに叩きつけてしまった。


 エリオットがアリシアに目をつけた。


 手紙に書かれていたのは、祝福を受けていない姉の件でこちらは騙されたのだから妹を差し出せという一方的な要求に近い内容のものだった。


「お姉様、私…嫌です…!」

「大丈夫。安心して下さい。何があっても父と姉があなたのことを守ります」


 震えるアリシアの肩をぎゅっと抱き締めた。


「至急、外遊中のお父様を呼び戻すための伝令を遣わして下さい。いえ、お父様に相談するまでもありません。私の方で断固拒否する旨の書状を今すぐしたためましょう」


 そう言ってペンを手に取ろうとしたところ。


 どんっ、と屋敷のすぐ近くで爆発音がした。


「お嬢様!大変ですっ!」

「何事ですか!?」

「や、屋敷の前に武装した集団が…!」

「お姉様、これは一体…?」


 目まぐるしく変わる状況についていけず妹は完全に萎縮してしまっている。無理もない。強力な祝福を授かる才女と言ってもまだ十歳なのだ。

 

 私は妹を抱きしめる力を一層強くしながら「大丈夫です…大丈夫ですからっ」と自分にも言い聞かせるように繰り返した。


 口の奥で血の味がしたような気がした。


*****


 炎系統の祝福で破壊されたと思しき屋敷の門にはエリオットが乗ってきた馬車を先頭に、お抱えの騎士団や取り巻きの連中、どこの馬の骨ともわからぬ傭兵まで。玉石混交ではあるものの百人近い武装した集団が集まっていた。


「エリオット様、これは一体何事ですか?」


 エリオットは私とその背後にいるアリシアの姿を認めると下卑た笑いを浮かべて


「誰かと思えば無能令嬢のクレアではないか。だが今はお前に用などない。お前に代わり優秀な妹を娶りに来た。後ろに隠れているそいつを引き渡せ」

「お断りしますっ。アリシアも私もあなたとは金輪際、一切の関わりを持つつもりはありません。どうぞお引き取りを」

「力ずくで奪ってもいいんだぞ?お前の父親が現在外遊中で不在なのは把握しているんだ。お抱えの騎士も護衛として引き連れているため屋敷の戦力は半分程度なのだろう。何、無理やり攫ったとしても一度手籠めにしてしまえば後はどうにでもなる。お前の時みたいにこちらに都合の良いストーリーを流してやれば世間は簡単に騙せるからな」

「正気ですか…!?」


 いやらしい口調に歯噛みする。

 痛みが走った。


 すると。


「お姉様、伏せて下さいっ!」


 言うや否や、指から五色の筋を立ち上らせたアリシアが前に飛び出した。


「はぁっ!」


 右手を正面に突き出すと、それらは絡み合い、一本の奔流となって目の前の集団を襲う。


「うわぁぁ!」

 

 巨大な鞭で叩かれたように十人以上が盛大に吹っ飛ばされた。


「アリシア…!」

「危ないのでお姉様は後ろにお下がり下さい」

 

 その指から再び水、雷、火、氷、風の筋が立ち上っていた。


「この程度の相手、私の敵ではありませんっ」


 気丈に振る舞っているが、足が震えているのが見て取れる。


 ち、とアリシアの攻撃が逸れて無事だったエリオットが舌打ちした。


「やはり一筋縄ではいかないか……おいっ」


 彼が後ろに向かって声をかけると、他の者を押しのけるようにして馬に乗った武人が前に進み出てきた。


 その姿を見た私も妹も絶句する。


「デレク…ケイリー…様……」


 アリシアがその名を口にすると彼は鋭い目つきを返した。


「まだ子供ではないか。本当にお前が今の攻撃を放ったのか?」

「ケイリー、そこの小さい方の娘が例のアリシアだ。相手をしてくれ。この際だ、腕を一本程度折ってもいい。大人しくなってくれればむしろ助かる」


 私はアリシアを庇うように二人の間に割って入った。

 

「ケイリー様、これはどういうことですか。面識はありませんが、あなたは誇り高い人物と聞き及んでいました。何故、エリオットのような輩に手を貸すのです?」


 勘違いするな、とケイリーは私につまらないものでも見るような目を向けて言った。


「俺はお前達の縁談云々には微塵も興味がない。そこの男からこの国でも有数の祝福の使い手といわれる女がどれほどのものか見たくないかと誘われて足を運んだのだが…はあ、所詮はまだ幼子。期待外れだな」

「…黙って聞いていれば」


 煽られたアリシアが私の脇を通り抜けてケイリーに向かって突っ込んでいった。


「アリシア!」

「はああっ!」


 先程より太く束ねた五色の鞭を思い切り叩き落とす。


 だが。


「ぬるい」


 ケイリーは祝福で鋼のようになった片腕でアリシアの攻撃を受け止めた。


「な…!」


 馬から飛び降りたケイリーは一気にアリシアとの距離を詰めると彼女の首に手をかけた。


「悪いがこのまま気を失って貰うぞ」

「アリシアぁっ!」


 叫ぶと口の奥で一際強い痛みが走った。

 思わず顎を押さえながら、激痛を堪えて声を漏らす。


「アリシアを、離しなさいっ…!」

「お、お姉様…たす…け…っ!」


 鋼の腕で掴み上げられたアリシアはもがくが、首にがっちりと食い込んだ指は緩むどころかどんどん締める力を強めて彼女の意識を奪おうとする。

 目に涙を滲ませて自分の方を見つめているというのに、私は何も出来なかった。

「……っ!」


 口の奥の痛みに耐え切れず、私は膝を折りそうになるのを辛くも堪える。


「いいぞ、そのままその小娘を絞め落とせ!」


 エリオットが歓喜の声を上げていた。


 アリシア…アリシア…英雄神様、私はどうなってもいいから……アリシアは…アリシアだけは、どうか……っ!


「無能な自分を嘆くんだな、クレア!お前ももう少し可愛げがあれば妾として愛でてやったものの……お前の妹は俺の思うとおりに躾けてやるからなっ」



「…黙れ」



 口の中の痛みが急に引いた。

 代わりにどんどん熱くなってくる。

 私は妹を持ち上げる鋼の腕を睨めつけた。


「アリシアから…その汚い手を」


 これ以上は口を閉じていられない。

 私は口を思い切り開けた。


「離せぇっ!」


 ごぽ、と水底から大きな気泡が浮かび上がるような音が聞こえた気がした。

 次の瞬間。


 口から真っ赤な溶岩の塊が吐き出された。


「な…っ!」


 じゅ、と音がした時にはもうアリシアの首を掴んでいた手だけを残してケイリーの片腕が跡形もなく蒸発していた。


「アリシア!」


 地面に転がった妹にすぐさま駆け寄って未だ首にくっついていた鋼の腕を剥がしてやる。

 気道を確保してあげると、けほけほと咳き込みながらアリシアが薄っすら目を開けた。


「お、姉様…」

「ああ、アリシア!良かった!」


 私も妹も目に滲ませながら額を寄せ合った。

 

 すると背後からエリオットが喚き始めた。


「く、クレア!貴様、祝福が使えたのか…っ!そうか、俺を騙していたのか!この……この、嘘つき女……!」


「うるさい」


 言葉を遮るように私は彼の方を振り返って再び口を開く。

 今度は真っ赤な濁流のような炎で彼の足元を襲わせた。


「ひぃぃ!お、お前ら、早くクレアを…この化物女を始末しろぉ!」


 周囲の乱暴者たちがようやくどよめき始め、私達のもとに氷の矢や雷撃を放ってきた。

 しかし、もうそんなものは怖くない。

 私が顔を横に振ると、口から出た炎がそれらを一文字に焼き落とす。

 初めて使う祝福で集まってきた愚か者たちを殺さぬよう四苦八苦しつつ、ギリギリの場所を狙って炙っていく。

 瞬く間にエリオットが引き連れてきた集団のほとんどは散り散りに逃げてしまった。


 私はアリシアを抱きかかえながら、腰を抜かして座り込むエリオットを見下ろす。


「また来ればその時は容赦しません」


 私は口から青い火を軽く吐き出した。


「今度は骨まで残らず焼き尽くします」

「ひ、ひぃぃぃっ!」


 悲鳴を上げながら逃げようともがく彼をその場に放置して、私は妹を抱きかかえたまま屋敷へ戻ることにした。


「流石お姉様ですっ」


 まだ声が掠れているが、早くも元気を取り戻しつつあったアリシアが満面の笑みでそう言うと、私は堪らずその頬に自分の頬を擦り付けた。


*****


 あの後、報せを受けて急ぎ帰った父はすぐさま行動を起こした。

 あんなに激怒する父を見るのは初めてだった。


 かつて私が婚約させられたことが余程精神的にこたえたのだろう。ここしばらくは同じようにエリオットの実家に煮え湯を飲まされた者達を派閥にまとめ上げ、同じことがもう二度と起こらないよう対策を練っていたらしい。

 エリオットは自分の取り巻きを使ってあの日起こったことについて、あることないこと喋りまわったようだが全く聞く耳を持ってもらえないどころか、逆に何故武装した集団を引き連れて他家の屋敷に乗り込もうとしたのかを問い質され、司法の場に引きずり出されることとなった。


 その際に私たち姉妹も関係各所から話を聞かれたものの、担当者は私が新たに得た祝福を目の当たりにすると一様に青ざめた顔で「わかりました。信じます。信じますのでどうか我が国に慈悲を…」などと理由のわからないことを言って帰っていった。

 

 しばらくしてエリオットの実家がお取り潰しとなると風の噂で耳にした。

 

 困ったのは話が広がるに連れ、私のもとに届くようになった大量の縁談の申し込みである。

 今まで腫れ物に触るように遠巻きに眺めていた人達が掌を返したように下心丸出しで寄って来るようになった。

 終いには私のせいで鋼の腕を溶かされたデレク・ケイリーまで「竜のように…いや、竜より遥かに強いあなたに心を奪われてしまったので是非とも嫁に来てほしい」と便りを寄越してきやがった。誰があんな輩と二度と会って堪るものか。

 祝福のおかげかいつの間に復活した腕の件も含めて何一つ解せぬ。


 解せぬと言えば、私の祝福の話だが。


*****


「親知らずだね。前後左右四本ともまっすぐ生えてるし、歯並びに影響を及ぼさないからわざわざ抜く必要はないよ。歯を磨くときだけ気をつけなさい」

「はあ…?」


 かかりつけの歯科医に口の中を見てもらい診断を受けた私は思わず気のない返事をしてしまう。


「親知らずに祝福が宿るなんてことあるのでしょうか?」

「すごく珍しい事例だけど記録にはあるよ。今まで祝福の兆候がないように見えたのはこいつらが姿を現すまで発現しなかったからだね」

「な、なるほど。しかし、それにしては随分と強力な祝福ですが……」

「人体に何であるのかよくわからない器官ってあるでしょう?親知らずとか盲腸とか。そういう部位は”英雄神の名残”って言われてて、彼の力の源だったって説を唱える研究者もいるんだ。他の器官の祝福より強力になる傾向がある。記録に残ってる例も覇者とか大聖女とか歴史に名を残している人ばかりだし、下手すると君の祝福も最終的にはこの大陸中の軍隊が束になっても敵わないくらいにならないんじゃないかなあ」

「ははは、御冗談を…」


 乾いた笑いが漏れてしまう。


*****


「ご安心下さい、お姉様にふさわしい殿方は私がきちんと見定めます!」


 そう言いながらアリシアは寄越された縁談の手紙や写真をロクに精査することなく、一枚一枚丁寧に暖炉の火にくべていった。


「正直、私としては当面そういう話には関わりたくないですね。良い機会なのでお父様にもあまり気負わず気長に考えて貰いたいと近く申し入れるつもりです。今回のようなことがまた起きないとも限りませんし、少なくともアリシアが大人になるまであなたの傍を離れたくないですね」


 するとアリシアは少しもじもじとした後、私の座っているソファの隣にやって来て腰を下ろした。そのまま頭をぽふっと私の膝の上に置いて、甘えるような目で見上げてきた。


「私はお姉様が大好きなので嬉しいですけど…お姉様はいいんですか?」

 思わず笑みが漏れる。

 急に幼い頃に戻ったような妹を愛おしく感じながら「いいんですよ」と頭を撫でてあげた。 


 私の、愛しい妹。


「私もアリシアが大好きなのですから。あなたとずっといられるなら、そう……」


 無能と蔑まれた私ですが、妹のためなら火だって噴いてみせます。

短編、何作か書き溜めてた筈なのにいざ投稿しようと思ったらどれもガイドラインに抵触しそうなきわどいのばかりだったので今日も自転車操業です。そのうちそれらもどこかで公開したい。

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