第9話:用意された舞台
翌日。
教室には、いつもとは違う空気が流れていた。
ざわめき。
期待。
そして——わずかな緊張。
(……何かありますわね)
ヴィオレッタは席に着きながら、周囲の変化を捉える。
そのとき。
「本日は、重要な通達がある」
講師の声が教室に響いた。
ざわめきが止まる。
「来週より、“実践評価”を実施する」
一瞬の静寂。
そして——
空気が揺れた。
「内容は簡単だ。複数人でチームを組み、課題を解決する」
「成績はチーム単位で評価する」
ざわめきが広がる。
当然だ。
(……チーム評価)
個ではなく、集団。
(能力だけではなく、“構成”が問われますわね)
その時点で、戦い方が変わる。
「なお、チームは学園側で決定する」
一瞬。
思考が止まる。
そして——
(……そう来ましたの)
理解する。
これは——
(操作可能ですわね)
人員配置。
相性。
能力差。
すべてを“意図して組める”。
つまり——
(盤面を作れる)
ヴィオレッタは静かに目を細めた。
そのとき。
「では、チームを発表する」
教室の空気が張り詰める。
一人ずつ、名前が呼ばれていく。
そして——
「ヴィオレッタ・フォン・アストレイア」
一拍。
「ミレイユ」
ざわり、と空気が揺れる。
続けて——
さらに数名の名前。
だが。
(……偏っていますわね)
即座に理解する。
能力のバランスが悪い。
突出しているのは——自分だけ。
他は、平均以下。
そして。
(……ミレイユ)
標的。
明確すぎる構成。
(露骨ですわね)
だが——
証拠はない。
ただの“偶然”で片付けられる範囲。
「以上だ」
講師の声が締める。
ざわめきが戻る。
視線が集まる。
同情。
興味。
そして——期待。
(試されていますわね)
ヴィオレッタは静かに立ち上がる。
ミレイユへ視線を向ける。
わずかに、不安の色。
だが、それだけではない。
(……覚悟がありますわね)
逃げない。
選んでいる。
「問題ありませんわ」
短く告げる。
それだけで、ミレイユの表情がわずかに変わる。
そして——
そのとき。
「面白い組み合わせだな」
ルシアンの声。
どこか楽しげな響き。
「そうですわね」
ヴィオレッタは微笑む。
だがその奥で。
(完全に、仕掛けられていますわね)
確信する。
これは偶然ではない。
意図された配置。
そして——
(ここで、結果を出せるかどうか)
試されている。
そのとき。
視線を感じる。
振り向く。
セレスティア。
変わらぬ微笑み。
だが、その奥に。
はっきりとした“意志”。
(……貴方ですわね)
言葉にはしない。
だが、理解している。
そして——
「楽しみですわね」
セレスティアが、静かに告げる。
「ええ」
ヴィオレッタは応じる。
「とても」
視線がぶつかる。
逃げない。
逸らさない。
そして——
(この舞台、使わせていただきますわ)
不利な盤面。
整えられた状況。
だが。
(覆せないとは、限りませんわ)
静かに、思考が研ぎ澄まされていく。
実践評価。
それは——
単なる試験ではない。
“戦場”だった。
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