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天は星に願いを込める~麗しの第二王子殿下は天才近衛魔術師を溺愛中~  作者: 宮前 雫


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9.クラスメイト



父を行きと同じ門で見送ったステラは、鐘楼の鐘が鳴るのを聞いて慌てて時間を確認した。


新入生のオリエンテーションがあり、十五時に校舎の教室に集まるように案内されていたのだ。

第二王子殿下の近衛魔術師となったステラだが、殿下からは学業は極力優先するよう許可をいただいたので、普段はなるべく普通の学院生活を送るつもりだ。


三時間おきの鐘が鳴ると言うことはもう十五時。


(ち、遅刻よ…。

アルカニス魔法伯の名に恥じぬようって言ったそばから恥じてるわ…せめて走らないと…。)


本日二回目の全力疾走で校舎に向かう。


教室に着くと、もうオリエンテーションは始まっているようで扉は閉じていた。

目立たず生きてきたステラにとってこんなに大胆な遅刻など恥ずかしくて火を噴きそうだったが、恥を忍んでノックする。


「ステラ・アルカニスです。」

「入りなさい。」


アンデモール先生の声が聞こえ、扉を開きそっと体を潜らせる。


「遅れてしまい、大変申し訳ありません。」

「第二王子殿下から事情は聞いていますので大丈夫ですよ。あなたの席はそちらです。」


目を見開いたステラに先生が微笑む。

さすが第二王子殿下、抜かりがない。

そのお気遣いに救われたのでありがたい。

「第二王子」のワードとステラの胸に増えた徽章に気付いて「おい、あれって…」と教室がざわつく。


「ありがとうございます、先生。」


もうこれ以上噂になりませんように。

そう願って、なるべく存在感を消して席に着く。


オリエンテーションでは学院のルールや建物の説明があった。

男女の寮は行き来しないこと、の言葉に何人かの男子がクスクスと笑う。

ステラは第二王子殿下と同じ建物に部屋が与えられるらしいが、そんなことを知られたらこの男子達にどんな妄想をされるのかと思うと恥ずかしくて卒倒しそうだった。


そして先程までステラがいた鐘楼棟は主に来賓の接待のための建物、応接室だと思っていた部屋は貴賓室で、生徒は入ることのできない部屋だということも知った。

初日から刺激的な学院生活だと思っていたが、今日だけで何個規則を破ったのか。

咎められることはなさそうだけど、ステラの脆弱な胃が痛んだ。




「では、これにてオリエンテーションは終了します。

明日は朝九時にこの教室に来るように。

特別な事情がない限り、遅刻は認めません。

それでは、解散。」


特別な事情で何人かの生徒がチラリとステラを見たのがわかって耳まで赤くなった。


そして、解散の言葉と同時にクラスの全員がステラを取り囲む。


「ステラ、その徽章って…」


おきまりで、先陣を切って話しかけたのはクリスフォードだ。

皆と最後に話したのはレオナルドに抱えられて鐘楼棟に向かうときだったことを思いだし、赤面する。


「あ、これは、いや、その…」

「もしかして、第二王子殿下の近衛魔術師になったの?」


ステラの横に座っていたエリザベス・フォード伯爵令嬢が冷たい声で聞いた。

フォード伯爵家は第二王妃陛下の生家で、エリザベスは第一王子殿下の従妹だ。

第一王子派の筆頭中の筆頭で、同じく第一王子派のアストラ伯爵家と縁がありクリスフォードとも幼馴染みらしい。


ステラは背筋が凍る思いで答える。


「恐れながら、任命していただいたの。

私の魔力を欲しいと言ってくださって。」


これは殿下と口裏を合わせておいた言い訳だ。

嘘は言っていないのですらすらと口から出てくる。


「たしかに、ステラの魔力すごかったもなぁ。また普通に戻ってるけど。」


クリスフォードが反応を返してくれてほっとする。


「目立つから…。私、地味に生きたくて…。」

「いや、今のところ地味の地の字もないだろ。」


横から茶化したのはドラード・グラディウス子爵令息だ。

騎士の家系で、アルカニス伯爵家と同じように一代限りの爵位を持っている。

彼は貴族然としていなくてなんとなく気が合いそうな気がしている。


「勘違いされていそうで恥ずかしいわ。

私ほんとはこんな人間じゃないのに…。」

「君のことはほとんど知らないけど、首席入学で、王国魔術師団長の愛娘で、リュクス公爵令息様のお気に入りで、第二王子殿下の近衛魔術師ってことは知ってるぞ。」


今度こそ顔が真っ赤になって火を噴きそうだ。


「もうっ!やめて、ドラード。

私はレオナルド様のただの幼馴染みだし、第二王子殿下は魔力を目に留めていただいただけだし、普通に学院生活を過ごしたい、それだけなの…。

できれば、皆とお友達になれたら嬉しい…けど…。」

「もう友達じゃないか。ステラは僕らの自慢だよ。」


クリスフォードが肩を抱いてステラの体を揺さぶる。

貴族らしからぬ距離の近さには驚くが、先程レオナルドに凍てつくような視線を送られたのは気にしていないみたいでほっとした。


「ステラ、寮に行きましょ!私たちもステラの話を聞きたくてうずうずしてるんだからっ!」


明るく声をかけてくれたのはアリス・ヴィルゴー伯爵令嬢だ。

ヴィルゴー伯爵は農地改革に積極的で、領民からの信頼が厚いと聞く。

第二王子派だったはずだけど、きっとアリスはどちらの派閥であっても明るくステラを気遣ってくれただろう。


でも…。


「アリス、誘ってくれて嬉しいんだけどごめんなさい。

私、授業以外の時間はなるべく殿下のお側で護衛をしたいの。」


間違っても同じ建物に暮らすとは言わないようにしよう、と思っていたが。


「あら!もしかして殿下の特別寮に住むのね?

大変そうだけど、また明日話しましょうね。」


察しの良いアリスには筒抜けで、ステラは今度こそ羞恥心で倒れそうだった。





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