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天は星に願いを込める~麗しの第二王子殿下は天才近衛魔術師を溺愛中~  作者: 宮前 雫


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14/23

14.下賜



放課後、校舎の入り口でヴァレン殿下を待っていたステラは、チクチクとささるような視線を感じた。


(《刻印》した敵ではなさそうだけど…。)


話し声が聞こえたので殿下とレオナルドかと思って振り向くと、上級生の男子生徒が数人こちらにやってくるのが見えた。


「第二王子の近衛魔術師さん。」


嘲笑うかのような口調で呼びかけられムッとするが、意図がわからないので会釈だけ返しておいた。


「いつもここで第二王子殿下を待っているよね。

君、本当は愛人か何かなんじゃないの?」


(私みたいな色気の欠片もない令嬢を愛人だなんて殿下に失礼だわ。)


内心そう思いながらも、反応したら負けだと思い、無視を決め込む。

領地の騎士の中には下賤な物言いでステラをからかう者もいたので慣れている。


「入学式の時は驚いたけど、今の君、近衛魔術師とはとても思えないし。僕達と魔法で手合わせしてよ。」

「申し訳ありません。第二王子殿下のご命令でなければ従えません。」

「えー、つまんないな。やっぱり愛人説濃厚かなぁ。」


上級生といっても恐らく二年生だろう。

魔力を隠す術を学院で学ぶのは三年生のはずなので、魔力を隠すことにどれだけ魔力を費やす必要があるのかわからないのだ。


(余計なことを言って殿下にご迷惑をかけても申し訳ないし、無視に限るわ。)

そう思って黙って立っていると、男子生徒達は段々距離を詰めてきた。


「綺麗な顔してるけど、第二王子殿下も君の顔が好きなのかな?」


男子生徒の一人がステラの頬に触れようと手を伸ばしてきたその時、コツコツと静かな足音がした。




「誰の物に手を出しているんだ。」



人を従わせる不思議な声色。

怒りが滲むその声は、「氷の殿下」と呼ばれるのも頷けるほど冷えきっていた。


「だ、第二王子…殿下…。」

「そなたが触れようとしたのは、私の物だ。

王族の物に手を出す罪の重さをわかっているのか。」

「も、も、申し訳ありませんっ…。

第二王子殿下への不敬を、お、お許しください…。」


震えながら跪く男子生徒達の後ろで、追い付いてきたレオナルドが目を見開いて驚きの表情を浮かべているのが見えた。


「この者に二度と触れるな。立ち去れ。」


その場にいるだけで震えそうになる圧倒的な威圧感。

男子生徒達は一刻も早く逃げ出したかったのだろう。散り散りに走り去っていった。



「ステラ、大丈夫だった?」

「だ、大丈夫です。助けていただきありがとうございました。殿下のお手を煩わせてしまってすみません。」


すっかりいつもの口調に戻ったヴァレン殿下にどぎまぎしながら答える。

近衛とはいえ私なんかにここまでしていただいて申し訳なく思う。


「ステラ…。大変なことになる前にヴァレンが間に合ってよかった。」

「レオ様、少しからかわれただけなので大丈夫ですよ。

お二人とも、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。」

「君が謝ることはない。早く寮に帰ろうか。」


そう言って歩きだしたヴァレン殿下に肩を抱かれ、驚いて顔を見上げる。

濃い金色の瞳がステラの瞳をじっと捕らえたが、どうしたらいいのかわからなくて瞳を伏せる。


「レオ、ではまた明日。」

「あぁ…。また明日。」





肩を抱かれたまま殿下の特別寮に着くと、そのまま寮の応接室に連れていかれる。


「ステラ、本当に何もされていない?大丈夫?」


応接室の机を挟んで座ったヴァレン殿下が心配そうに私の顔を覗き込む。

近すぎる距離感に、先ほどまでまともに息ができていなかったステラは息を整えてから答える。


「本当に少しからかわれただけなんです。

殿下を心配させてしまうくらいなら一発決めておくべきでした。申し訳ありません。」


王立魔法学院の生徒とはいえ、魔力を隠す術も知らないような未熟な魔法使いだ。

呪文一つで再起不能にできる自信がある。


「い、一発決めるって…ステラを見てると本当に飽きないね。大丈夫ならよかった。」


あんなに冷えきった声を出した人と同一人物は思えない、温かい声で殿下が笑った。


「朝言ったことを覚えているかい?」

「あ、あの、はい…。私に何かいただけるというお話ですよね。」


忘れるはずがない。

王族に下賜(かし)されるなんて、一生に一度あるかないかの光栄だろう。


「レーベン、ここへ。」


寮にはヴァレン殿下の直属の使用人が何人か住み込みで働いている。

殿下が幼い頃から仕えているというベテランの執事が抱えてきたのは、深紅に染められた豪華なドレスだった。

たくさんの宝石が縫い留められていてキラキラと照明を反射するそのドレスは、社交に疎いステラでも一目見て価値のあるものだとわかった。


「明日これをステラに着てほしいんだ。」


ヴァレン殿下のおっしゃることが信じられなくて目を見開く。


「あ、あ、あの、私、明日は近衛として参加するのでは…。」

「私は一緒に王城に行こうと言ったんだ。護衛をしてくれとは頼んでいないよ。」


ヴァレン殿下は不敵な笑みで答える。

たしかに、初めて予定を聞いた日から今まで、一度も夜会での護衛について具体的な話は聞いていない。


「わ、わ、私はど、どのような立場でこちらを着るのでしょうか…。」

「君は黙って私にエスコートされていればいいよ。何も考えなくていい。」

「わ、わ、わ、私がっ、で、で、殿下のエスコートで…っ」



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