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第8話:0.01%への最短ルート

お読みいただきありがとうございます! 遙 カナタです。

前回の第7話、葉月の「宣戦布告」はいかがでしたでしょうか。

「あいつらの口を、指先一つで塞ぎに行くぞ」

その言葉通り、絶望をロジックでねじ伏せるための、あまりにも過酷な地獄の特訓が本日、幕を開けます。

外野が「#トリニティ・レイド逃亡中」と嘲笑う中、クローズドな部屋で静かに産声を上げた三人の「変貌」。

執筆初心者ながら、一文字ずつ魂を込めて「正解」を綴りました。

静かなる怪物の胎動を、ぜひ見届けてください。

 ボイスチャットに流れる、かつてないほど重苦しい沈黙。

 配信を切り忘れた。その一つのミスが、三人の少女たちを「大炎上中のVtuber」へと叩き落としていた。

『……ねえ、コーチ。SNSの通知が、止まらないの』

 ほむらの震える声。

『……世界中が私たちのことを「男の操り人形」だって笑ってる。……このまま、何も言わずに練習を続けても、あいつらの嘲笑(れいしょう)は消えないわ。……私たちは、何か「釈明」の配信をすべきなの……?』

 その問いに、ねねが小さく鼻をすすり、レイが奥歯を噛みしめる。

 釈明か、謝罪か、あるいは反論か。

 だが、俺はキーボードを叩く音一つ立てず、冷徹に言い放った。

「……釈明など、時間の無駄だ。SNSの通知を切れ。リスナーのノイズも、全て遮断しろ」

『え……? でも、今黙り込んだら「認めた」ことになっちゃうよ!』

 レイが驚いたように声を上げる。だが、俺の正解は変わらない。

「思わせておけばいい。……外野の評価など、最後にスコアボードで上書きすれば済む話だ。……今のお前たちに必要なのは、言い訳を並べる時間じゃない。泥を啜ってでも『正解』を脳に焼き付ける時間だ」

 ――沈黙。

「お前たちは世間から消えろ。あいつらが一番絶望するのは、罵倒された俺たちがシュンとすることじゃない。次に俺たちが表舞台に現れたとき、自分たちの想像を絶する『怪物』に変貌していると悟った瞬間だ」

 俺の言葉に、三人のアイコンが、覚悟を決めたように力強く点滅した。

『了解……。やってやるわよ。……ねね、ほむら。余計なものは全部、シャットアウトよ』

『……うんっ! 練習、頑張る!』

『……わかったわ。情報の遮断……それが一番合理的ね』

 三人のアイコンが、覚悟を決めたように力強く点滅した。

 外部のノイズを全てシャットアウトした、クローズドな地獄の始まりだ。

「……降下開始。目標、南西一キロ、あの三叉路に放置されている車両だ。一秒でも遅れたら、もう一度最初からだ」

『了解……! 行くわよ、二人とも!』

 レイの号令とともに、三人が輸送機から虚空へと身を投じる。

 だが、現実は甘くない。

「……甘い。レイ、パラシュートを展開する角度がコンマ五秒早い。空気抵抗を計算しろ。その位置だと道路まで届かないぞ」

『――っ!? うそ、届か……届かない!』

 焦るレイのアバターが、目標の車両から数十メートル手前の草むらに不格好に着地する。

 武器も防具もない。ただの丸腰だ。もしここに敵がいれば、その瞬間に詰んでいる。

「次、ほむら。地図を広げるな。脳内の等高線だけで、パルス収縮の三手先を予測しろ。そこが次の『安置』だ。三秒以内に答えろ」

『……ええ。……ここね。北東の、あの名もなき丘の一軒家!』

「遅い。パルスが始まってからでは車列が被る。……今の予測、一〇秒前に出せていなければ全員『死体』だと思え。やり直しだ」

 一時間、二時間。

 三人の返事は次第に短くなり、代わりにキーボードを叩く音だけが、マイク越しに規則正しく響き始める。

「……南、二〇〇メートル。岩陰に伏兵一」

『……捕捉。……偏差一五〇、三、二、一。……落としたわ』

 レイの報告は、もはや叫びではない。

 獲物を仕留める猟犬のような、静かな確信。

 パルスが迫る極限状態。かつてならパニックに陥っていたはずのねねも、今は無言で車のハンドルを握り、俺が指定した「唯一の正解」へと迷いなくアクセルを踏み込む。

 三人が費やした時間は、外野が嘲笑っていた「時間の無駄」などではない。

 自分の心臓の音さえノイズだと断じた俺のロジックを、その細胞に焼き付けるための、血の滲むような書き換え作業。

 「……そこまでだ。手を離せ」

 三人のアバターが、精根尽き果てたように動きを止める。

 三日間、ノイズを排して泥を啜り続けた彼女たちの瞳には、もはや「0.01%」の絶望など微塵も残っていなかった。

「及第点だ。だが、ここからが本物の地獄だ。……いいか、一週間後の『日本代表決定戦・一次予選』の概要を叩き込んでおく」

 俺は画面を共有し、無機質なトーナメント表を映し出した。

 そこには、有名プロチームから企業勢Vまで、数多の強豪の名が並んでいる。

「参加チーム数は三〇〇を超。一次予選は四グループに分かれ、上位三チームのみが本選へ進む。……一戦のミスも許されない、文字通りのデスゲームだ」

『……三〇〇チームの中から、上位一二チームだけ……。流石に、厳しすぎるわね』

 ほむらが、眼鏡の奥で冷静に戦慄する。だが、俺は淡々と続けた。

「さらに、今回は『ポイント制』だ。キル数も重要だが、何より順位ポイントが勝敗を分ける。……つまり、撃ち合いの強さだけでは、この予選は絶対に突破できん。……レイ、分かっているな」

『……ええ。……「安置を支配する」ってことね。あいつらが血眼になって撃ち合っている横を、私たちは最短ルートで駆け抜ける』

 レイの、飢えた獣のような不敵な笑み。

 俺は、無言でキーボードに手を置いた。

「……SNSでは未だに『#トリニティ・レイド逃亡中』というタグが踊っている。……あいつらは、お前たちが敵前逃亡したと思い込み、予選のリストにその名前があることすら予想していないだろう」

 ――沈黙。

「予選開始まで、あと七日。……その七日間で、あいつらの嘲笑を、絶叫に変える準備をしろ。……次のレッスンまで三時間。仮眠を取っておけ」

 夜明け。

 静かなる怪物の胎動が、暗闇の中で加速していく。

第8話までお読みいただき、本当にありがとうございました……!

「……そこまでだ。手を離せ」

自分たちの心臓音さえノイズだと断じ、泥を啜り続けた三日間。

かつてパニックに陥っていた彼女たちの瞳から、絶望が消え、猟犬のような「静かな確信」が宿るまで……。

書いていて、僕自身のキーボードを叩く指先まで熱くなるような感覚でした。

外野が彼女たちの敵前逃亡を信じて疑わない中、着々と準備を整える怪物たち。

彼女たちが再び表舞台に現れたとき、世界はどうひっくり返るのか。

続きが少しでも「熱い!」「もっとやれ!」と思っていただけたら、下の【☆☆☆☆☆】から評価(星★)や、ブックマークをいただけると、初心者の僕にとってこれ以上ない執筆エネルギーになります!

明日も20:00に更新予定です。

それでは、また明日の戦場(更新)でお会いしましょう!


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