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第7話:消し忘れた配信

お読みいただきありがとうございます! 遙 カナタです。

第6話までの「実技指導」、いかがでしたでしょうか。

執筆初心者ながら、スキルなしのFPSで「ロジックが勝つ快感」をどう描くか、一文字ずつ悩みながら絞り出しました。

ですが、今夜の第7話……物語は一変します。

消し忘れた配信。漏れ聞こえたコーチの毒舌と、伝説の正体。

そして、SNSで急速に拡散される冷酷なハッシュタグ。

「#女Vに世界は無理」

彼女たちの努力さえも「男の操り人形」として汚していく、無理解な嘲笑の嵐。

この物語の本当の「敵」が、牙を剥いて三人に襲いかかります。

初心者の拙い筆ではありますが、僕が一番描きたかった「逆襲の始まり」を詰め込みました。

続きが気になったら、ブックマークや評価(星★)で背中を押していただけると、初心者の僕にとって唯一の救いです!

それでは、第7話――「消し忘れた配信」をお楽しみください。

 定時退社を告げるチャイムが鳴り、俺はいつものように駅のホームでスマートフォンを開いた。

 だが、画面を見た瞬間に思考が凍りついた。

 通知センターが、見たこともない数のSNS通知で埋め尽くされている。

『#トリニティ・レイド』

『#時間の無駄』

『#女Vに世界は無理』

 トレンド欄に並ぶ、最悪なワードの羅列。

 嫌な予感を抱えながら、俺は拡散されている「切り抜き動画」をタップした。

『――あはは! お菓子お菓子ー! みんなバイバーイ!』

 ねねの無邪気な声。だが、配信終了ボタンの押し忘れにより、その後の「密談」がすべて全世界に垂れ流されていた。

 俺が放った「時間の無駄」という一喝。ねねを操り、敵を「物理的に詰ませた」あの精密な誘導。

 そして――姉貴が漏らした「伝説の指揮官、OUKA」という名前までも。

 動画のコメント欄は、単なる誹謗中傷を超えた「理論武装した悪意」に支配されていた。

『これ、コーチが別垢でゴースティング(位置特定)して指示出してるだけだろ。女Vがこんなロジカルなオーダー理解できるわけないし。出来レースお疲れ様ですw』

『伝説の指揮官? 落ちぶれた元プロが女V囲って売名とか惨めすぎて見てられないな』

『結局、男が裏で操るワンマンチームかよ。三人のわちゃわちゃが好きだったのに、ガッカリだわ』

 そして、SNSで急速に拡散される『#女Vに世界は無理』というハッシュタグ。

『FPSは男の聖域。女の脳構造じゃ、一秒先の盤面支配なんて逆立ちしても無理。それがこの競技の「正解」なんだよ』

『接待プレイでチヤホヤされてりゃいいのに。本気で世界を目指すとか、バカにされるために配信してるのか?』

 スマホの画面越しに、冷ややかな嘲笑が突き刺さる。

 応援していたはずのリスナーまでが、「裏切られた」と声を上げ始めていた。

「……チッ」

 俺は思わず舌打ちし、スマホをポケットに叩き込んだ。

 匿名という盾の後ろから、彼女たちの「努力」さえも「男の操り人形」として汚していく。

 電車に揺られる三〇分が、これほど長く感じられたのは五年前のあの日以来だった。

 帰宅し、震える指でパスワードを入力してボイスチャットにログインする。

 スピーカーから流れてきたのは、いつもの騒がしい喧嘩の声ではなかった。

『……っ、ひぐっ……。ごめんなさい、ねねの、ねねのせいで……っ!』

 月城ねねの、過呼吸に近い嗚咽。

 いつも天真爛漫な彼女が、自分の一つのミスで世界中から叩かれている現実を突きつけられ、子供のように泣きじゃくっていた。

『……悔しいよ。なんで、私たちが女だからって、あんなに言われなきゃいけないの? 私たちの努力、全部「男の操り人形」で片付けられちゃうの……?』

 緋ノ宮レイの声は、怒りと無力感で掠れていた。

 情熱を注いできたFPSという聖域で、「女」という属性だけで実力を否定される不条理。その刃は、彼女の誇りをズタズタに引き裂いていた。

 だが、何より重く響いたのは、論理派の蒼星ほむらの、冷え切った呟きだった。

『……ねえ、コーチ。さっき、過去10年の世界大会のデータを洗ったわ。……女性チームの予選突破率は、0.01%以下。……彼らの言う通り、私たちの脳構造や反射神経の限界値じゃ、最初から勝負にならないのかもしれない……。私たちのやってること、本当に「時間の無駄」だったんじゃないかしら……』

 理屈で自分たちを納得させようとする、最も深い絶望。

 モニターの向こう、SNSのタイムラインには、今もなお凶器のような言葉が踊っている。

『#女Vに世界は無理』

『結局は男のワンマンチーム。ビジネス最強お疲れ様』

『Vの皮を被った素人が、FPSの聖域を汚すなよ』

 三人の嘆きと、画面越しの無慈悲な嘲笑。

 俺は、そのすべてを無言で聞き続けていた。

 

 マウスを握りしめる右手が、ミシリと音を立てる。

 五年前。自分一人が壊れて終わったあの日とは違う。

 目の前で、信じ始めたばかりの三人の「心」が、顔の見えない群衆の手によって摩り下ろされている。

「……おい」

 低く、地を這うような俺の声が、慟哭(どうこく)に沈んでいたボイスチャットを裂いた。

 泣きじゃくっていたねねが、息を呑む。

 震えていたレイが、固まる。

 データを並べて絶望していたほむらが、モニター越しに俺の「気配」を凝視した。

『……コーチ。……今の、SNSのタグ。見たわよね?』

 ほむらが、震える声で再確認する。

 「#女Vに世界は無理」。

 世界中が彼女たちを「客寄せパンダ」だと嘲笑い、男の指揮官がいなければ何もできない操り人形だと指を差している現実を。

「……見た。五分で飽きたがな」

 俺は椅子を深く引き、ヘッドセットのマイクを口元に寄せた。

 慰めるような甘い声ではない。

 むしろ、彼女たちが抱えた絶望を、根底から踏みにじるような冷徹な響き。

「ほむら。お前が言ったその『0.01%』という数字。……それは、正しいロジックを学ばなかった馬鹿どもの統計だ。 そんなゴミ山を根拠にするな」

『――っ!?』

「レイ。女だから勝てないんじゃない。お前たちがまだ『勝つためのロジック』を持っていないだけだ。……弾道の物理法則に、性別なんていうノイズが干渉するとでも思っているのか?」

 俺は、無機質なログイン画面を見つめた。

 そこには、かつての自分と同じように、顔の見えない群衆の「悪意」に押し潰されようとしている三人の命があった。

「外のノイズを拾う暇があるなら、俺の正解だけを聴け。……世界を獲れば、誰も文句は言わん。――あいつらの口を、指先一つで塞ぎに行くぞ。準備しろ」

 沈黙。

 だが、それは絶望の沈黙ではなかった。

 逆転の予感に、ボイスチャットの温度が跳ね上がる。

『……ふっ、あはは。……そうよね。あんたに「時間の無駄」って言われるより、外の馬鹿たちに言われる方が、よっぽど腹が立つわ!』

 レイが、涙を拭って不敵に笑う。

『……了解。コーチ、あなたのロジックに賭けるわ。0.01%の壁なんて、私たちが最高に楽しみながら、粉々に粉砕してあげる』

 ほむらの瞳に、理性の炎が戻る。

『ねねも! ねね、あいつら全員、後悔させてやるんだからー!』

 三人の覚悟を受け止め、俺はマウスを力強く握り直した。

 五年前に捨てたはずの「王座」への最短ルート。

 今度は一人じゃない。俺の「正解」を形にする、三人の銃口がある。

「……いい返事だ。なら、今すぐ武器を取れ。画面から一瞬でも目を離せば、次こそ本当に置いていくぞ」

 ――騒ぎたい奴らには、勝手に騒がせておけばいい。

 俺たちが次に世界に見せるのは、醜い言い訳じゃない。

 絶望すらもロジックでねじ伏せる、圧倒的な「勝利」の二文字だ。

第7話までお読みいただき、本当にありがとうございました……!

「――世界を獲れば、誰も文句は言わん。あいつらの口を、指先一つで塞ぎに行くぞ」

世界中から叩かれ、絶望に沈んでいた三人を救った、葉月の宣戦布告。

執筆初心者ながら、キーボードを叩く指が震えるほどの熱量を込めて書きました。

物理法則に性別はない。

絶望すらもロジックでねじ伏せる、圧倒的な「勝利」の二文字を。

ここから、彼女たちの「本当の戦争」が始まります。

明日の第8話、彼らがどんな「一歩目」を踏み出すのか。

ぜひ、その目で見届けていただければ幸いです。

続きが少しでも「熱い!」と思っていただけたら、下の【☆☆☆☆☆】から評価(星★)や、ブックマークをいただけると、初心者の僕にとって最大級の執筆エネルギーになります!

明日も20:00に更新予定です。

それでは、また明日の戦場(更新)でお会いしましょう!

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