第4話:時間の無駄
お読みいただきありがとうございます! 遙 カナタです。
昨日、初投稿で3話連続更新を行いましたが、本日からはいよいよ物語が加速していきます。
第4話は、伝説の指揮官(OUKA)が初めてその「牙」を剥くエピソードです。
「――効率が悪すぎる。お前たちがやってるのは努力じゃない。ただの時間の無駄だ」
甘えを許さない彼の「ロジック」が、新人Vtuberたちを、そして読者の皆様をどう「わからせて」いくのか。
執筆初心者の拙い筆ではありますが、魂を込めて書きました。
続きが気になったら、ブックマークや評価(星★)で背中を押していただけると、執筆の大きなエネルギーになります!
それでは、第4話――「時間の無駄」をお楽しみください。
「……ちょっと、待ちなさいよ」
ヘッドセット越しに、叩きつけるような拒絶の声が響いた。
リーダーの緋ノ宮レイだ。画面の中の赤いアバターが、怒りを体現するよう激しく小刻みに揺れている。
『納得いかないわ。私たち、三人の「仲良しグループ」で頑張ってきたのよ? そこにいきなり、Mintyさんの弟だからって理由だけで男が入り込むなんて……。デリカシーなさすぎるわよ!』
レイの声には、戸惑いと明確な拒絶が混ざっていた。
配信者として、そして女子3人のユニットとして築いてきた聖域を、部外者の「ただの一般人の男」に土足で踏み荒らされることへの、本能的な嫌悪感。
『大体、配信の空気だって壊れるわ。リスナーだって、急に知らない男の声が混ざったら困惑するに決まってる。……あんた、そこにいるんでしょ。黙ってないで何か言いなさいよ!』
俺は、姉貴に頭を抑え込まれたまま、冷めた目でモニターを眺めていた。
彼女たちがさっきまで戦っていたリザルト画面――命中率、移動のルート、タイミング。そのすべてが、俺の目には「非効率の塊」にしか見えなかった。
「……男だ女だ、配信の空気がどうだ。そんな話をしに来たのか?」
俺は初めてマイクのスイッチを入れ、低く、湿り気のない声を送り込んだ。
「勝つために必要なのは、性別でも愛嬌でもない。……正しい『選択』だけだ」
『なっ……! 何よ、偉そうに! 私たちが今日までどれだけ必死に練習を積み上げてきたか、知りもしないくせに!』
「……練習、か」
俺は小さく、溜息を漏らす。
「あんな、的にも当たらない乱射を練習とは言わない。――効率が悪すぎる。お前たちがやってるのは努力じゃない。ただの『時間の無駄』だ」
『――っ!!』
『……あんた、そこにいるんでしょ。黙ってないで何か言いなさいよ!』
レイの怒声がヘッドセットを震わせる。だが、その直後。
水を差すような、温度の低い声が混ざった。
『……レイ、落ち着きなさい。……男性が入ることへの懸念は、統計的にもリスナーの離脱率に影響するわ。あなたの主張は論理的よ』
碧い髪のモデル――蒼星ほむらだ。
彼女はレイをなだめるフリをしながら、その実は、モニター越しに俺の反応を「観測」していた。
『……でも。Mintyさんが、ただの「一般人の弟」を連れてくる確率は、計算上0.1%以下。……あなた、何者? その声のトーン……どこかで聞いたことがある気がするんだけど』
探るような、冷徹な視線。
一方で、もう一人の黄色いアイコンは、相変わらず別次元にいた。
『えー? ほむほむもレイレイも、考えすぎだよー! お名前がお花なんだから、きっと優しい人だよ! コーチくん、ねねにお菓子くれるー?』
ねねの緊張感のかけらもないその声が、爆発寸前だったレイの怒りに、文字通り油を注いだ。
『ねね! ふざけないで! ……とにかく、男のコーチなんて私は絶対に認めないから!』
『……とにかく、男のコーチなんて私は絶対に認めないから! デリカシーなさすぎよ!』
レイの叫びに、横で缶ビールを開けた姉貴がクスクスと笑い声を漏らした。
「デリカシーねぇ……。ねえレイ、あんたたちのリスナーが一番見たくないものって何だか分かってる? 男の声が入ること? 違うわよ」
姉貴はモニターを指差し、冷徹な現実を突きつける。
「『負け続けて、泣き言を並べるあんたたちの顔』よ。勝てない配信者にデリカシーなんて言葉、贅沢すぎるわ」
『――っ!!』
「……姉貴の言う通りだ」
俺は、レイのプライドを粉々に打ち砕くように、淡々と言い放った。
「男だ女だと言い訳を探している暇があるなら、自分の弾がなぜ当たらないのかを考えろ。……そんな『ごっこ遊び』の延長線上で努力を語るな。反吐が出る」
『……なっ!? ごっこ遊び!? あんた、今なんて言ったのよ! 何も知らない一般人のくせに……! だったら、あんたが今すぐやってみなさいよ! 口だけなら誰だって言えるんだから!』
レイの絶叫が、ヘッドセットの鼓膜を震わせる。
姉貴がニヤリと笑い、俺の背中を叩いた。
「ほら葉月。一回だけ、『本物の景色』を見せてあげなさい」
だが、俺はデバイスに手を伸ばさなかった。
ただ、画面の中でピコピコとエモーションで踊っている黄色いアイコン――ねねにだけ、視線を向ける。
「……ねね。お菓子を食べるのは、あと三秒待て」
『えっ? コーチくん、なんでお菓子のこと分かったの!? もぐもぐ……え、三秒?』
「……三、二、一。――右、九十度。レティクルを指一本分下げて、クリックしろ」
『ふぇっ!? はいっ!』
俺の声に弾かれるように、ねねがマウスを振った。
次の瞬間、無人の雪原に見えていた画面の右端から、敵が一人飛び出してきた。――ちょうど、ねねが置いていた照準の先へと吸い込まれるように。
鈍い乾いた発射音。
画面には【HEADSHOT】のログが鮮やかに踊った。
『……えっ? あたったー! なんでー!? ねね、なにも見えなかったよ!?』
絶句したのは、レイとほむらだ。
今のタイミング。今の位置。
敵の足音すら聞こえていなかったはずの距離で、まるで未来を予知していたかのような正確な狙撃。
『……ありえない。今の、エリア収縮の速度と遮蔽物の配置から逆算したの……? ……この人、盤面を「視」てる……』
ほむらの声が、戦慄で微かに震えている。
俺は冷めた瞳のまま、追い打ちをかけるように言い放った。
「……レイ。お前が練習している『乱射』の価値は、今のねねの『一秒』以下だ」
『――っ!!』
「自分の才能を信じるな。……俺の教えは、世界で一番短い。――付いてくるなら、勝たせてやる」
通話の向こう側が、初めて静まり返った。
不信感が驚愕へ、驚愕が「底知れない恐怖」へと塗り替えられた沈黙。
俺の隣で、姉貴が満足げにビールを飲み干した。
「さあ、レッスン開始よ。お姫様たち」
――こうして、俺の平穏な会社員生活は、完全に終わりを告げたのだった。
第4話までお読みいただき、本当にありがとうございます!
遙 カナタ(はるか かなた)です。
伝説の指揮官(OUKA)による、初めての「わからせ」。
執筆初心者ながら、キーボードを叩く指が震えるほどの熱量を込めて書きました。
厳しすぎる彼の「正解」のロジック。
それを聞いた三人の新人Vtuberたちが、どう変わっていくのか。
明日の第5話では、葉月(OUKA)がなぜ最強でありながら表舞台を去ったのか……その「過去」が明かされます。
続きが少しでも気になったら、下の【☆☆☆☆☆】から評価(星★)や、ブックマークをいただけると、初心者の僕にとって唯一の支えになります!
次の話も、明日の20:00に更新予定です。
それでは、また明日の戦場(更新)でお会いしましょう!




