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第26話:戦慄の余韻

 第1マッチ終了。

 画面が暗転し、リザルト画面に切り替わった瞬間、インターネットの海は物理的な衝撃を伴って爆発した。

 公式配信の同時視聴者数は25万人を突破。チャット欄はもはや判別不可能な速度でログが流れ去り、SNSでは『#TrinityRaid』『#死神の三連星』というワードが、瞬く間に国内トレンドの1位と2位を独占した。

 数日前まで彼女たちを「逃亡中のV」と嘲笑わらっていた外野は、今やその「正体」への恐怖と熱狂に塗り替えられていた。

『……嘘だろ。王者 REIGN と鬼神を初動で喰って、最後は空爆……!?』

『ハイエナじゃない。……これ、全部「計算」通りに動いてたのか?』

『11位なんて嘘だろ。……こいつら、戦場を最初から支配してたじゃないか!!』

 熱狂の渦中、Minty は自室のソファで、震える手でタブレットを見つめていた。

 画面の中、勝利の余韻に浸る暇もなく、すでに次のマッチへと意識を切り替えている三人の横顔。彼女の目には、かつて弟が見せた、あの「凍りついた情熱」と同じ色が宿っているのが見えた。

「……信じられないわね。……あの子たち、本当に『怪物』になっちゃったのね」

 彼女は短く、けれど万感の思いを込めて、葉月へ1通のメッセージを送った。

『……最高の正解だったわよ、馬鹿弟』

 一方、戦場を共にした他の23チームの各自室は、死のような静寂に包まれていた。

 特に、初動で屈辱的な死を遂げた王者 REIGN のリーダーは、自身のマウスを砕かんばかりに握りしめ、赤く充血した目でリザルトを睨みつけていた。

「……11位。……Trinity Raid。……次は、一秒も遊ばせない。……必ず、その喉元を引き千切ってやる」

 もはや彼女たちは、伏兵ですらなかった。

 全23チームが、彼女たちを「真っ先に排除すべき最大脅威」として、その名を脳裏に刻み込んだのだ。

 カチャリ、とマイクが入る音。

 インターバルの5分。葉月の声は、驚くほど冷淡だった。

「……浮かれるな。……第2マッチの航空ルートが出た。……今度は、23チームすべてが『殺意』を持ってお前たちを狙ってくると思え」

 三人は、それぞれの自室で、一瞬だけ見せた笑みを消し、再び「死神」の表情へと戻った。

「……。……。了解。……囲まれるなら、それを利用するだけよ」

 ほむらの不敵な言葉と共に、第2マッチの幕が、さらに深い絶望と期待を伴って上がろうとしていた。

 再び、輸送機のエンジン音が、静まり返った電子の戦場を震わせた。

 インターバルの5分間。公式配信のチャット欄は、11位の金星を「奇跡」だと断じる否定派と、「本物の再来」だと狂喜する肯定派で真っ二つに割れていた。

 だが、プロたちの視点はもっと残酷だった。

 各自室でモニターを睨む23チームの選手たちは、すでに Trinity Raid の「滑空距離」と「略奪ルーティン」を脳内に叩き込んでいた。もはや、中央のミリタリーベースを無防備に明け渡す者は一人もいない。

「……。……。見ろ、第2マッチの航路だ。……中央を真っ二つに割る、最短の直線。……お前たちの『孤島』へのアクセスは容易だが、同時に周囲のチームの『検問』もかつてないほど厳しくなる」

 葉月の声が、三人の部屋に同時に響く。

 モニターには、各チームが TR の「怪物ムーブ」を阻止するために、安地への境界線を網の目のように塞ぐ予測図が展開されていた。

『……。……。面白いわね。……私たちが「1位」になった瞬間に、戦場のルールが私たちを中心に回り始めた。……これこそ、最高の計算環境よ』

 ほむらの口角が、不敵に上がる。

 11位。その数字はもはや、彼女たちを縛る鎖ではない。

 全チームのヘイトを自分たちに集め、その「殺意の動線」さえも利用して戦場をコントロールする。

『……ねね、さっきのチャンピオンで、なんだかマウスが軽くなった気がします! ……みんなが私たちを狙ってるなら、全員まとめて、コーチのロジックでハメちゃいましょう!』

ねねの無邪気な、けれど確かな殺気を孕んだ声。

 レイは無言で、手元のデバイスの感度を、さらに一段階「鋭く」設定し直した。

「……準備はいいな。……第2マッチは、第1マッチの比ではないほど泥臭い戦いになる。……一秒でも足を止めたら、そこでお前たちの化けの皮は剥がれると思え」

 葉月の冷徹な宣告。

 再び、輸送機の重低音が、電子の空を切り裂いた。

 24チーム、72人の怪物たちの、第二幕。

 今度は「逃げる怪物」ではなく、「全チームを迷路に誘い込む死神」として、三人の影が輸送機のハッチへと手をかけた。

「……。……。……行こう。……今度は、世界の『常識』を書き換えに」

 レイの静かな号令と共に、再び三つの影が、無限の殺意が渦巻く空へと身を投げ出した。

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