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第2話:埃を被ったデバイス

第1話を読んでくださり、本当にありがとうございます!

遙 カナタ(はるか かなた)です。

本日は初投稿の勢いで、20時まで3話連続投稿を行っています。

執筆に関しては完全な初心者ですが、一文字ずつ魂を込めて絞り出しています。

第2話は、主人公・葉月がかつて「伝説」と呼ばれた理由、そして再起の兆しを描くエピソードです。

続きが気になったら、ブックマークや評価(星★)をいただけると、初心者の僕にとって唯一の支えになります!

それでは、第2話――「埃を被ったデバイス」をお楽しみください。

 会社を定時退社し、電車に揺られること三十分ちょい。最寄りの駅から徒歩五分圏内のマンションに、ようやく辿り着く。

 『桜庭』と記載されている表札の扉を開ける。電車内での実況を思い出していたら、いつも夕食を買いに寄るコンビニを忘れて、そのまま帰宅してしまった。

「日本リージョン最弱か……」

 ほこりを被ったゲーミングデスクを、愛惜(あいせき)を込めてなぞる。

 そこには、『Ground Zero』のユニフォームを着た四人の写真が立てかけてあった。左からMachina、Greed、OUKA、そしてコーチのMinty。

 誰もが笑っていた。あの頃の自分たちが、そこにはいた。

「今の俺の反応速度じゃ、もうあの領域には届かないだろうな」

 ――重みを増したマウスを手に取り、ポツリと独白が漏れる。指先に残るかつての熱量を振り払うように、俺は静かにデバイスを置いた。

「あれ、葉月。帰ってたのなら、リビングの電気つけなさいよ」

 ごめん、と一言謝りながら振り向くと、そこにはショーツ姿に半裸という、いつもの通り風呂上がりの姉貴が髪を乾かしながら立っていた。

「ちょ、姉貴。風呂上がったのなら服を着ろっていつも言ってるだろ」

「何アンタ、姉に興奮してるのかい。……それで、懐かしい写真を見てどうしたんだい。てっきり捨てたと思ってたけど」

 心配そうな、けれど真剣な眼差しで、姉貴――『Minty』はタバコを口に運んだ。

「電車内でGreedのコーチ転向を聞いた。Machinaも、EMEA(ヨーロッパ地域)でコーチをやってるんだってな」

「そうかい。……ただ、Machinaの方はどうもうまくいってないみたいだよ」

 Machinaは、冷静沈着でどんな時も慌てない、まさに『精密機械』のような選手だった。だが、天性の才能でプレイしていた彼は、他人に教える「努力の過程」を知らない。

 かつて長距離の偏差撃ちを訊いた時、彼は「できない理由が分からない」と呟いた。ティーチングができない以上、コーチとしての前途は多難だろう。

「葉月はやってみたいと思わないの? コーチ」

 半裸のままビールを煽る姉貴が、不意に問いかけてくる。

 その言葉に少しだけ惹かれ、心臓が一度だけ大きく鳴った。

「……別に、いいよ。今までシーンを支えてきたあいつらに申し訳ないしね」

「嘘だね。何十年アンタの顔見てると思ってるのさ。やりたいんだろ、コーチ。――とりあえずPC起動して、フリーマッチ付き合いなよ」

 満面の笑みで、姉貴が俺に慣れ親しんだデバイスを指差した。

 予選は寝起きプレイ。世界大会だろうと優勝して当たり前、反省会一つ行わなかったあの日々。いつの間にか楽しむことを忘れ、優勝するための『機械』になり果てていた俺は、心が壊れる前にゲームから逃げた。

 けれど――それでも、心の奥底の灯火は、まだ消えてはいなかったみたいだ。

「姉貴に色々見透かされるのは……『Ground Zero』をまとめ切ったMinty様の洞察力のせいかな」

 その夜。

 『OUKA』と『Minty』。懐かしい名前が刻まれた二つのアカウントは、二十チームが入り乱れる戦場でチャンピオンを獲りまくった。

 深夜の掲示板やSNSでは、一部の古参ファンたちがざわつき始めていた。

 ――あの『伝説』が、復活したのではないか、と。


第2話もお付き合いいただき、感謝です!

伝説の指揮官(OUKA)が再びデバイスを握る瞬間、書いていて自分でも熱くなってしまいました。

本日の三連投、ラストは20時に更新します。

いよいよ、物語を動かす三人のヒロインたちが集結します。

初心者の挑戦、ぜひブックマークや評価(星★)で背中を押していただけると嬉しいです!

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