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魔王降臨 奈落都市ネザリアから始まる人類征服戦記  作者: たゆたう
第一章 争いの無い世界を目指して

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第13話 式典前夜

聖剣と聖堂の内部視察を終えた、その翌日。

俺たちは、聖都セラディアの一角に用意された会議室に集まっていた。


高い天井、白い壁。窓から差し込む光は柔らかいはずなのに、どこか冷たい。

長い卓の中央には、羊皮紙の束が三つ並べられている。


一つは、セラディア聖王国側が用意した最終条約案。

一つは、魔王領ルクスベルク側の修正案。

最後の一つは、その二つを突き合わせてマルシエルがまとめ直した、「妥協ライン」の案だった。


マルシエルが赤インクの羽ペンで、条文の端を軽く叩く。


「領土線の再定義。捕虜の交換。信仰施設への不干渉……

“魔族の存続そのもの”を否定する条文は、ちゃんと全部抜けてます」


「聖堂の設置権は?」


「国境から一定距離以内は禁止、という形で押し切れました。

“既に建っているもの”については、段階的な縮小と監視を条件に」


そう言って、マルシエルはちらりと父上を見る。


「ね?ルシアン様が命削って執務してたあいだに、ちゃんとがんばったでしょう?」


「自分で言うな」


口ではそう返しながらも、胸のどこかで少しだけ力が抜けるのを感じた。


紙の上だけ見れば――

今回の和平案は、三百年の戦争のあとに手を伸ばせるギリギリの線に見える。


魔族も、人間も、どちらも完全な勝ちではなく、完全な負けでもない。

そんな形に、整っていた。


「条約本文については、これでよい」


父上がゆっくりと頷いた。


「式典での署名と宣言さえ済めば、あとは各地で実務を進めるだけだ。」


聖都大聖堂。

聖剣。

聖女と教皇。

そして、人類の勇者――。


そのすべてが、明日、一つの空間に集まる。



「式典は明日。今日の午後は、聖都の視察に充てる」


父上が視線を上げた。


「セラディアの街が、三百年の戦争のあとに、どんな顔をしているのか。

自分の目で見ておけ、ルシアン」


「……はい」


父上の言葉に短く頷いたときには、もう胸のどこかが固くなっていた。

覚悟というより、何かを確かめに行く前の、静かな緊張だ。



「――では、聖都のご滞在中、聖騎士を数名お付けしましょう」


大聖堂の一室。

簡素な応接間で、ガイウス枢機卿が柔らかな笑みを浮かべていた。


白い法衣の袖口には、細かな金糸の刺繍。

髪には白が混じり、年齢を重ねているはずなのに、その瞳だけは妙に若い光を湛えている。


「いえ、それは結構です」


俺は、あらかじめ決めていた答えをそのまま口にした。


「聖都を見て回るのに、武装した聖騎士を連れて歩くのは、少し――物々しすぎるでしょう」


「ですが、“魔王領の御子息”であられる以上、警護は――」


ガイウスの視線が、一瞬だけ俺の額と目を探るように動き、すぐに戻ってきた。


今の俺は、奈落都市にいるときとは少し違う姿をしている。

角は魔法で鈍くぼかし、黒髪も人間寄りの色味に変えてある。

瞳の赤も、外から見れば「少し色の薄い茶」にしか見えないはずだ。


「“他国からの使節のひとり”として扱っていただければ十分です」


そう言って、隣に立つ赤い魔導服へと視線を向ける。


「通訳兼案内役として、彼女がついていますから」


マルシエルが、いつもの調子でぺこりと頭を下げる。

胸元は今日はきっちり閉じているが、その目は油断なく周囲を測っていた。



「……そうですか」


ガイウスは一度だけ目を伏せ、軽く祈るように指を組んだ。


「では、聖騎士の随行は控えましょう。

ただし、聖堂区の外では、あまり目立つ場所には近づかれませんように」


「心得ています」


形式的なやり取りを終えると、俺とマルシエルは部屋を辞した。


廊下に出たところで、マルシエルがふぅ、と肩の力を抜く。


「……はぁ〜、さすが枢機卿クラス、“笑顔で探りを入れてくる”のが上手ですねぇ」


「気づいていたのか」


「ルシアン様の角、ちゃんとぼかせてるかどうか、確認してましたよ、あれは」


マルシエルは、俺の額のあたりを指でつつくふりをする。


「安心してください。今のルシアン様は、“ちょっと目つきの鋭い他国の貴族”です。

魔族だってバレるとしたら、喋り方か態度のせいですね〜」


「そこまで言うか」


思わず苦笑が漏れると、マルシエルはくすりと笑った。


「では、行きましょうか。せっかくの聖都観光ですし」


「観光じゃない」


「はいはい、“視察”ですね♪」


からかうような口調のまま、彼女は一歩前に出る。


「でも、ルシアン様とマルシエル、二人きりで街を歩くんですよ?言い方を変えれば――」


赤い瞳が、ちらりとこちらを見上げる。


「ちょっとした“デート”みたいなものじゃないですか?」


「”視、察、だ”!」


反射的にそう返すと、マルシエルの笑みが一瞬だけ固まった。


「はいはい♪ そうですねぇ~」


呆れながらも、俺たちの聖都視察が始まった。



聖堂区から少し離れた、商いと住宅の混じる地区。


白い石造りの建物が並び、そのあいだを人の流れが川のように行き来している。

屋台ではパンや果物が売られ、路地では子どもが走り回っていた。


マルシエルは、地図など見なくても慣れた足取りで進んでいく。

その横を歩きながら、俺は周囲の空気を意識して吸い込んだ。


――聖魔術の匂いが、薄く、そこら中に染み込んでいる。


「やっぱり、“聖堂都市”って感じですねぇ」


マルシエルが小声で呟く。


「大きい聖堂がいくつも建ってると、その周りのマナの流れが聖属性寄りに固定されるんです。

魔族にとっては、ちょっとだけ“呼吸しにくい空気”になる」


「アスモドがいたら、文句を言いそうだな」


「ですね〜。“喉がいがらっぽい”って」


軽口を交わした、その少し先だった。


人の流れが、不自然に膨らんでいる場所があった。

通りの一角。声が重なり、ざわめきが渦を巻いている。


「……何だ?」


足を止めると、マルシエルも隣で立ち止まる。


「たぶん、あれですね」


彼女が指さした先。

人垣の向こうに、木の台が見えた。


その上に、鎖でつながれた亜人たちが並んでいる。

獣人、長耳、鱗の混ざった者たち――そして、その首にはみな、鈍く光る鉄の輪。


「……あれは、何だ」


分かっていても、問わずにはいられなかった。


「奴隷市場ですよ」


マルシエルの声は、いつもの調子を保とうとしていた。

だが、その目は笑っていない。


「セラディアだけじゃなくて、人間諸国の多くでは“亜人奴隷”は合法です。

“救いの手を差し伸べてやっている”っていう建前付きで」


魔王領には、奴隷という概念はない。

逃げ込んできた者たちに対して、労働契約や保護の規定はあっても、「所有物」として扱うことはない。


もちろん、現実には弱者が搾り取られる場面も多い。

だが、それでも――首に鎖をつけて売り買いする光景は、そこには存在しない。


「……魔術か?」


亜人たちの首輪から、薄く揺れるマナの気配がした。


「あれは“奴隷刻印”ですねぇ」


マルシエルが、目を細める。


「おそらく、第三階梯くらいの制御術式。

首輪と体内に刻んだ印をつなげて、逃亡と反抗を抑えるタイプのやつです」


「印……」


首輪の下。皮膚の色がわずかに変わっている部分に、淡い術式の線が見えた気がした。


「痛みと麻痺と、場合によっては“罰”も一緒にねじ込める優れもの。

“主人の命令に逆らえないようにしてあげる”ってわけです」


マルシエルの口調は軽い。

だが、手に持った書板の端を握る指先には、白く力がこもっていた。


「魔王領では、こんなのは――」


「禁止です」


マルシエルが短く言い切る。


「見つけたら、刻印術式ごと焼却処分。

術式を組んだ側は、“もう二度と描けない手”にされます。――陛下がそう決めました」


「……だろうな」


胸の奥で、父上の横顔が浮かぶ。

逃げ込んできた亜人たちの報告を聞いた夜、静かに怒ったあの顔が。


今ここで、あの台をひっくり返すことはできる。

首輪を砕き、奴隷商人の顎を砕き、術式ごと踏み潰すことも。


だが、その瞬間に崩れるのは、条約だけではない。

聖都という器そのものが、戦場に変わる。


「……ルシアン様」


マルシエルが、そっとこちらを見上げる。


「止めたいですか? 今ここで」


彼女の声は静かだった。


喉が、ひどく乾いていることに気づいた。


「今は――」


言葉を選ぶ時間が、やけに重い。


「今は、なにもできない」


ようやく絞り出した言葉に、自分でも嫌悪が混じるのを感じた。


「ただし」


ゆっくりと息を吸う。


「奴隷刻印の術式。あれの構造を、あとで詳しく教えてくれ」


マルシエルが一瞬だけ目を見開き、すぐに頷いた。


「……分かりました。

大聖堂の術式と合わせて、今夜まとめておきます。」


「頼む」


視線を市場から逸らした、そのときだった。


台の端に座っていた獣人の少女が、ふとこちらを見上げた。


年の頃は十にも満たないだろうか。

柔らかな茶色の耳が頭の上で伏せられ、瞳は琥珀色。

頬には細い傷跡が走っている。


諦めとも、恐怖ともつかない、静かな目だった。


――目が合った。


一瞬だけ、時間が止まったような感覚があった。


少女は、何かを期待するように口を開きかけ、

すぐに、首輪の重さを思い出したように、視線を落とした。


声をかける理由はいくらでもあった。

だが、そのどれもが、今は喉を通らなかった。


「……行こう、マルシエル」


自分でも驚くほど、声は低かった。


「はい」


短い返事。

マルシエルは何も言わず、俺の半歩後ろに付き従う。


通りを離れても、あの琥珀色の瞳だけが、焼きついたように頭から離れなかった。

言葉にしがたい憤りを抱えながら、俺たちは街を後にした。



日が傾き始めたころ。

聖都の城壁の上にある見張り台で、俺とアスモドは並んで街を見下ろしていた。


白い屋根。

遠くにそびえる大聖堂の尖塔。

その足元で、さっきの奴隷市場のざわめきが、まだ小さく続いている。


「……これが、聖都セラディアか」


アスモドがぽつりと言った。

黒鉄の兜の下、紅い瞳が街並みをゆっくりとなぞる。


「来るのは初めてなんだろ」


「ああ。報告書と地図と、逃げ込んできた連中の話でしか知らなかった」


鎧の隙間から入り込む聖魔術のざらつきにも、彼は眉ひとつ動かさない。

魔族にとっては居心地の悪い空気のはずなのに、その背はいつもどおりまっすぐだった。


「思ってたのと違うか?」


「もっと“冷たくて暗い”場所だと思っていた」


アスモドは城壁の縁に片手を置き、僅かに身を乗り出す。


「貧民街だけが目立って、聖堂だけがやけに眩しい……そういう街だと聞いていた。

実際に立ってみると――」


「今は?」


「全部まとめて眩しい」


黒鉄の兜が、わずかに軋む。


「貴族も聖職者も、庶民も奴隷も。

誰もが“明るい聖都”の一部だと思い込まされている……そんな光だ」


皮肉とも、感慨ともつかない言い方だった。

魔族である彼が、聖都の城壁に立っていること自体が、三百年の戦争の歪さを物語っている。


「なぁ、アスモド」


「なんだ」


「お前、戦い以外のこと、ちゃんと楽しめてたか?」


自分でも、少し唐突だと思った。

けれど、聞かずにはいられなかった。


「俺がもの心ついたころには、もうお前は戦場にいたし。

俺も気づけば剣を握ってて……なんかさ、“それ以外”の顔を、あんまり知らない気がして」


「そうか?」


アスモドは短く鼻を鳴らす。


「城下に抜け出そうとした坊主の首根っこ掴んで、屋台の串肉を奢ってやったのは誰だ?」


「それは……まあ、アスモドだな」


「剣の練習から逃げようとしてた坊主を、訓練場に引きずって行ってやったのは?」


「それも、お前だ」


「戦場の帰りに、“生きて帰った”兵どもと酔いつぶれてたのを見つけて、

お前を混ぜるかどうか悩んだのは?」


「それは初耳なんだけど」


思わず苦笑が漏れる。

気づかないところで、拾われていた瞬間が、いくつもあったらしい。


「俺はずっと、戦いしか知らなかった。陛下のために剣をふるい、陛下のために敵を焼き払う」


アスモドは城壁の下で灯り始めた聖都の光を眺めながら、言葉を探す。


「それでいいと思っていた。人間側にも事情が有るのかもしれないが、

俺は俺の守りたいモノのために力を振るう。単純だろ?」

いつも以上に優しく、かなしく笑った。


「でもな、剣のことだけじゃなくて……兵の顔とか、街の空気とか、

”倒す敵”だけじゃなく、“守るもの”を、最初に教えてくれたのは、お前だった気がする」


「……」


魔王軍最強の男の言葉に、俺は返す言葉を見つけられないでいた。


「それに比べて俺が教えたのは、“死なないための癖”だけだ。

前を見ろ、足を止めるな、危ない匂いがしたら一度引け――その程度だ」


「それがなかったら、とっくに死んでるよ、俺」


軽く肩をすくめると、兜の奥で小さく笑う気配がした。


「お前が最初に木剣を握った日を覚えてるか?」


「額を弾かれた日のことなら」


「それだ」


アスモドの紅い瞳が、夕焼けを反射する。


「泣きそうな顔で“難しい”って言った。

“じゃあ、難しいからやるんだ”って返したら、本気で睨んできた」


「……半分くらいは今も思ってるよ。

“何で難しいほうばっかり選ばなきゃいけないんだ”って」


「簡単なほうを選んでたら、とっくに魔王領は潰れてる」


アスモドは淡々と言う。


「陛下も、お前も、“難しいほう”の上に立ってる。

俺たちの世代は、その足場を血で固める役だ」


「勝手に決めるなよ」


「勝手に決めるさ。俺は将軍だからな!今はお前よりも偉い。」


アスモドがわざとらしく胸を張った。


「俺たちの世代が、“戦うことしか知らないまま終わる”のは別にかまわない」


アスモドは、聖都を見下ろしたまま続けた。


「だが、お前の世代には、“終わらせることも知ってる魔王”でいてもらわないと困る」


「……重いな」


「重いのは慣れてるだろ」


その言い草に、思わず苦笑がこぼれた。


「ホントはな、”国を分ける線”なんてなけりゃあ簡単なんだけどな」


アスモドの紅い瞳が、再びこちらを射抜く。


「いつか人間とか、魔族とか、亜人とか、関係ないそんな世界が来るといいよな」


風の音だけが、しばらくあいだを埋めた。

アスモドは城壁に片肘をつき、視線を遠くの大聖堂へ向けたまま続ける。


「……まぁ、正直言うとだ」


低く笑う。その笑いには、自分を一段引いて見るような、乾いた色が混じっていた。


「俺は、そっから先に立ってる自分ってのは、あんまり想像できない」


「どういう意味だ」


「俺は戦う側だってことだよ」


黒鉄の籠手が、コツ、と石の縁を叩く。


「道をこじ開けるまでは付き合える。

城門ぶっ壊して、矢をへし折って、盾になって、それでも立ってるやつを斬るとこまではな」


俺は聞きたくない気持ちに反して、思わず聞いてしまった。


「その先は?」


「その先は――」


少しだけ間を置いて、アスモドは肩をすくめた。


「そこから先、どうやって一緒に飯食って笑うかとか、

どうやって“敵だったやつ”と隣に立つかとか、そういうことは、ルシアン様の世代の仕事だ」



紅い瞳が、真正面から俺を捕らえる。


「俺たちみたいな、“戦うことしか習ってこなかった世代”は、

せいぜいその一歩手前まで道をつけるのが限界だ」


短く息を吐き出す。


「だから、勝手なこと言うけどよ。

もし本当に、種族とか関係ない世界に手が届きそうになったら――」


アスモドは、夕焼けに染まる聖都を睨むように見下ろした。


「そのとき、ルシアン様は絶対に足を止めるな。

“ここまで来れば上出来だろ”って顔して立ち止まったら、その先は二度と見れないぞ」


「……重荷すぎるだろ」


思わずそうこぼすと、アスモドは鼻で笑った。


「知ってる。だから“勝手な期待”だって言ってんだろ」


それでも、その声にはどこか楽しそうな響きがあった。


戦うことしか知らなかった男が、

その先の世界を、ほんの少しだけ信じてみている――そんな気配が、そこにはあった。



日が完全に落ちるころ。

聖都の影は、白い街をゆっくりと塗りつぶしていた。


大聖堂の裏手。

表からは見えない細い路地のさらに奥で、一つの影が壁から剥がれ落ちる。


影喰いのアバド――の、分身だ。


黒衣のシルエットは、その場に人の気配がないことを確かめると、

祭壇の下へと続く石段のほうへ視線を向けた。


(……ここから先は、“聖女と教皇のみ”か)


昼間、大聖堂の内部視察で示された範囲より、さらに奥。

本来なら、魔王領の者どころか、聖騎士ですら入れないはずの領域だ。


アバドの分身は、石壁に溶け込むようにして、階段の縁を滑り降りていく。


地下へ。

冷たい空気と、湿った石の匂いが濃くなる。


やがて、目の前に見えてきたのは――閉ざされた鉄扉。

表面一面に、聖属性の術式が刻まれている。


触れれば、影ごと焼かれる類の封印だ。


(……ここまでか)


分身は扉には触れない。

ただ、その隙間から漏れ出てくるマナの匂いだけを、静かに嗅ぎ分ける。


聖属性の清浄なマナ。

その奥に、薄く混ざる、別のもの。


濁った、重い気配。

魔族の瘴気とも違う、人間の魔術とも違う、“何かを削る”ような感触。


(聖剣の祭壇と、同じ匂い……だが)


形が違う。


聖剣祭壇が「契約の輪」なら、

この地下にあるものは、「なにかの処理の穴」に近い。


何を、どう処理しているのか――そこまでは分からない。

分身の感覚では、輪郭しか掴めない。


(報告に値する情報か、と言われると……微妙ですね)


分身は自嘲気味に肩をすくめた。

本体に戻れば、もっと多くを読み解けるかもしれない。


だが、今ここでできることは、匂いを覚えておくことだけだ。


聖都の夜が、静かに深くなっていく。


その闇の中で、和平のための準備と――

何か別のことのための準備が、同時に進んでいることを、

このときの誰も、まだはっきりとは言葉にできていなかった。

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