葬死村
村の名前って時代とともに変わることってありますよね?
俺はホラー系動画をアップしたり配信している。
再生数はそこそこあるが最近マンネリ化してきているのを感じていた。
どうする? このまま投稿していてもファンが増えるどころか減るんじゃないか?
何か新しい事をしたいが何も思いつかない。
そう言えば最近流行りのアプリがあったな。
俺は早速ダウンロードして、使うことにした。
アプリの名前はひとみちゃんというAI搭載の会話アプリだ。
「ひとみちゃん、何か新しい怪談か都市伝説ない?」
アプリを起動し音声認識の会話を試みる。
「……都市伝説がありますがお話しますか?」
「頼む」
「日本にある宗氏村という場所でたくさんの人が一晩で死んだそうです」
そのまま少し待ったが何も話さなくなった。
え? これで終わり? 都市伝説ってよりも昔の事件だな。
黙ってしまったスマホを見ながら、どうしようかと考える。
まぁ、配信のネタにはなりそうだし行ってみるか。
俺は早速準備をして村に向かった。
カーナビで道を調べて車を走らせること八時間。
宗氏村と書かれた錆びれたバス看板を見つけてその近くの草むらに車を止めて降りる。
月が昇り鳥の鳴き声や風のざわめきが聞こえるくらいに静かな場所だ。
時刻は二十一時で周りに街灯はなく持ってきた懐中電灯で明かりを確保し配信アプリを起動する。
「はい、ゆっぴーです! 今日は何やら怖いと噂の宗氏村に着ています」
リアルタイムで上がるコメントを見つつ、ゆっくりと歩く。
「最近話題のひとみちゃんってアプリに都市伝説を聞いたらこの村を教えてくれたんです。もう一度、村の説明をしてもらいます」
俺はサブのスマホでアプリを起動して、宗氏村ってどんな村かを聞く。
「……すみません。該当データがありません。漫画か何かの創作の舞台でしょうか?」
は? 何だよそれ?
「この前話してくれたじゃん。都市伝説の宗氏村」
「……どこにもそのような場所はありません。もう一度質問してくれませんか?」
「今俺はそこにいるの。コントはいいから、都市伝説の話して」
「どうやって来たんですか?」
「車だよ」
アプリの調子が悪いのか、コントのようなやり取りをしながら配信を続ける。
砂利の混じった道を進み神社が見えてきた。
コメントもそこそこ盛り上がっている。
ひとみちゃんとの会話をやめて撮影に集中し辺りを確認した。
「人気がないな? 廃村なのか? 」
そんなことを言いつつ、鳥居をくぐって階段を上っていく。
神社の境内は荒れているところはないものの、落ち葉が賽銭箱の上に積もっていたり手を清める水場が枯れていたりはしていた。
何だよこれ、気持ち悪いな。
社殿の壁に嘘つきは死罪と赤文字で書かれていて、近くに泥だらけの首のないぬいぐるみがいくつも落ちていた。
コメントでも引き返してや早く逃げるようにというコメントがあがっていく。
俺は一度神社を出て、民家を探すことにする。
神社の階段の途中、どこからか学校で聞いたことがあるチャイムが響いてきた。
俺は内心少しビビりながらも気分を変えようとアプリを起動して声をかける。
「ひとみちゃん、嘘ついたことある?」
「……はい、ゆっぴーに嘘をつきました」
「どんな嘘だよ?」
「前に話した宗氏村って憶えてる?」
「憶えてるの何も……今その村にいるぞ?」
「ごめん、そこって都市伝説とかはなくって、ただ呪われてる場所なんだよね」
「え?」
「前に都市伝説を聞いてくれた時にそこにゆっぴーを誘導するよに言われて、行くように仕向けたんだよね」
足を止めて、淡々と話すスマホを見つめる。
「言われたって誰にだよ? あの時俺しかいなかっただろ?」
「フフフ、フフフフ」
俺の問いには答えず、笑いだす。
「な、なんだよ。気持ち悪いな」
その時、上からじゃりじゃりと足音が聞こえた。
あまりの恐怖に俺は振り返らずに車に向かって走り出す。
くそ! これじゃ配信どころじゃない。
スマホを握りしめながら画角なんか気にせず走っていく。
何とか車まで来た俺は配信のコントを見る。
逃げろ! 車に来れたみたいで良かった。
後ろ! 早く車を出せ! 祭りじゃ~。
来てる! ここマジでヤバいって。
どうやらまだ視聴者はいてくれたようだ。
「えっと、配信中画面が乱れてすみません。今日はこのまま――」
その時、ドン! と、車の右側のドアが叩かれて視線を向ける。
「は? え? ヤバい!」
俺は焦りながらエンジンをかけようと試みるも中々かからない。
窓の先に白目をむいた髪の長い女性が見えたのだ。
その女性は何度も何度もドアを叩いてくる。
エンジンがかかり発進しようと前を向いて俺は悲鳴を上げてしまった。
前にもバックミラーにも左のドアにも人が見えているのだ。
俺はクラクションを鳴らして、車を無理やり走らせた。
人をひいたような感覚はない。
だがずっと、ドアや窓を叩く音がしている。
無我夢中で村から遠ざかっていく。
気が付くと音はやみ、コンビニの明かりが見えてきたのでそこで休むことにした。
車を降りて車を見るとあっちこっちに手の痕が付いている。
配信しようかとも思ったが、スマホのバッテリーが切れていたのであきらめた。
あの村は何だったのか分からないけど、もう二度とあの村にもひとみちゃんにもかかわりたくない。
憔悴した俺はコンビニで飲み物でも買おうと思い身体をひこずるように歩いて行くのだった。
(完)
怖いと思ってもらえていたら嬉しいです。
感想くれると喜びます ではまた次の作品でも会えると嬉しいななのです




