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シンデレラ・ベート ~学園劣等生が覚醒する時~  作者: サイトウ純蒼
第四章「さよなら、ベート」

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81.奇跡の力

『祝福の血清』


 それはごく稀に現れる魔獣族の奇跡。その血を口にした者で、もし仮に適性があれば瀕死の怪我から回復し、さらに獣化や真正獣化と言った能力を得ることがある。故に魔獣王などの強者以外で発現した者は極力その奇跡を隠す。囚われない為に。



(ベート、獣化……、適性があったのね……)


 倒れたミリザがおぼろげに獣化したベートを見つめる。

 茶髪だった髪はミリザと同じ銀色。頭にはこれまたミリザと似たようなネコ耳。お尻からは猫のような長い銀色の尻尾が生えている。



「ベート、様……」


 同じく地に倒れたモモコが変貌したベートを見つめる。可愛らしい耳に、尻尾。それでいて何者にも追従させないような強靭なエネルギーに溢れている。



「お、おい、ベート。どうしたんだ、それ……」


 ユウキも驚き口にする。一見したら誰だか分からない。だが間違いなくベート。最強のオリジン、シンデレラ・ベートである。




「き、貴様……、何だ、その姿は……」


 レイ・エレガントが獣化したベートを見て唖然とする。その姿はまるで魔獣族。いや、魔獣族と人族によるフュージョン。エレガントから受けた怪我も、魔獣族の持つ超回復により治癒済み。ベートがギュッと自分の拳を握りしめ、そして言う。



「獣化、獣化なんだ、これ……」


 そして『祝福の血清』によって獣化した者の最大の特長。それは『莫大な戦闘力』を得ることである。




「うおおおおおおおお……」


 ベートが全身に力を入れる。あれだけ削られていた体力が戻り、エネルギーに満ち溢れている。感じたことのない力。マナを媒体にどんどん体の内側から溢れ出てくる。


(食えよ、食って食って食いまくれ……)


 感じる。迸るマナを自身の中の魔獣が喰らい、みるみる強大になっていく。




「ふぅーーーっ」


 ベートが大きく息を吐く。そして顔を上げじっとエレガントを睨みつける。



(え……、な、なぜ体が震える……)


 エレガントは知らぬ内にベートの覇気に飲み込まれ、体がガタガタ震えていることに気付いた。


「そ、そんな馬鹿なことはない!!!!」


 首を振ってそれを否定するエレガント。魔獣族最強のエンペラーライオン。魔獣王の父から奪った禁断の力。負けない負けない負けない!!!



「殺してやる!!!!!!」


 エンペラーライオン、レイ・エレガントが全力でベートに突撃する。



「お前だけは……」


 大切な家族、そして仲間までも奪おうとした許すまじ存在。ベートの姿が皆の目から消える。



(え?)


 刹那、エレガントの真正面に現れたベート。何も対処できないエレガントを前に、鬼の形相で拳を振り上げる。



「お前だけは、絶対に許さねえぇええ!!!!」


 ドオオオオオオオオオオオン!!!!


 空を割るような衝撃。耳が裂けるような爆音。ベートに殴られたレイ・エレガントは、激しく回転しながら城壁へ爆音を立てて吹き飛ばされる。



「うおおおおおおおおおお!!!!」


 ほぼそれと同時にエレガントの傍に現れたベート。気が狂ったかのように次々と拳を打ち込んでいく。



(がっ、ぁが……、し、死ぬ……)


 一方的に殴られるエレガントがあまりの衝撃に、一瞬死を覚悟する。



(え?)


 そして感じる強大で無垢なマナ。殴られながらもすぐ前でそのマナが今にも破裂しそうなくらい大きくなっていく。


(や、やめ……)



 ドオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!



「グガアアアアアアァアア!!!!!」


 爆音。更なる衝撃。まったく反撃もできないエレガントは、気付くと空高く吹き飛ばされていた。



(貫けっ!! 極氷の槍(アイススピア)!!!!)


 ベートが空から落ちてくるエレガントに向け、巨大な氷の槍を放つ。



「こ、こんなもの!!!!」


 バリン!!!


 最強魔獣族の意地。落下しながらエレガントが前足の爪で、氷の槍を破壊。まだ戦える。まだ負けていない! エレガントが下でこちらを見上げるベートに向けて、その鋭い爪を最大まで伸ばし反撃に転じる。



「ウォオオオオオオオ!!!!」


 エンペラーライオンの雄叫び。最大の力をもって人族最強を潰しにかかる。



 ドン!!!!


 衝撃。エレガントが着地すると同時に響く轟音。地面が揺れ、大きな砂埃が舞い上がる。



「な、なんだと……」


 いない。確実に仕留めたと思ったエレガントが、自身の大きな爪が地面に突き刺さっているのを見て焦り始める。


「ど、どこだ!?」


 左右を見回すエレガント。そんな彼の頭上から声が響く。



「ここだ。ノロマが!!!」


 上。いつの間にか自分の頭上に跳躍したベートが右手を下に向け、内心叫ぶ。



(爆ぜよっ!!!!!)



 ドオオオオオオオオオオオン!!!!!


「ギャアアアアアアアアアアア!!!」



 エレガントの右足で爆発。あらぬ方へと足が曲がる。



「うぐっ、ぐぐっ……」


 足を負傷し、動けなくなったエレガント。地表に降りてきたベートを攻撃しようと、その鋭い前足を上げ目一杯振り下ろす。



 ガン!!!!


「くそっ!!!!」


 その攻撃をベートはマナも使わずに片腕で押さえ込む。そして叫ぶ。



「これがモモコの分!!!!」


 ドフッ!!!


「ギャアアア!!!」


 強引に右手で顔面を殴るベート。吹き飛ぼうとするエレガントの腕を掴み、そして再度叫ぶ。


「これがミリザの分だ!!!!!」



 ガン!!!!!


「ギャアアアアアアアアアアア!!!」


 下からのアッパー。顎の下から天に向かって放たれたベート渾身の一撃。



 ……ドン!!!


 天高く舞ったエレガントが音を立てて地表へ落ちる。



「あがっ、がっ、ぁああ……」


 獣化が解け、人族の姿に戻ったエレガント。息はまだあるものの、もう動くことすらできない。圧勝。魔獣王の敗北。あれだけ強かった魔獣王だったが、獣化したオリジンの前に手も足も出ず叩きのめされた。

 地に伏せ、動けなくなったエレガントを見てようやく皆の顔に笑顔が戻った。




「ミリザ!!!!」


 ベートが真っ先にミリザの元へと駆け付ける。倒れて動けないミリザ。ベートが抱き上げて言う。


「大丈夫か? ミリザ、ミリザ……」


 口から血を流し、目も虚ろなミリザ。だがベートの顔を見ると笑顔になって答える。


「だ、大丈夫よ……、ありがと、ベート……」


「良かった……」


 ベートがミリザを抱きしめて小さく言う。涙。ベートは気付かぬうちにぼろぼろと涙を流していた。守れた。今度こそ、大切なものを守れた。



「ベート様ぁ……」


 そこへ同じくぼろぼろになったモモコがやって来る。


「回復しますね……」


「大丈夫なのか、モモコ?」


 そんなベートの言葉にモモコが最高の笑みで答える。


「頑張ります! モモコの役目ですから」


 自身も大怪我を負っている彼女。それにもかかわらず皆の所へ行って治療を始める。



「ベート!!!」


 応急処置を終えたユウキが肩足を引きずりながらやって来て、ベートを抱きしめる。


「やった、やったやった……、ついに倒したんだ……」


 涙ぐむユウキ。これで街は、帝国は救われる。キャロットもベートに抱き着き涙声で言う。


「ありがとう、ベー太。ありがとう……」


 魔獣王討伐。それはキャロットらエルフ族にとっても消して他人事ではない。ベートも涙声で答える。


「ああ、良かった。みんな無事で、本当に良かった……」





(ゆ、許さない。この私が、最強のこの私が、このまま敗れるなんて……)


 離れた場所。全身の激痛に耐えながら虫の息のレイ・エレガントが勝利に沸くベート達を睨みつける。



「ぁが、ぁが……」


 じっとしていても止まらない出血。意識もなくなりそう。最後の気力を振り絞ってエレガントが思う。



(残ったマナ、これ……で、最後にできるのは……)


 静かなマナ。だが一瞬で爆発的に大きくなり、そして歓喜に沸くベート達へと、それが放たれる。



「え?」


 皆に囲まれていたベート。だから一瞬、ほんの一瞬だけそれに気付くのが遅れた。



「ミリザーーーーーーっ!!!!」


 虫の息であったエレガント。その最期の命を燃やして放たれた衝撃波。それは一番手前に居たミリザを捉えた。



 ドオオオオオオオン……


 静かで、それでいて強い閃光のような衝撃波。

 砂埃が舞った後、そこにはミリザを抱きしめ、その攻撃を背に受けたベートの姿が現れた。



「べ、ベート……」


 外傷はない。だがミリザの直感が、それはもう取り返しのつかない事態が起きたと告げている。エレガントが倒れたまま、笑みを浮かべて言う。



「そ……、それは、当たった者を、どこかへ消し去る私の……、攻撃……」


 エレガントが小さな笑い声を立てながら最期に言う。



「許さ、ない……、オリジン……、ふふっ、消え、去れ……、くくくっ、かかかっ……」


 そう言い残すとエレガントは静かに事切れた。




「ベート、ベート!!!!!」


 ミリザはベートに抱かれながら大きな声でその名を叫ぶ。エレガントの言葉。それが本当ならば、彼は間もなく居なくなることを意味する。ベートが苦笑いして言う。


「最後にミスっちゃったな。でも良かった……」


「何が良いのよ!!!」


 涙を流しベートに言うミリザ。そんな彼女の頭を撫でながらベートが答える。



「だってよ、好きな女が目の前で消されるんだぜ。それを防げたんだ。嬉しいに決まってるだろ……」


 そう言いながら徐々に体が薄くなるベート。ミリザが叫ぶ。


「いや、いやいやいや!!! そんなのイヤ!!! ベート、居なくならないで!!!!」


 薄くなり、今にも消えそうなベートが笑って言う。



「大好きだ、ミリザ。()()会おうな」



「……え?」


 消えた。今まで自分を抱きしめて好きだと言ってくれた相手が、消えた。



「ベート、ベートぉーーーーーーーっ!!!!」


 ミリザの泣き叫ぶ声が辺り一面に響いた。

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