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シンデレラ・ベート ~学園劣等生が覚醒する時~  作者: サイトウ純蒼
第四章「さよなら、ベート」

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80/82

80.最強生物

「ヒール!!!」


 後方からモモコの水マナ回復の声が聞こえる。じわじわと癒えていく怪我。ただ効果は薄い。連戦や負傷、流水装甲アクアフィードの使用によりモモコも限界に近い。

 ベートは出血の止まった腕を軽く回し、背を向けたまま手を上げモモコに感謝する。



(マジで強い。だけど、全力でぶっ飛ばす!!!)


 魔獣族の頂点であるエンペラーライオン。黄金色の体毛、四本の尻尾。真っ赤なたてがみは王者の証。対するベート。流水装甲アクアフィードを纏い、一気にエレガントとの間を詰める。



「はああああああ!!!」


 ドオオオン!!!


 渾身の右拳。揺れる空間。衝撃が周りの木々を揺らす。エレガントは全身の黄金色の体毛を逆立て、右前足でそれを受け止める。


「うおおおおおおおおおお!!!!」


 ベートの連撃。次々と打ち込まれる拳を、エレガントが地面に爪を立てて受け止める。マナを集中。次の攻撃に移ろうとした彼の目に、強力な左前足が真横から襲ってくるのが映った。



「やべっ!! 障壁!!!」


 マナの防御。咄嗟に張ろうとした防御壁よりも先に、その鋭い爪がベートを襲う。



 ザン!!!!


「がっ!!」


 ベートが吹き飛ばされながら左腕を損傷。さらにエレガントの追撃が彼を襲う。



「焼け死ね、オリジン!!!!」


 エレガントの周りに集まる漆黒のマナ。空中で複数のマナが渦巻きを作り、そこから同時に闇の熱線が放たれる。



 シュン、シュンシュンシュン、ドオオオン!!!


「ぎゃあああ!!!!」


 光速の熱線。そのひとつがベートの右腕を貫く。



「ががっ、がぁああ……」


 地面に倒れ、腕を押さえるベート。




「ベート、ベート……」


 後方で見ているミリザが体を震わす。桁が違う。これまでの相手とはすべてにおいてそのレベルが違った。


「ヒ、ヒール……」


 横で真っ青な顔で回復を行うモモコ。流れ出る脂汗。彼女も限界を超えている。ミリザが言う。


「モモコ……」


「だ、大丈夫です。モモコは、負けません……」


 そう健気に笑う彼女。だがもうあと、どの位回復を行えるのか本人も分からない。




「うぐっ、痛てぇ……」


 よろよろとベートが立ち上がる。右腕から流れ出る血を押さえながら、黄金色に輝くエレガントを見つめる。強い。想像以上に強い。自分への復讐に命を懸けたエレガントの執念をひしひしと感じる。


「まだですよ。あなたにはゆっくりと、絶望に囲まれながら死んでもらいますからね」


「!!」


 気が付かなかった。

 立ち上がったベートの周囲に黒き漆黒のマナの塊が幾つも散りばめられている。エレガントが笑いながら言う。



「さあ、フィナーレの開幕です。絶望の主人公を演じる、シンデレラ・ベートさん!!!」


「や、やめ……」



 ドオオオオオオオオオオオン!!!!



「ぐわああああああああ!!!!」


 ベートのお株を奪う爆破攻撃。周囲に散りばめられた黒きマナが、エレガントの合図と共に一斉に爆発を開始。中心にいたベートは成す術なくその爆撃を全身に受ける。




「ベート!! ベートぉおおお!!!!」


 無意識に走り出そうとしたミリザの腕をユウキが掴む。


「放して!! 放してよ!!!」


 ユウキが掴む腕に力を込め言う。


「行ってどうする!! 私達が行ったところで彼の邪魔になるだけ!! 信じろ、ベートを。信じろ、仲間を!!」


 ミリザの力が抜けていく。俯き、そして答える。


「分かってる。分かってるよ、そんなこと……」


 顔を上げ傷つき倒れたベートを見つめる。



(分かってるけど、体が動いちゃうんだもん……)


 愛するベート。その無残な姿を見ることはこれ以上ミリザにとって耐えられないことであった。





 仰向けに倒れ、もはや呼吸すら浅くなっているベート。心臓の音が直に耳に伝わるほど体の限界は近い。


(力が、入らない……)


 それほどまでにエレガントの攻撃は圧倒的だった。ヴォルトとの連戦だったとは言え、十分やれるつもりでいた。エレガントがゆっくりベートに近付き、笑いながら言う。


「くくくっ、あの最強のオリジンがなんて無様な姿。ああ、愉快」


 強靭な圧。近付くだけで心臓が潰されそうなオーラ。生物最強。そんな言葉がよく似合う王者である。エレガントが前足から爪を出し、ゆっくり振り上げて言う。



「簡単には殺しませんよ。言ったでしょ? あなたには最高の絶望を味わいながらゆっくり死んで貰うって」



 ズン!!!!


「ぎゃあああああああああ!!!!」


 エレガント爪が、仰向けになったベートの右太ももに突き刺さる。


「がぁ、がっ、うぐぐぐっ……」


 足を押さえベートが身悶えする。熱線に貫かれた右腕の痛みを忘れるほどの激痛。エレガントが大声で笑い、そして言う。



「あははははっ!! 愉快愉快。なんて素晴らしき日なんだろう。わたしは興奮と快楽で、身が震えるほどだよ」


 そう言いながら今度は左太ももに、同じく爪を突き刺す。



「ぎゃあああぁああ……」


 もうその叫び声すら弱々しくなっていく。一方的な虐殺。もうそんな言葉で表せるほど、勝負の決着はつきかけていた。エレガントが不気味な笑みを浮かべながら言う。




「あなたへのお返しは、何もその体の痛みだけじゃないんですよ。この意味、分かりますか?」


「な、何を言って……」


 意識が飛びかけている中、ベートが答える。エレガントが体の周りにマナを集中。笑いながら言う。



「こういうことですよ!!!!」


「!!」


 暗黒熱線。だが標的は、その放たれた先に居たのはミリザ達仲間。ベートが叫ぶ。


「やめろぉおおお!!!!!」



 ドオオオオオオオン!!!!


「きゃああああああ!!!!」


 爆発。離れた場所にいたミリザ達に大きな爆発が起きる。倒れたままベートが涙を流し、言う。



「みんな、みんな……」


 黒い煙が天へと舞い上がる。集まって来ていた城内の魔獣族がゲラゲラと笑う中、倒れた仲間の姿が現れる。もうすでに誰ひとり戦える者はいない。オリジンパーティの全滅。城内の陰から戦いを見ていた人族達にも絶望が広がる。エレガントが大声で笑いながら言う。



「あーははははっ!! なんて素晴らしい光景だ。これが力、これが正義。弱者は血を吐き、強者に蹂躙されるんですよ。さて……」


 エレガントがゆっくりとミリザの方へと歩き始める。


「や、やめろぉ……」


 ベートが這うようにそれを追いかけようとする。だが動かない。体が言うことを聞かない。エレガントが言う。



「もうあんなシルバーペガサスなんて要りませんよ。生意気だし、言うこと聞かないしね。殺して差し上げますよ。またどこかで生まれる新しいのを探せばいい。でね、オリジンさん」


 エレガントが振り返ってベートに言う。


「あなたがあの世で寂しくないように、ここにいるお仲間、全員これから殺してあげますよ。ああ、何て私は慈悲深い……」


 笑いを必死に堪えるエレガント。勝者の余裕。王者エンペラーライオンがゆっくりとミリザ達の元へと移動する。



「や、やめろ……」


 倒れたまま動けないベート。同じくエレガントの爆撃で倒れたミリザ達に言う。


「逃げろ、お願いだ。逃げてくれ……」


 だがそんな願いも通じない。連戦に次ぐ連戦。とどめは圧倒的破壊力を持つエレガントの爆撃攻撃。耐久力がベートより遥かに劣る彼らにとっては、その一撃が致命傷にすらなりうる。



「行け!! エレガント様!!!」

「全部殺せーーーーっ!!!」


 集まってきた魔獣族。新たな魔獣王の誕生に喜び、その強さを目の当たりにして歓喜の声を上げる。




(俺は、何をしている……)


 目に映る映像がゆっくりと遅くなるベート。意識が飛びそうな中、自身の声が浮かび上がってくる。



(大切だったジジイを殺され、そして今、大事な仲間を、そして愛する者をまた失おうとしている……)


 エレガントの歩みが止まる。その眼下には負傷して倒れ、動けなくなったミリザ。



(同じ過ちをまた繰り返すのか? 今の俺の姿をジジイが見たら……、!!)


 そんなベートの目に、血を流し倒れているシンデレラ・ヴォルトの姿が映る。



「ジジイ……、じい、ちゃん……」


 見せられない。こんな惨めな姿を、無様な姿を、あの人には、一番自分の成長を喜んでくれたあなたには見せられない!!



 ――僕、強くなってみんなを守るよ


 約束。ヴォルトとの約束。ベートの血が()()を始める。




「ん?」


 最初に気付いたのはエレガント。後方から発せられる不気味なマナを感じ、振り返る。


「あれ? まだそんな元気があったのかい?」


 エレガントは血を流しながら立ち上がったベートに気付き、驚き声をかける。


「そこで見ていなさい。これからあなたの仲間を……」




「……触れるな」



「はい~?」


 俯き小さくそう言うベート。エレガントが再び何かを言おうとした瞬間、ベートの体が強く激しく光を放ち始めた。



「え?」


 ミリザが倒れながらその光景に驚く。それはまるで、そう、まるで自分達獣族の特徴である、



 ――獣化



「うおおおおおおおおおお!!!!」


 ベートのが天を仰ぎ大声で叫ぶ。四方に放たれる強靭なマナ。純粋無垢であり、他者を圧倒するようなマナ。エレガントが口を開けたまま唖然とする。



「はあ、はあ……」


 光が収まり再び皆の現れたベート。髪は銀色に染まり、頭には可愛らしいネコ耳。お尻から生えた銀色の尻尾が左右に揺れている。ミリザが言う。



「ベート、あなた。まさか獣族に……」


 風貌を一変させ目を開けたベート。その鋭い視線は、真っ赤なたてがみを持つ王者へと向けられた。

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