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シンデレラ・ベート ~学園劣等生が覚醒する時~  作者: サイトウ純蒼
第四章「さよなら、ベート」

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79.真正獣化

「酷い。そんな、酷すぎる……」


 エレガントの話を聞いたミリザは目に涙を溜めた。

 ベートとヴォルトとの詳しい話は知らない。だが今の話を聞いただけでもベートが受けた衝撃は計り知れないことは容易に想像がつく。目の前で自分を守ろうとして息絶えた育ての親。彼の敗北の理由も自分だったかもしれない。


(ベート……)


 ミリザがエレガントと対峙するベートの背中を見つめる。きっと辛いだろう。すべてが嫌になるぐらい辛いだろう。でも彼は前を向いている。倒すべき相手は目の前。それがオリジンの定め。シンデレラ・ベートの定め。




「森羅万象を源にせし水のマナよ。力となりてかの者を助力せよ。流水装甲アクアフィード!!」


 モモコの水マナの強化バフ。薄く、ベートの体に張り付くような半透明の装甲が彼を包む。


「ふうーーーっ」


 ベートが息を吐き、エレガントに向かって構える。



「いいでしょう。私も手は抜きませんよ。絶対、あなたには」


 対するエレガント。被っていたシルクハットをポイと投げ捨てると、いきなり体を光らせて唸り始める。



「ウグウウゥ……」


(獣化……)


 初っ端からの獣化。ベートの強さを知っているからこそのエレガントの全力。やがて強い光に包まれたエレガントの体が大きくなる。金色の体毛に黒の斑模様。二本の尻尾に、上下に生えた大きな四本の牙。手足にも金色の巨大な爪が光るゴールドパンサーへと変貌する。



(何か、感じが違う……?)


 ベートの直感がそう告げる。以前戦った時と何か雰囲気が違う。見た目は大きな変化はないのだが、何かこうオーラから違う。構えたまま動かないベート。エレガントが見下ろしながら言う。



「そうそう、わたしね、魔獣王になったんですよ。めでたいですよね」


「……」


 無言のベートにエレガントが言う。


「ああ、あなたも新生オリジンになったんですよね。ではお互いの就任を祝って……」


 エレガントが大きな爪を振り上げ、一気にベートへと迫る。



「真っ赤なあなたの鮮血で祝いましょう!!!!」


 ガン!!!!


 ベートが息を止め障壁でそれを防ぐ。



 バリン!!!


 エレガントが力づくでそれを破壊。横に移動するベートに合わせ跳躍。すかさず前足の爪を振りぬく。



 シュン!!!


 かわすベート。同時にエレガントに放ったマナに向かって叫ぶ。



(貫け、極氷の槍(アイススピア)!!)


 エレガントに飛ばされた多段のマナが、細く氷の冷気を纏って迸る。



「ウゴオオオオオオ!!!!」


 バリンバリン!!!


 エレガントも負けずにその冷たき槍を前足で破壊。次の攻撃に入ろうとするベートに向けて得意の熱線をカウンターで放つ。



 シュン、シュシュン!!!


「くっ!!」


 熱く、鋭い熱線がベートを襲うも、辛うじてそれを体をひねりかわす。



「どこだ!?」


 消えたエレガントの姿。あれだけの巨体なのに動きは恐ろしいほど速い。



(上っ!?)


 ベートに重なる大きな影。顔を上げると、そこには太陽を背に大きく空に跳躍したゴールドパンサーの姿。



「くたばれっ!! オリジン!!!!」


 鋭い牙を光らせベートめがけて落下。


「くっ!!」


 無理な体勢からベートが後方に跳躍。ドンと音を立てて地表に落ちてきたエレガントに向かって大声で叫ぶ。



「爆ぜろぉおおおおおお!!!!」



 ドン、ドオオオオオオオオオオオン!!!



「グガアア!!!!」


 渾身のマナ攻撃。地面に落ちてきて一瞬動きが止まったエレガントを、ベートは見逃さなかった。



「うおおおおおおおおおお!!!!」


 ベートが体勢を崩したエレガントに一気に肉薄。マナを込めた拳で殴り掛かる。


 ドンドンドンドンドン!!!!!



「ガハッ!!!」


 連撃。オリジンだったヴォルトですら沈めたベートの連撃。堪らず逃げようとするエレガントにベートが内心叫ぶ。



(天を貫け!! 石柱昇華ストーンライズ!!!)


 土マナ攻撃の応用。地表から天に向かって突き出した太い石の柱。訳も分からず空へと舞い上がったエレガントが周りを見て叫ぶ。


「な、何が起きた!!??」



 そんな彼をベートは静かに冷静に見つめ、手を天に向かって向け小さく言う。


「消えろ」



 ドオオオオオオオオオオオオオン!!!!



「ギャアアアアアアアアアアア!!!」


 響き渡るエレガントの絶叫。空中爆発。まるで昼間の花火のように美しく白銀の煙がキラキラと輝く。



 ……ドン!!!!


 エレガントが音を立てて地表に叩きつけられる。激しい損傷。全身から血を流し、ピクリとも動かない。





「やった!! ベート、やったよ!!!」


 その姿を見て喜ぶミリザ。ユウキやキャロット達も抱き合って喜びを表す。だが当のベートはずっとエレガントに違和感を覚えていた。何かが違う。前戦った時と何かが違う。そしてその理由はすぐに明らかになった。



「……くくくっ」



「!!」


 うつ伏せに倒れたエレガント。大きな肢体を揺らしながら不気味に笑う。



「いや~、やっぱりオリジン様は強いですね」


 そう言いながらエレガントが血を流しながら起き上がる。明らかな劣勢。強化バフを纏ったベートに圧倒されながら見せる不思議な余裕。


(何を隠している……、何をしようとしている……)


 構えたベートが少しずつ後ろに下がる。不気味。違和感。その形容しがたいエレガントのオーラにベートが飲み込まれそうになる。エレガントが言う。



「『祝福の血清』って知っていますよね? そう、あなたのお爺さんシンデレラ・ヴォルトが瀕死の状態から蘇った魔獣族の血。どの個体の血でもいい訳ではなくそれは非常に限られたものなんです」


 黙って聞くベート。エレガントが続ける。


「私もね、飲んだんですよ。父上の」


 何となく分かっていた。エレガントの纏ったオーラ。それは彼が以前持っていたものとは大きく異なる。エレガントが血の付いた前足をぺろりと舐めながら言う。



「そしてね。私はこの可憐な姿を取り戻し、さらに『素晴らしき力』を手に入れたんですよ」


「素晴らしき力……?」


 ベートが構える。エレガントが叫ぶ。



「そう!! 魔獣族のさらなる進化!!! 『真正獣化』を!!!!!」


 そう叫ぶと同時に激しく輝き始めるエレガント。獣化の時よりももっと強く激しい光。直視できないほど強く光る肢体。目を閉じるベート。そしてエレガントの声が辺りに響く。



「さあ、ご覧なさい。これが私の真の姿……」


 ゆっくり目を開けるベート達。そこに居たのは全身黄金色の体毛に変わった獣族。鋭い無数の牙に、四本の尻尾。鋭い眼光に王者を示す赤きたてがみ。見るだけで相手に恐怖を与える堂々たる姿。ミリザが震えながら言う。



「あ、あれって、まさか『エンペラーライオン』……」


 エンペラーライオン。それは先代魔獣王が獣化した姿。魔獣族の頂点に立つ存在。エレガントが笑みを浮かべて言う。


「そう。これこそ私の真の姿エンペラーライオン。ただね、これは父上の力と私の力が融合した特別変異。その力は父上を遥かに凌ぐんですよ……」


 それが冗談ではないことは対峙しているベートが理解していた。ひしひしと感じる比べ物にならない迫力、圧。以前初めて『序列壱位』のレイ・エレガントに対峙した時のことを思い出す。真正獣化により怪我も治癒したエレガント。鋭い牙を向け、ベートに言う。



「さあ、ここからが本番。じっくりと殺してあげますよ」


 恨み。屈辱。復讐。ここ数か月、レイ・エレガントはずっと新生オリジンであるベート討伐を夢見てきた。相手は獣族の天敵オリジン。生半可なことでは勝てない。だから利用した。実の父親の命までも使って得たこの力。

 一瞬でベートの目の前に迫ったエレガントが大きな口を開いて襲う。



 ガン!!!!!!


「ぎゃあああああああああ!!!!」


 障壁を張る時間も、それをかわす余裕すらなかった。無防備のまま鋭い牙に腕を貫かれたベート。悲痛な叫び声が響く。



(は、爆ぜよ……!!)


 必死の抵抗。自分の腕に齧り付くエレガントの頭に向かってマナで攻撃。



 ドン!!!!


 小さな爆発。だがこちらを睨んだまま動かないエレガントの前足が、ベートを襲う。



 ガン!!!!!!


「ぎゃああ!!!」


 直撃を受け吹き飛ばされるベート。嚙まれた腕は曲がり大量の出血。胸には爪の跡が痛々しく残り、そこからも鮮血が流れ出す。



「ベート!!!!!」


 ミリザの叫び声が一体に響く。



「はあ、はあ……」


 よろよろと立ち上がるベート。



(強ぇえ。こりゃまずいぞ……)


 父の力を得て最強生物になったレイ・エレガント。その真の恐ろしさをベート達はこれから本当に知ることとなる。

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