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シンデレラ・ベート ~学園劣等生が覚醒する時~  作者: サイトウ純蒼
第四章「さよなら、ベート」

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78/82

78.謝罪と感謝

(爆ぜろっ!!!!)


 ドン、ドドドドン!!!!!



(障壁っ!!)


 ガン!!!!



 ベートとヴォルトとの戦いは壮絶を極めた。互いにオリジン。時代を築いたヴォルトに対し、彼を超えるマナを使役するベート。両者一歩も譲らない戦いを続ける。



「はあはあ……、ああ、ジジイ。やっぱあんたすげえ強いな。さすがだぜ……」


 息が上がる。呼吸の乱れはベートのマナの使用を制限する。だがここにきてヴォルトのマナにも乱れが生じてきている。無敵のオリジン。だが綻びは必ず起こる。ベートが構える。



「行くぞ!!」


 言葉と同時にヴォルトに肉薄するベート。すかさず息を止め、目の前でマナを爆発させる。


(爆ぜよ!!)


 ドン!!!!


 ヴォルトはそれをかわし、カウンターでマナを爆発。



 ドン……


(弱い!?)


 勢いがない。先ほどまでとは違い、ヴォルトのマナの勢いが消えている。想像と違ったのか。一瞬隙を見せたヴォルトにベートの右拳が炸裂する。



「うおおおおおおおお!!!!」


 ドオオオオオン!!!


 後方に吹き飛ぶヴォルト。砂煙。その中を突っ切ってベートが追撃を行う。



「うおおおおおおおおおおおおお!!!」


 ドンドンドンドンドン!!!!


 純粋なベートの拳が次々とヴォルトに打ち込まれる。吹き飛ぶヴォルト。ベートが右手を構え、小さく言う。



「これで決める」


 集中。集まるマナ。純粋無垢なベートのオリジンが、吹き飛んだヴォルトに放たれる。



(……爆ぜよ)


 決着はついた。ベートは落ち着き、最後にして最大の爆発を起こす。




 ドオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!



 周りにあった建物が揺らぐ。地面が揺れる。爆音と爆風。白銀の煙が立ち込め、それが太陽の光を浴びてキラキラと光り輝く。


「はあ、はあはあ……」


 ベートが堪らず座り込む。煙が消えた後、仰向けに倒れるヴォルトを見て思わずガッツポーズをする。



「やた! 俺、ジジイに勝った……」


 嬉しさを感じつつも、どこか一抹の寂しさを覚える。ゆっくりと立ち上がり、ベートが倒れたヴォルトの方へと歩き出す。



「おい、ジジイ。いい加減目覚めた……」



 ドオオオオオン!!!




「え?」


 歩き始めたベート。その前に突如空から()()が落ちて来た。唖然とするベート。疲労と開放感が一瞬、その判断力を遅らせた。



「死ね。オリジン」


 空より降りて来たのは上下白のスーツに、白色のシルクハット。ウェーブの掛かった可憐な金髪の男。元『序列壱位』であり、新生魔獣王レイ・エレガントであった。

 彼の突き出した細身の剣がベートの顔面に迫る。


(ま、間に合わねえ!!!!)


 後方に跳躍しようとするベート。ただあまりに一瞬の出来事に回避が間に合わない。死ぬ。そう思った時だった。




 ドオオオン!!!!


「がっ!?」


 不意にエレガントの後ろで起きた小爆発。体勢を崩すエレガント。その隙にベートが大きく後ろへと跳躍。間一髪で攻撃をかわすことができた。



「うそ……」


 ただ目の前で起きた光景にベートは目を疑った。それは先ほどまで自分と戦っていたヴォルトが、剣を突き出したエレガントに肉薄し、攻撃した姿であった。

 後方からの不意打ちを食らったエレガント。怒りの形相で叫ぶ。



「恥を知れ、出来損ない!!!!!」


 グサ……


「あ、ぁああ……」


 エレガントの細身の剣が精魂尽きたヴォルトの胸へと突き刺さる。呆然とするベート。エレガントは怒りを込めて連撃を放つ。



 グサグサグサグサ!!!!!



「あ、ああぁ、やめろ……」


 ベートは動けなかった。疲労に衝撃。目の前で大好きだったヴォルトが串刺しにされる光景に、身動きひとつできず体が固まる。エレガントが剣を振り上げ叫びながら突き刺す。



「くたばれ!!! 愚か者っ!!!!」



 グサ……



「ジ、ジジイ!!!!!!!」


 エレガントの最後の一突き。それはヴォルトの()を貫く一撃であった。



「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 ベートが拳にマナを込め突撃。身の危険を感じたエレガントがすっと後方へ大きく跳躍する。



「ジジイ、ジジイ!!! 大丈夫か!!!!!」


 大丈夫なはずはない。ボロ雑巾のように貫かれた体からは、大量の出血が止まらない。ベートが震えながらヴェルとの体を支え叫ぶ。


「嫌だ、嫌だ嫌だ!!! ジジイ、死なないでくれ!!!!!」


 ぼろぼろと涙が止まらないベート。大切な人のあまりに酷い姿にベートが感情を露わに泣き叫ぶ。



「……ベート」


(え?)


 血塗れになったヴォルト。鮮血に染まった手を、ベートの頬へと当てる。



「ジジイ……? ジジイ……」


 ヴォルトが目に涙を溜め、掠れた声で言う。



「強くなったな、ベート……」



「うっ、ううう、うわああああああああああ!!!!!」


 ベートは大泣きし、ヴォルトを抱きしめる。温かかった体。それが徐々に冷たくなっていく。ベートがヴォルトを見つめて言う。



「俺、俺、謝りたかったんだ。あんな酷いこと言って……、ごめん。ごめん、じいちゃん、ごめんよぉ……」


 ヴォルトの胸に顔を埋め謝るベート。無言。もうヴォルトに言葉を発する力はない。ただその顔は安らかで、息子の腕の中で生涯を終えることができる幸せな顔であった。



「じいちゃん、ごめん。本当に、ごめん。……それから、ありがとう……」


 息を引き取ったヴォルト。彼に向かってベートは心からの感謝を伝えた。




「やっと死にましたか。出来損ないが」


 スーツについた埃を払いながらエレガントが笑いながら言う。


「あの『序列参位』のアンデッドもそうでしたが、やはり人族の幹部ってのは全く使えませんね」


 ヴォルトを抱きしめ、黙って聞くベート。エレガントが言う。



「まあ、でもその老人は悪くはなかったですよ。何せわたくしの父、先代魔獣王を討伐寸前まで追い詰めたんですからね」


「……」


 冷静になれと自分に言い聞かせ、ベートが息を整える。感情に任せて戦ったら負ける。ベートがこれまでに学んできたことだ。



「でもね」


 だが、そんなベートの気持ちが次の言葉で吹き飛んだ。



「あと一歩と言うところでね、わたくしが言って差し上げたんですよ。あなたの大切な息子がいる()()にね、魔獣軍を進軍させたってね」



「え?」


 ベートが顔を上げ、エレガントを見つめる。それに答えるようにエレガントは笑いながら言った。



「そうしたらね、くくくっ。あれだけ強かったそのオリジンがさ、突如乱れ始めて。敗北寸前だった父上と、相討ちになっちゃたんだよね~」


「うそ、うそだろ……」


 ベートの頭が真っ暗になる。シンデレラ・ヴォルトが負けたのは自分のせい。自分の存在が彼の足を引っ張った。エレガントが笑いながら言う。



「あはははっ!! 傑作傑作!!! やはり人族なんてそんなものよね。そんな血の繋がらない馬鹿の為に、死んじゃうんだからさ~」


 壊れた。ベーとは何かが自分の中で崩壊するのを感じつつ、安らかに眠るヴォルトに言う。



「ジジイ、ごめんな。俺のせいで負けちゃったんだ。ほんとにごめん。謝ってばかりでごめん。ごめんごめんごめん……」


 再び溢れ出す涙。ベートはヴォルトをゆっくりと地面に寝かすと笑顔で言う。



「新生オリジンの戦い、そこで見ててくれな」


 涙を拭うベート。ゆっくりとエレガントの方へと歩きながらモモコに叫ぶ。



「モモコ、頼む」


 キュンキュン!!!


「はい!!」


 ときめくモモコ。すぐにその言葉の意味を理解し、回復ではなく強化バフをベートに発動。水の強化装甲を纏ったベートが、深く深呼吸してからエレガントに言う。



「今から消してやるよ。お前の存在自体を……」


 溢れ出すベートの怒りマナ。それは誰も感じたことのないほど強力なものであった。

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