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シンデレラ・ベート ~学園劣等生が覚醒する時~  作者: サイトウ純蒼
第三章「誇り高き屍が遺したもの」

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52/82

52.会えて良かった。

 森を覆うような水の広域マナ攻撃。森全体を消化するなどと言う理解不能な行動。こんなことができるのは世の安寧を託された【根源たるマナ(オリジン)】のみ。そしてその英雄と共に歩む仲間達。



(キャロット、あなたはついに出会えたのですね。その力を最大限に引き出してくれる素晴らしき仲間に)


 びしょ濡れのアイマスクの紳士マーベルトは後ろを振り返りながら思った。

 最初言われた時はその言葉を疑った。全属性、広域マナ攻撃。そんな馬鹿げた能力が存在するはずがないと。ただ片鱗は何度か目撃した。いつしか信じるようになった。いや信じたかった。それでもこれほどの能力だとは思ってもみなかった。だがオリジンと一緒なら奇跡だって起こせる。

 マーベルトが剣を握り迫りくる赤の王国軍を見ながら思う。


(このような無様な姿になってまで生きていて良かったです。あなたにまた会えて……、だから)



「だからこの先は一歩たりとも通さぬっ!!!!」


 爆発的に大きくなるマーベルトの覇気。大群の王国軍に、配下のクローバーと共に突撃する。ローレンも剣を振り上げ皆に叫ぶ。



「援護を!! 我らも突撃する。皆は援護を頼む!!!!」


「おおっ!!!」


 ローレンと隊長アリシア、その他歩兵隊がマーベルトの後に続いて赤き軍団に立ち向かう。



「うおおおおおおおおおおっ!!!!」


 まさにそれは修羅と呼ぶべきに相応しい姿だった。右手に持った細身の剣。鬼神の如く振り回し、対峙する朱の悪魔達を斬り裂いていく。配下のクローバーもマーベルトに及ばないものの相当な強者。ふたりで次々と重鎧を纏った王国軍を倒していく。



「怯むな!! ここを死守しろ!!!」


 エルフ族では貴重なオールラウンダーのローレン。弓矢の効かぬ敵兵に、隊長アリシアと共に突撃する。エルフの歩兵隊も参加。エルフ軍が激しく最後の抵抗をする。



「な、なんだあいつ!?」

「バケモノかよ!!」


 だがやはりアイマスクの紳士、『序列参位』のマーベルト侯爵の活躍は突出していた。見る者触れる者がまるで豆腐のように斬られ、血しぶきを上げながら倒れていく。今回初参戦の国王軍の兵士が顔を真っ青にして震え上がる。

 ただやはり多勢に無勢。快進撃にもやがて限界が近づく。



「ぐはっ!!」


 マーベルトを襲う攻撃。特に遠距離攻撃。弓矢やマナなどの攻撃を受ける度に動きが鈍くなる。



(この体、アンデッドの体は回復機能がない……)


 アンデッドの弱点のひとつ。それは受けた怪我が治らないこと。自傷した左腕はベートとの戦いから、同じく負傷した足はこの戦いの最初から上手く動かないでいた。遠距離攻撃受ける度に体の損壊が止まらなくなる。


「なのに痛みがあるとは、滑稽よっ!!!!!」


 マーベルトの斬撃。それはこの世の最後に自身を刻み込むような気迫溢れるもの。これぞ魔獣軍『序列参位』の意地。マーベルトがマーベルト足るが故の証。





(……体が動かない)


 経験のないような強力な水マナを放ったキャロット。激痛に近い消耗の前に倒れ、動けなくなっていた。

 だがその目に映るアイマスクの紳士、それが誰なのかもう分かっていた。自分に気づいていないのか、それとも名乗れない理由があるのか。どちらにせよ自分がすべきことはもう分かっていた。



()()()()。もうお父さんをね……、死なせないよ、絶対……」


 あの時自分は無力だった。『行ってくる』と言って出て行った父親を引き留めることができなかった。悲痛の表情。行けば無事に帰れないことなど幼いキャロットですら理解していた。

 何もできなかった。大好きな父を失った。もう繰り返さない。あの間違いはもうたくさんだ。



「お父さん……」


 立ち上がるキャロット。溢れる涙。動くだけで痛む体に鞭打って呼吸を整える。後ろで、同じくマナを吸われ動けなくなっているベートに向かって言う。



「ねえ、ベー太。悪いけど……、もう一回だけ、お願い」


「……ぁあ?」


 ベートがふらつく頭を上げ見た光景。それは吹き付ける風に朱色のボブカットの髪を揺らし、両手を上げるキャロットの美しい姿。そして静かな詠唱の後、大声で叫んだ。




「みんな!! 逃げて!!!!!」


 それに気づいたローレン、そしてマーベルト達が一斉に退避する。



「すべてを貫け!! 雷神の裁き(レイナトゥーラ)!!!!」


 まだ上空に残っていた大量の雨雲。それらが数多の雲の魔法陣となり、そこから朱の悪魔達に向かって神の裁きの雷撃が降り注いだ。

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