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シンデレラ・ベート ~学園劣等生が覚醒する時~  作者: サイトウ純蒼
第三章「誇り高き屍が遺したもの」

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48.敗北の戦犯

 エルフ族討伐作戦が失敗に終わったフォレスト王国。謎のアイマスク紳士やアンデッド軍団により軍も甚大な被害を受け、指揮官だったかなめのレザ・スリーデルも負傷した。

 全滅を避けられたのはベートらのお陰ではあったのだが、レザの怒りは絶頂に達していた。


「お前達を国外追放とする!! この役立たず共め!!!!」


 フォレスト王城最上階にある謁見の間。広いフロアに集まったのはフォレスト国王をはじめ、娘で姫のフローラ。要のレザ・スリーデル。その父親のスリーデル公爵に、その他主要大臣ら。

 そして彼らの前に立たされ、()()に仕立てられたベート達。レザが続ける。



「破竹の勢いで勝ち続けていた俺達にお前らは加勢したか!? 何もせずただただ従軍したのみ。アンデッドと言うイレギュラーによって敗北を強いられたのもすべて何もしなかったお前達のせいだ!! 恥を知れ!!!」


 また負傷した傷が癒えないレザが顔を紅潮させて怒鳴りつける。堪らずベートが言う。


「何言ってんだ!! 俺達は……」


「仮面の紳士を退け、大量のアンデット達を倒したのは私達です。そんなことはあそこにいた皆が知っているはず。それでも『何もしなかった』と仰るのですか!!」


 ベートの言葉を遮ってミリザが叫ぶ。怒りを隠せないミリザ。美しい銀色の髪が逆立っているようにすら見える。レザがミリザを指さし答える。



「はあ!? よくそんな戯言を口にできるな!! あのアンデット達を倒したのは俺達フォレスト王国軍。屈強な俺らが命を懸けてこの国を守ったのだ。それをお前がやっただと!? 馬鹿にするものいい加減にしろ!!」


「いい加減にするのはお前だろ!! あれは俺達の……」


 そう言いかけたベートより先にレザが言う。


「おい、部隊長! 俺の言葉に虚偽はないよな?」


 レザが謁見の間に集まった軍人のひとりに尋ねる。部隊長は大きく頷いてレザの言葉を肯定する。


「くそっ……」


 ここはすでに敵陣と化している。示し合わせたような茶番劇。ベート達に敗北の責を負わせたいレザに対し対抗する手段は何もなかった。不安で泣きそうな顔のモモコ。エルフだとばれないように必死に床を見つめるキャロット。レザが言う。



「本来なら処刑すべき大罪だが、それでも他国の要。まあそれも真偽は分かりかねるが。国外追放になっただけでも感謝しろ!! そして二度とこの聖なるフォレストに踏み入れるな!! いいな!!!」


 苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべるベート。最高権力者である高齢のフォレスト国王は黙ったままその様子を見つめる。守護兵に退出を促されるベート達。それを見ていた国王の娘フローラが父に言う。



「お父様、本当に国外追放でよろしいのでしょうか? 仮にもシルバーナイツの要。外交問題に、いえ、それよりこの危機迫るフォレストから彼らに協力を求める方が……」


 それを聞いていた国王の傍で佇立するスリーデル公爵が答える。


「フローラ姫。そのような愚考は改めた方がよろしいですよ」


「……」


 フローラが口を閉じてスリーデルを見つめる。


「どんな苦難でも我らの赤き重歩兵が打ち破って見せますぞ。それとも姫は我らの軍が信じられないとでも仰るのでしょうか?」


「そ、そういう意味ではないです……」


 狡猾で、家臣の中でも絶対的権力を持つスリーデル公爵。年季の入った顔の皺、威圧感。まだ若いフローラの対処など赤子の手を捻るようなもの。スリーデルが国王の耳元で言う。


「そうでございますよね、国王」


「う、うむ……」


 やや不満そうな表情を浮かべる国王。その耳元でスリーデルがさらに小声で続ける。



「何の産業もない森だけのフォレストで、どうやってあのような屈強な軍隊を持つことができたのか。どこからその資金が出ているのか。聡明な王ならばその程度のこと十分お分かりですよね……」


「……」


 目を閉じ、もうその話題はいいといった顔をする国王。そんな父親と国王が話すのを横目で見ながら息子であるレザ・スリーデルが皆の前に出て声高々に叫ぶ。



「フォレスト王国軍の真の恐ろしさをあの下賤なエルフ共に見せつけてやるぞ!! すぐに彼奴ら嘆き叫ぶ声であの森を埋め尽くしてやる!! いいか、お前ら!!!」


「はっ!!」


 広間にいた者達がレザの声に反応して答える。納得の行かない表情を浮かべるフローラとは対照的に、スリーデル親子はその光景を見て満足そうに頷いた。






 コンコン……


「お父様、よろしいでしょうか?」


 その夜、父である国王の私室を訪れたフローラがドアをノックする。真夜中の王城。静まり返る中、守護兵達の挨拶を笑みで返しながらフローラが部屋へと入る。


「フローラか、どうした?」


 部屋着姿の国王。高齢で背中は曲がり、顔のしわや真っ白な髭はかつての力強かった国王の面影はない。テーブルには飲みかけのワイン。ここ数年、飲酒の量も増えている。フローラが尋ねる。



「本当に今日のあの対処はよろしかったのでしょうか?」


 それはエルフ討伐失敗の責をすべてシルバーナイツの要達に押し付けたこと。国外追放にしたこと。国王は黙ったままソファーに腰掛け、飲みかけのワインを口にする。


「お酒はほどほどになさってください。お父様……」


「うむ……」


 高齢でできた大切なひとり娘。妻は出産時に亡くなり、文字通り目に入れても痛くない愛娘。国王がワイングラスをテーブルに置き、小声で話し始める。



「仕方ないのじゃ。国のために」


「だけどおかしいです!! 心ある兵士達より聞きました。仮面の紳士やアンデット達を倒したのはシルバーナイツの要達だと」


「……そうか」


 国王はもはやそんなことには無関心のようにつぶやく。


「それを敗北の責を押し付け、国外追放とは。あまりにも酷すぎる仕打ちではないですか? 本来なら……」



「国の為、なんじゃ。分かってくれ、フローラ」


「で、でも……」


 悲しみに満ちた国王。フローラに言う。



「この森林ばかりの国でどうやってあれだけの軍隊が維持できているのか、お前も知っていよう」


「……」


 黙り込むフローラ。


「スリーデルが献上する豊富な資金のお陰じゃ。あれがなければ周りを列強に囲まれ、魔獣族の襲撃にも日々怯えながら暮らさねばならぬ。民の為、国の為なんじゃ……」


「だからって、エルフ達を()()()お金でそんなことをしても……」


 国王がフローラを見つめて言う。


「滅多なことを言うものじゃない。何の証拠もない。スリーデルも関与はないと申しておる。わしは家臣の言葉を信用するだけじゃ……」


 汚い仕事には関与しない。故にスリーデル家はフォレスト王国で絶大な力を持つようになった。フローラが言う。



「だけど、エルフ族だって何も悪いことはしていな……」


「それも何度も言ったはずじゃ。スリーデルより『人族を襲撃する』と聞いておる。それだけのことじゃ……」


「……はい」


 フローラが頭を下げ王の部屋より退室する。高齢で気の弱くなった父では狡猾なスリーデル公爵には勝てない。フローラは深いため息をつき自室へと戻った。






「猶予期間として三日与える。その間に荷物をまとめてこの国より立ち去れ。よいな!」


 フォレスト王城を追い出されるようにして退城したベート達一行。守護兵に睨まれる中、城を出て城下町を歩く。



「ほんと頭来ちゃうわ!!」


 苛立ちを隠せないミリザ。どう転んでも納得がいかない。


「いっその事、エルフ族と手を組んで国王軍をやっつけちゃおうよ!!」


 鼻息荒くそう話すミリザにベートが答える。


「そう焦るなって。まあ何とかなるって」


「何とかってどうなるのよ!」


「知らねえけど……」


 やや疲れた表情を浮かべるベート。モモコが言う。



「わ、私はベート様の決めたことに従います。はい……」


「ボクはエルフ族の味方になるってのに賛成だな!」


 城を出てやや元気を取り戻したキャロットが大きく頷いて言う。ミリザが改めてベートに言う。


「あー、もうどうするのよ!! イライラするわ!!」


「落ち着けって。どうにかなるもんだって」


「だから、一体何がどうなるってのよ!!」


 馬鹿にされ、冤罪を着せられ爆発寸前のミリザ。ベートが彼女の後ろからやって来る人物を見ながら答える。



「ほら、何とかなりそうな感じがしてきたぜ」


「だから一体……」



「ミリザ様、オリジン様。お探ししました」


 それはこのフォレストでミリザの援助を行う獣族の使い。ベート達に近づき、小声で言う。



「人身売買についての情報を掴みました。アジトまで来て頂けますか」


 やっぱりどうにかなる。ベートはそんなドヤ顔をミリザに嬉しそうに向けた。

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