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シンデレラ・ベート ~学園劣等生が覚醒する時~  作者: サイトウ純蒼
第三章「誇り高き屍が遺したもの」

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45.侯爵無双

「ここに第三の砦を築いて欲しい」


 フォレスト王国軍侵攻の数日前。マーベルト侯爵はエルフ族の若き頭領ローレンと共に、決戦場を視察しながら言った。第二砦までは完成。第三砦はもっと地の利を生かした攻め難い場所での築陣を考えていた。怪訝そうな顔をしたローレンが尋ねる。


「ここは何もない平らな場所。こんな所に陣を築いてよろしいのですか?」


 絶対の信頼を置くマーベルト侯爵。その言葉を疑う訳ではないが、明らかに不利な立地にやや困惑する。マーベルトが答える。



「ここです。ここじゃなきゃ駄目なんです」


 じっとその平らな土地を見つめるマーベルト。体から迸る覇気。ローレンは黙ってこの何の変哲もない場所に仮設の砦を築くよう部下に命じた。




「いでよ、我が同志!! 既死体復活アンデッド・リボーン!!!」


 魔獣国『序列参位』マーベルト侯爵の特殊能力、自分の想いに応えてくれる死者を操る力。そしてこの第三砦がある場所こそ、生前彼とその部下達が謀略によって命を落とした場所である。


「ア、アンデッドだと!?」

「スケルトンだ!!!」


 ゆっくりと地中から這い上がってくる生きる屍達。その多くが今は亡きフランソワ家の紋章の入った鎧を纏っている。マーベルトが感慨深く皆に言う。



「すまなかった、みんな。こんな私の為に命、そして誇り高き名誉まで地に叩きつけてしまって。だが私は今日この再会の時を迎え、感謝の気持ちでいっぱいである。そして……」


 マーベルトは真っ赤に染まった王国軍、その後方にいる仇敵スリーデル家の旗を見て言う。



「我らが積年の恨み。共に今日ここに晴らさん!!! 行くぞっ!!!」


 マーベルト侯爵の話を聞き、カタカタと鎧を震わせるアンデッド達。そして侯爵の号令と共に、その矛先をフォレスト王国軍に向けた。




「何だよあれ? キモっ!! アンデッドなんて聞いてねえぞ!!」


 その様子を後方から見ていたレザ・スリーデルは、突如現れたアンデッドの群れを見て顔を歪めた。だが何が起きようとエルフ族討伐は既定路線。絶対の自信を持つ王国軍『朱色の悪魔』が負けるはずがない。レザが立ち上がり剣を掲げ叫ぶ。


「突撃っ!! ひるむな。相手はただの腐った死体だ!!!」


 圧倒的有利に進めていた戦場。この程度のイレギュラーで負けるはずがない。この時の彼の自信は揺るぎないものであった。




「おい、あれってアンデッドか? マジかよ……」


 同じく王国軍後方で戦況を眺めていたベートが意外な敵の出現に驚く。ミリザが神妙な顔で言う。


「アンデッド使役は禁術。一体何者なの、あれ……」


 ミリザの視線の先には大きなアイマスクを付けた肌色の悪い紳士。だが強い。それだけは皆が理解している。



(何だろう? あの人何か……)


 そんな中、白のフードを深くかぶったキャロットが不思議な感覚に襲われる。既視感。懐かしさ。とても言葉で言い表せない感情。遠くに現れたその紳士をじっと見つめた。




「ぎゃああああ!!!」

「ぐわあああ!!!」


 一方前線では戦況が一変していた。レザの鼓舞も虚しく、アンデッドと謎の紳士の強さの前に次々と王国軍が倒れて行った。朱色の鎧を着た王国軍が後ずさりしながら言う。


「つ、強い……、硬いし、重い……」


 元は皆、侯爵家直属の側近達。剣豪マーベルトが鍛え上げた精鋭軍団。不慮の最期を遂げたが、不死の肉体と恨みを伴った力は楽勝ムードだった王国軍を次々と撃破して行った。

 極めつけがアイマスクの紳士。戦場をまるで蝶のように舞い、次々と朱色の鎧を血の赤で上塗りしていく。



「す、すごい。さすが侯爵……」


 ローレンが思わず声を出す。死してなお生前と変わらぬ、いやそれ以上の美しい剣裁きで敵を翻弄する。

 そしてもうひとり、ベートもその可憐な太刀を見て不思議な感覚を覚えていた。



(あれって、なんかジジイの剣術を見ているみたいだ……)


 探し続ける師であり、オリジンだったかけがえのない人物。剣豪とも、剣聖とも呼ばれたシンデレラ・ヴォルトの太刀に似ているところがある。


(まさかな……)


 強い者は似る部分がある。ベートはそう思うことにした。




「ぎゃあああ!!!!」

「ぐわああああ!!!!!」


 時間と共に王国軍の劣勢はさらに顕著になった。ただでさえ強く厄介なアンデッド。それを率いるのが魔獣軍幹部『序列参位』のマーベルト侯爵。指揮官であるレザが気付いた時には、すでに敗北が避けられない状態まで追い詰められていた。



「そんな馬鹿な。なぜ……」


 あれほど順調だったエルフ討伐。あと一息のところで訳の分からぬアンデッド軍団に邪魔をされた。レザがこの戦いで初めて愛用の大剣を手に前線へと駆け出す。



「うごおおおお!!! てめえを討ちとりゃ問題ねえ!!!!」


 ターゲットはアイマスクの紳士。アンデッドを指揮し、重歩兵を相手に無双する得体の知れない相手。だがそこを断てば再び優勢になれる。多くの部下が倒れる中、レザが一直線にマーベルト侯爵へ斬りかかる。


 ガン!!!!!


 地響きのような振動。レザの強烈な太刀をマーベルトが細い剣で受け止める。



(レザ・スリーデル!!!!)


 憎きスリーデル公爵の息子。父同様に軍を私物化し、何の罪もないエルフを捕え売り払う。もっとも許せない相手。血に刻まれた人族殲滅のめい。マーベルトの剣が唸りを上げ空を斬る。


 シュンシュンシュンシュン!!!!


「ぎゃあああ!!!!」


 目にも止まらぬ速さとはこのことだろう。レザの一撃を防いだマーベルトは、凄まじい連撃を繰り出し反撃を開始。特注の重鎧に包まれたレザを鎧ごと突き刺す。



「レザ様!!」

「今お助けを!!!」


 側近達に救助され辛うじて逃げ延びたレザ。応急処置を受け一命は取り留めたが、恐るべきトラウマがその体に刻み込まれた。レザが叫ぶ。



「て、撤退……、撤退するぞ!!!!」


 もう勝てない。訳が分からない。帰りたい。レザは後方に待機させてあった馬車に向かいながら近くにいたベートに言う。


「お、お前、要だろ!! 何とかしろよ!!!」


 醜い。これほどまでの悪態は見たことがない。そう言い残して自分だけ逃げ始めるレザ。情けない姿を見て呆れるミリザ達。ただベートだけは黙って戦況を見つめる。



(やっぱ気になる……)


 どうしても目が行ってしまうアイマスクの紳士。その秘密をどうしても知りたくなっていた。

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