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シンデレラ・ベート ~学園劣等生が覚醒する時~  作者: サイトウ純蒼
第二章「サーマルトを襲う甘い牙」

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34.絶望の先の光

「今日はここで野宿だ。すまない、私のせいで……」


 国中に指名手配されたレザリア。もはや人のいる街や村に滞在はできない。弟達は火鳥に任せたので安心だが、時間と共に周りを取り巻く状況は悪化している。怪我をしたベートの顔が痛みで歪む。碌な治療もできない状況に思わず首を振る。



「気にすんな。俺が負けたのが悪い。俺が弱いせいだ」


「お前は弱くない。私なんて……」


 あれだけ鍛えて来たのに全然足りない。これでかなめを名乗っていたとは笑い話にもならない。ミリザが言う。


「とりあえず今日はもう休みましょ。もうくたくただよ……。明日、あの女をどうするかまた考えればいいよ」


 ベートが頷いて答える。


「そうだな。今日はさすがに疲れた。ここで休んで……!!」



 そこまで言ったベートの五感がビシビシと反応する。この感覚。絶望の一歩手前の感覚。森の暗闇をじっと見つめたベートが大声で言う。


「誰だ!! そこにいるのは!!!」


 皆の視線が暗闇に集まる。そしてそこからゆっくりと現れた人物を見て驚愕した。



「み~つけた。こんな所に居たのね~、やだぁ、私のこと、噂していた~??」


「ル、ルシア・マリン……」


 魔獣国幹部にして『序列四位』の獣族ラブリーキャッツ。昨日大敗した相手が再び目の前に現れた。激痛を我慢して身構えるベート。ミリザが言う。



「ど、どうしてここが分かったの!?」


「どうしてって~、あなた達指名手配されているのよ~。幾らでも情報は入るわ~」


「くっ……」


 誰かからの密告があったのか。自分達が思う以上に窮地に追い込まれていたようだ。ベートが前に出て言う。



「俺が相手をする。お前らは逃げろ……」


 ミリザが涙目で言う。


「嫌、もう嫌!! ベート、死んじゃうよ!!」


 分かっている。だが自分がやらなきゃ誰がやる。レザリアがベートの隣に立って言う。



「微力ながら私も戦う。除籍されたようだがこれでも元要。この国の為に一矢報いる」


「弟が悲しむぞ」


 ベートの言葉にレザリアが笑って答える。


「敵前逃亡するよりマシだ。あいつのため、姉は正々堂々戦ったと胸を張りたい」


「分かった。そう言うことだ、ミリザ。お前は後ろで見てろ」


「ベートぉ……」


 非力なミリザ。残ったところで戦力にはならない。自慢の脚力も二人を乗せてあのラブリーキャッツから逃げることは不可能。ミリザが茂みに入り、木の影からじっと二人を見つめる。



「行くぞ」


「ああ」


 ベートが息を止める。レザリアもマナの詠唱を開始する。




 ドオオオオオオオン!!!


「ぎゃああ!!」


 戦いは熾烈を極めた。いや、手負いのベートはもうまともに戦えることすら叶わなかった。レザリアが増えた事により攻撃対象は分散されたが、防戦一方の戦いに敗北はもう時間の問題だった。



「はあ、はあはあ……」


 出血。激痛。息を止めながらの戦いが、更にベートの体に負荷をかける。流れ出る鮮血。目の前の光景すらもうぼんやりとして焦点が合わない。


(マナを使いたいが、息が止められない……)


 著しく減った体力。この状態で呼吸を止めることは自殺行為に等しかった。呼吸をしなければ体が動かないし、マナを発動しても途中で息をすれば技そのものが消え去る。呼吸停止と言う発動条件は、このように追い込まれた際想像以上に厳しい条件となる。万策尽きた。そしてベートがある覚悟を決める。



「レザリア、お前も逃げろ……」


「ば、馬鹿なことを言うな……」


 同じく立っているだけでも精一杯のレザリア。ベートの言葉に強く怒りを示す。ベートが言う。


「俺があいつに突っ込む。デカい爆発ぶち込んでやるよ……、だからお前は……」


「まさか自爆!? 自棄やけになるな!! お前はオリジン、世界を救う……、ぎゃあ!!」


 そう話していたレザリアが血を吹きながら倒れていく。



「お、おい!! どうし……!!!」


 その後ろ。レザリアが倒れた後ろに立つマリン。彼女の鋭い爪。そこにたっぷり付いた血を舐めながら言う。



「死んじゃったかな~? じゃあ、オリジン。あなたもそろそろ死のうかぁ~??」


 腹部を一突きされたレザリア。大量の血を流しながら倒れる。



「くそくそくそ……」


 ベートの息が止まる。無意識に集まるマナ。圧縮された無垢なマナ。それを感じ取ったマリンが後方へ逃げるように跳躍する。



「あ~、またその攻撃。それってちょー危険だよ~、マリン、こわ~い!!」



(あっ……)


 何かが切れた。我に返ったベートの中で何かが音を立てて切れた。



(やべ、もう力が……)


 立つこともできない。意識もなくなりかけている。死ぬ。殺される。もう勝てない。ほんの一瞬、勝利を諦めた弱気なベートが顔を出す。

 皆を襲う絶望。そして「私が行かなきゃ!」とミリザが死を覚悟してベートの救出に向かおうとしたその時、奇跡が起きた。



「……森羅万象を源にせし水のマナよ。癒しとなりて傷を治癒せん。ヒール」


 温かく、優しい感覚がベートの中に生まれる。癒し。湧き上がる力。ベートの意識が徐々に鮮明になっていく。



(これって、前にどこかで……)


 経験したことがある。この身を包むような感覚。癒しの力。




「ハイヒール!!」



(これは!!!)


 溢れる力。湧き上がるマナ。ベートが立ち上がりその声の方を振り返る。



「ベート様、もう大丈夫です!! モモコが、モモコが来ました!!!!」


 モモコ・フォールラブ。水のマナ使い。後に『恋する聖女様』と呼ばれる彼女の、本当の力がこれより発揮される。

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