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シンデレラ・ベート ~学園劣等生が覚醒する時~  作者: サイトウ純蒼
第二章「サーマルトを襲う甘い牙」

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25.ミリザの秘密

「道はこっちでいいよね~、ベートぉ~」


 ゴレッタ村の村長より生贄を要求する魔獣族討伐の依頼を受けた二人。魔獣がいると言う郊外の森を歩く。日差しが届く爽やかな森であるが、下獣などが多くいるから気を付けて欲しいと言われている。ミリザが艶のある銀髪を揺らしながら言う。


「あのウザイ騎士団はもう先に行ったのかな~?」


 少し前に出て行ったサーマルト王国騎士団ジェット一行。ジェット自身は正式な騎士団員のようだが、連れていた連中は恐らく金で雇った冒険者か何かだろう。実際騎士団員を意味する青の鎧も着ていなかった。


「本当に失礼な人達だよね~」


「……」


 先程から無言のベート。ミリザがややむっとした顔で尋ねる。



「ねえ、どうしたの? 何かあったの??」


「何かじゃねえよ。ミリザ、いい加減教えてくれないか。お前、一体何なんだよ?」


「……」


 今度はミリザが黙り込む。彼女が狙われている立場なのは分かった。だが希少種とか珍しいとか、強い子孫を残すとか。さっぱり意味が分からない。彼女は相棒と決めた。だから知りたい。一緒にいる仲間だからこそ、その本当の存在を。ミリザが言う。



「そうだね。いい加減話さなきゃ、だね」


 前を歩いていたミリザが両手を後ろでつなぎながら答える。ベートが言う。


「知りたい。知っておきたい」


 ミリザが振り返って答える。


「うん。ベートならいいよ。教えてあげる」


 黙って頷くベートに、ミリザが隣にやって来て歩きながら話し始めた。



「知っての通り私ね、シルバーペガサスなの」


「ああ」


 それは知っている。


「シルバーペガサスってね、産んだ子供がすごく高い確率で強力な個体になるの」


「強力な個体?」


「うん。つまりめっちゃ強い子を産めるんだ」


「ああ、だからか……」


 皆が彼女に交尾を迫る訳。その理由をベートが理解した。



「でもシルバーペガサスって突然変異でしか生まれないの」


「え?」


 ベートがミリザをまじまじと見つめる。


「私の家族は普通のペガサス種。だけど私だけ偶然シルバーペガサスになっちゃったの」


「そうだったのか……」


 彼女が狙われる理由、そして身分を隠す理由が鮮明になっていく。


「だからね、魔獣国に居られなくなっちゃって、シルバーナイツに来て身を潜めていたの」


 納得がいった。ベートが頷く。


「あと私の血は……」


 そこまで言いかけたミリザが口を閉じる。


「どうした?」


「あ、ううん。何でもない」


 首を傾げるベート。そして尋ねる。



「で、なんでお前が魔獣王討伐しなきゃならないんだ?」


 もうひとつ引っかかっていたこと。それはこのひ弱な彼女が自分達の王である魔獣王討伐を目標としていること。ミリザが悲しげな表情で答える。



「私の姉、レモン・ハニーキッスが魔獣王に囚われているの。私をおびき寄せる為に」


「なっ、本当か!?」


「うん。お姉ちゃんがどんな扱いされているのか知らない。両親はもう殺されてしまったし、たったひとりの家族なんだ。だから、絶対……」


 ミリザの目に涙が溢れる。望みもしないシルバーペガサス。その小さな体で想像もできない大きな運命を背負っている。ベートがミリザの肩に手を乗せ言う。



「俺が、【根源たるマナ(オリジン)】の俺がもっともっと強くなってお前の姉ちゃん助けてやる。約束する」


 ミリザが涙を拭きながら言う。


「そんな約束しちゃって大丈夫~? 女の子は本気で信じちゃうんだよ?」


 ベートが顔を赤くして森を見ながら答える。


「べ、別のお前の為じゃねえよ。俺もジジイに会わなきゃいけないんで、そのつ、ついでだ」


 ミリザが笑顔になりベートの腕を指でつつきながら言う。



「照れちゃって可愛い~、やっぱりベート大好き!!」


「や、やめろって! 離れろよ……」


 手を振りほどき走り出すベート。笑みだったミリザが真剣な顔に戻り言う。



「あとね、ベート……」


 立ち止まり振り返ったベート。同様に真面目な顔で言う。


「多分同じことを俺も聞こうと思ってる。マリンって奴さ、まさか、あれか?」


 ミリザが頷いて答える。



「ええ、そうよ。間違いなく魔獣国幹部『序列四位』ルシア・マリン。そして彼女の特技は……」


 静寂の中、ベートがじっとミリザを見つめる。



「……魅了チャーム


 学園の講義で習った。ルシア・マリンについて。ミリザが言う。


「マリンが絡んでいるとなれば、この獣族の反乱も納得いくわ。みんな魅了されて自我を無くして……」


「そう言うことか……」


 サーマルト王国自体が窮地に立たされている。シルバーナイツに宣戦布告したのもきっとマリンの謀略のひとつだろう。

 事態の深刻さに思わずお互い黙り込む。そんなふたりの耳に、前方より大きな男の声が響いた。



「戦え、戦え!! お前ら、早くやれ!!!」


 驚き顔を見合わせるふたり。聞き覚えのある不快な声。サーマルト王国騎士団、ジェットとその仲間が前の方で何かと戦っているようだ。ミリザが言う。



「ちょっと見に行ってみようか」


「ああ、見つからないようにな……」


 ふたりは茂みに入り、大声で戦うジェット一行へと近付いていく。そして彼らが戦う数体の獣族を見て安心した顔で言う。



「なんだ下獣じゃん。あれは多分フォレストキャット。全然問題ない相手よ」


 ミリザが安堵の表情を浮かべる。村長より魔獣族は四つ足のパンサー系の獣族だと聞いている。だが大きさが全然違う。子供サイズの獣族なので間違いなく討伐対象ではない。ジェットが大声で喚き散らす。



「な、なにやってんだ、お前ら!! 早く倒せ! 高い金を払ってやってるのに、なにやってるんだよ!!」


 下獣フォレストキャット。茶色と黒の斑模様の最下級獣族。だが素早さはそこそこあり、ジェットが雇った冒険者達は素早い動きに苦戦していた。ベートが尋ねる。



「どうする?」


 ミリザが呆れた顔で答える。


「放っておきましょ。騎士団なんだし、冒険者なんでしょ? あれぐらい自分達で何とかして貰わなきゃ」


「そうだな……」


 ベート以上に彼らの悪態に怒りを隠せないミリザ。ジェットは確かに騎士団なのだが、所属は後方支援。ユーティリティとか言っていたが恐らく実戦経験などほとんどないのだろう。だから冒険者を雇い手柄を立てたかったに違いない。



「や、やったぞ!!」

「倒した倒した!!!!」


 しばらくしてようやく下獣達の討伐を終えたジェット一行。既に冒険者の数名は深手を負いこれ以上戦えない状態。ジェットがポーションを投げつけて言う。


「時間かかり過ぎだ、役立たずめ! まあでも()()()を倒したので、これで俺達の役目も無事終了だな。あとは王都の報奨金と、くくくっ、あの無垢な少女が俺のものに……」


 冒険者達が治療を行う中、ジェットの薄気味悪い笑い声が辺りに響く。ベートが驚いた顔で言う。



「おい、あいつ。あれが魔獣族だと思ってんのか?」


「本当に真正の馬鹿ね。下獣倒して喜んで、しかも変態ロリ。後ろ足で蹴り殺してやりたいわ!!」


 苦笑するベート。だがひとりの冒険者の叫び声で事態が一変する。



「ぎゃああああああ!!!!」


 驚いた皆がその声の方へと視線を向ける。ジェットが青い顔をして言う。


「お、おい。なんだ、あれは……」


 そこに現れたのは見上げるような大きな体の獣族。黄色い体に黒の斑模様。四つ足で口からは鋭く大きな牙。血を流し倒れた冒険者の前で、赤く染まった前足の爪をぺろりと舐めている。ミリザが言う。



「キラーパンサー……、なんて大きい個体なの!?」


 堂々たる風格。その姿はまさに森の王者。皆はすぐに生贄を要求していたのはこの獣族だと気付いた。ベートも、ミリザすら不覚にも暫しその見事な獣族に見入ってしまった。

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