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1:魔王とコンビニ

正直すまなかったと思ってます。

後悔はしていない。

コンビニの事の仕組みについて何も知らないど素人の作者が頑張って書いていきます・・・

薄暗い小部屋の中。

そこには人間とはかけ離れた者達が集まっていた。

それはゲームの中にいそうなゴブリンからオーク…はたまたゾンビの様な魔物までいた。

そして、その中で玉座の様に見えるが、禍々しいオーラが見えるイスに座っている貫禄のある魔物…魔王がそこに座っていた。

魔王は書類を書きながら、机越しに立っている魔物に一言告げる。


「貴様はクビだ。」


「な、何故ですか魔王様!! (わたくし)めはきちんとノルマを達成したはず…!?」


「駄目だクビ。連れて行け。」


「そ、そんな…!! あんまりにございます魔王様!!」


魔王の解雇という二言で簡単に魔界へと帰らされていく哀れな魔物。

その魔物の悲鳴を聞き、魔王は肩の荷が下りた様にふぅ…と息を吐く。

すると、目の前に先程とは違う魔物が魔王の前に立つ。


「魔王様。どういうおつもりですか? あやつめはきちんとノルマを達成していたはずですが…」


魔物はつまりはどういうつもりであの魔物を魔界へ強制送還させたのかが聞きたいらしい。

恐らく自分もそうならないための参考にしようとしているのだろう。

魔王は少し考える素振りを見せた後にまるで辛い過去を話す様に重たい口を開いた。


「我が奴を帰らせたのは他でもない。顔だ。」


魔王の言葉を聞き、魔物は頭にクエスチョンマークが浮かぶ。


(顔? 何故顔なのでしょうか…魔王様は一体何を考えて…)


「ふん。その程度もわからぬのか貴様は…貴様もクビにしてやろうか?」


「ッ!! も、申し訳ございません…どうかお教えいただけないでしょうか?」


クビ。

その言葉が魔王の配下の魔物達を震え上がらせる程に力を秘めた言葉だった。

ある者は気絶をし、ある者はこれからの人生に絶望し、ある者は生きる意味を無くした。

そんな絶望的な言葉が魔王の口からいとも簡単に出てくる。

その事に魔物はとても恐怖した。

その異常な怯えぶりに魔王も流石にいじめ過ぎたかと思い、簡単に説明をする事にする。


「今我らがやっている事とは何だ?」


「はい、我々はただいま勇者と交戦中であります。」


「その通りだ。そして、奴らの力を見たであろう? 一筋縄では奴らは倒せん…ならば、こちらも不必要な者をクビにし、更なる強者を呼ぶしかあるまい。」


「そうでございますが…それでもあの者がクビになる理由は…」


「気が早い。我はまだ本筋を話しておらぬ。」


「申し訳ありません…」


魔物は少しせっかちに聞きすぎた自分を内心で叱りつけ、魔王の言葉に耳を傾ける。


「つまりだ。我らの戦いとは何だ?」


「それはコンビニを両陣で開き、決算時にどちらが売れ行きがよいかという勝負…」


魔物はつい3ヶ月前にあった出来事を思い出しながら答える。

今思い出しても微妙に馬鹿馬鹿しいと思うのは自分だけだろうかと内心で呟く。


「その通りだ。」


魔王は魔物の答えを聞き、鋭い歯がギラリと見える程に口元を歪ませると、更に魔物に質問する。


「では、我らが営む店の名前は何だ?」


「………ファミリーマオウでございます。」


「その通りだ!!」


魔物の答えを聞き、魔王は高笑いをする。

そして、話を続ける。


「我らはこれより世界を制する手始めとしてこのファミリーマオウを開いた…!! しかしだ。我ら魔物はこの様な事をした事がない…聞く所によれば人間達は早ければ12歳からバイトというものでこの様な仕事をする者もおるそうではないか…」


「馬鹿な…12歳でバイト…!? できるはずが…そんなのはったりに決まってますよね魔王様!?」


「いや、事実だ…」


「!?」


魔物達の中で電流が走る。

人間とはそこまで凄い生き物だったのかと魔物全員が驚く。

魔物達は12歳の頃は何をしていたかと聞かれれば普通に武器を振り回し、戦闘訓練を行っていた。

それが人間はどうだ。

12歳で当然バイトをしない人もいるが、家庭が苦しくどうしてもしなければならない者はバイトをするのだと魔王は言う。

その言葉に魔物達は感動の涙を流した。

自分達ならば、絶対に働かない。

そう断言できるからだ。


「………くっ…凄いんですね…人間って…私達は足元にも及びません…」


「待て、その言葉は勇者に屈するという意味か?」


魔物の1人の言葉を聞き、魔王は険しい顔をする。

魔物は慌てて訂正する。


「い、いえ、違いますとも!」


「ならば良いが…裏切り者はわかっておるな?」


魔王の言葉に全員が堅唾を飲む。

背中からは冷や汗がだらだらと垂れ、威圧感だけで心臓を鷲掴みにされた気分に魔物達は陥る。


「………すまぬな。この様に暴力的では営業では何も役にはたたぬな…皆のものすまぬ」


魔王が頭を下げて謝るので、今度は逆に恐縮しまくって、魔物達はもう1度心臓を鷲掴みにされた気分になり、慌てふためく。


「すまぬな、話が逸れた。それで? 我がこの戦いを挑んだ理由とは何だ?」


「はい。それは魔王様が仲間の魔物達が勇者に殺されていくことに頭を悩ませていたからでございます…そして、遂に魔王様の城へと乗り込んできた時に魔王様は何とか勇者一行を迎撃することができました…それでもしかし、被害はかなり甚大でとても目を向けれる様なものではございませんでした…」


魔物の1人が辛そうに答えるので、魔王はもうよいと制し、少し後ろに下がらせる。


「先程あやつに言ってもらった通りだ。最早、今の時代に戦争するなどばかげているのだ。それならば人間側も魔物側も被害の出ない戦い方をすればよいのだ。そして、この戦い…」


魔王は区切りをつけると、更に話を続ける。


「コンビニの3月の決算時の売れ行きでどちらが上にゆけるか…これは言うなれば勇者との真剣勝負なのだ。これに勝つためには少しでも売れ行きは伸ばすに限る。」


魔王の言葉に小部屋にいる魔物達は全員頷く。

ここまではきちんと全員が理解できるらしい。


「これを見よ。」


魔王は薄汚れたノートを魔王の目の前にあるデスクへと叩きつける。

1人の魔物がそれを見る。

そして、言葉を失った。


「………!! まさか…我々が…赤字?」


「それが現実だ。」


魔物は怯えた。

確かに最近客足が減ってきていた。

しかし、だからと言ってここまで酷い大赤字になるものなのだろうか?

一応は客足が全くないという訳でもないのだ。


「我がこのコンビニを立ち上げた時…そして、商品入荷の時も我の財産でどうにかした。しかしだ。実際に勇者と競っているのは我の私財を含まないこの店の売れ行きだけでの真剣勝負だ。更に付け加えるならば、自演をすれば即刻見張りをしている神からの無条件天罰を食らう。だからこそ、ズルができない分我々は頑張らなければならないのだ…。」


「ですが…何度も申します様に先程クビになさった魔物はきちんとノルマも達成しておりました…それでもクビになさる理由とは一体…?」


魔物が恐る恐る聞くと、魔王は答えた。


「顔だ。」


「え?」


魔王は簡単に答えてくれた。

しかし回答が簡単過ぎて、逆に理解できない。

魔物はクビにされないか心配しながら質問を続ける。


「顔ですか?」


「顔だ。フェイス。」


「……?」


やはり先程の回答となんら変わらない。

どうやら魔王は本気で顔でクビにしたらしい。

全く意味のわからない魔物は更に質問を続ける。


「ええと…何故顔でクビになさったのでしょうか?」


「あいつの顔は子供達を震え上がらせる顔だ。おまけに何だあの名前は!! インプだと…!? 若奥様方がこの店に訪れた時に首からかけている店員カードに書いてあるインプという名前を見ただけで破廉恥な…と言いながら帰ってしまったんだぞ!! 奴は駄目だ!! 奴がいるだけで客足は途絶えるのだ。それならば切った方が良いのだ!!」


「………」


魔物はただ1つこう思った。


(俺将来危ないかも…)


魔物の心の中など知る由もない魔王は更に話を続ける。


「さて、無駄話はもうよかろう。そろそろこの大赤字を何とかするぞ。」


「………とおっしゃってもどの様に…?」


「ふん。まずはこのコンビニの中をイメチェンするぞ。」


「な、何ですって…!?」


魔王の言葉に小部屋の中にいる魔物達はざわついた。


「バカな…この店内を変えると…!?」


「無理だ…魔王様と言えどもできるはずが…そもそも人間供と同じにするなど…無理に決まっている…!!」


「いや待てお前ら…もしもイメチェンできれば一気に店の売り上げ急上昇だぞ…?」


「無理だ…魔王様と言えどもできるはずが…そもそも人間供と同じにするなど…無理に決まっている…!!」


「落ち着け! 我らは魔王様の配下、この程度で根をあげるなど情けないぞ!!」


「無理だ…魔王様と言えどもできるはずが…そもそも人間供と同じにするなど…無理に決まっている…!!」


「最初は違う奴が同じ事言ってんのかと思ったら…さっきからお前は同じ事ばっかり何回も繰り返すな!!」


と魔物達は好き勝手に話す。

魔王はそれをただじっと聞いていた。

下の者達の意見すらまともに聞かない独裁など意味がないと知っているからだ。

しかし、先程同じ言葉を3回繰り返したバカはクビにするために書類にチェックマークを入れる。


「皆、もうよいか?」


魔王の言葉にその場にいる全員がしんと黙る。


「す、すみません魔王様…(わたくし)達だけで勝手に…」


1人の魔物が皆を代表して謝罪するが、魔物は片手を上げて制する。


「我らのこのコンビニのイメチェン作戦に反対をする者はいるか?」


「………」


魔物達は黙っていた。

それは魔王の言葉を信じるという現われだった。

魔王は満足げにニヤリと笑うと、イスから立ち上がる。


「では皆、出陣だ!!」


「…? 魔王様? 店のイメチェンをするのでは…?」


「ふ、まずは何をするにしても、前準備というものが必要であろう?」


「………!! という事は…!!」


「ああ…まずはお買い物だ。」


「ぃよっしゃあああああああああああああああ!!!!」


その部屋にいた魔物全員がそれぞれ喜びのポーズを取る。

そして、小部屋から1人の魔物が出て行く。


「おーいてめえら!! 魔王様からお買い物要請出たぞ!! 動ける者は準備しろ!! さっさとしねえと一番最後の奴は置いていくぞ!!」


「何!?」


「本当か!?」


「くそ…こうしちゃいらんねえ!!」


コンビニ内でレジ内でボーっと立っていた魔物と床掃除をしていた魔物達が一斉に1人の魔物の号令に過敏に反応する。

そして、号令を出したコンビニ副店長がニヤリと笑うと


「ああ、本当だとも…しかも、魔王様も連れて来られるぞ!!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


重臣達で会議をしている間に店番をしていた連中全員が吼え叫ぶ。

ある者は床掃除のために持っていたモップを振り回し、ある者はレジから慌てて出ようとしたためにずっこけ、ある者は狭い店内の中で走り回り、ある者は勢い余り魔法を飛び出す。

しかし、その行為も魔王が奥の小部屋から出てきた瞬間にぴたりとやめる。


「………調子の良いバカ者供めが…」


魔王がそう微笑しながら呟くと、全員が馬鹿笑いする。


「さて、余興はこれまでだ。今度こそ勇者をこの勝負で完膚なきまでに捻り潰すべく…我らの世界を制するために…いざ出陣だ!!!!」


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


と魔王の言葉に魔物達は一斉に叫ぶ。

がしかし、


「コラああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


「…ひっ!」


魔王や魔物達の高揚感は一気に弾き飛ばされる。


「あんたら…また騒いでるん?」


「い、いえ、そ、その…あ、まままま全く騒いでないですよ? はい。」


一人の魔物がそう言うと、魔王も含める全員の魔物が全力で頷く。

しかし


「嘘言うなや!! ウチ知っとるんやで!? 今からあんたらはどっか行くからテンションがアホみたいに上がっとるんやろ!! そうやろ!!」


魔王含める全員の魔物は店内の入り口からギロリとこちらを睨んでくる関西弁のおばちゃんにへこへこと頭を下げる。

魔王たちは実はこの人間界に来てコンビニを開いてから1日目にして、早速決定的なミスを犯していたことに気づく程にめんどくさい問題が発生していた。

そうそれは…


「もうええわ! あんたらちょっと座り? あんたらちょっと人間やないから言うて調子乗っとるんとちゃうか!? ウチが今からその根性叩きなおしたるからな!!」


コンビニを建てた場所がこのおばちゃんの家の直ぐ隣だった事だ。

このおばちゃんは何故か魔王達を見ても全く臆せずに逆に文句も普通に言える程に図太い神経を持っており、コンビニ開店当日は、何故自分に断りを入れないのかと開店1日目にして、いきなり店を強制的に閉めろと言われて、1日ずっとお説教されていたという何とも複雑な過去を魔王達は持っている。

そして、今回もまた魔王含む魔物達はこのおばちゃんに引きづられておばちゃんの家に連行されて、そのまま朝までお説教コースをご堪能したのだった。

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