その出会いは暴力的だった
※全二十話の短編、初日は三話まで投稿します。以降は毎日22時に一話ずつ投稿予定。
──下らない人生だった。
ルドウィグはそう、自らの人生を振り返る。
人より優れた容姿を持ち、人形のようだとか、女性にも見える美の化身だとか散々っぱらに言われたが、こうして後継者から外れれば見向きもされなくなる。貴族社会とはまったく、風見鶏のように吹かれっぱなしの家が多い。
薄暗い自室、窓枠には鉄格子が嵌り、微かな陽光を妨げている光景はまるで牢獄のようだ。
もっとも、格子が無かろうとも、一人で外へ出る事すら出来ない身体だ。
窓際の椅子に座り、テーブルの上にあった薬を口に放り込み、苦みなど感じる間もなく酒で流し込む。息を吐いて、まだ死んではいない現状に、陰鬱な視線で机に突っ伏す。
下らない人生だった、もう一度、胸中で吐き捨てる。
欠陥だらけの身体は言うことを効かず、筋力の衰えた腕は下肢を支える事も難しい。一人で移動することも、貴族のように社交に精を出すことすら出来ず、さりとて外に出たところで父母が自分を出来損ないだと罵倒するだけだろう。それに、嫌なことを思い出す。
酒の酩酊と薬の靄が頭の中で混じり合い、辛い現実を偽物のように塗り替えてくれるのを感じる。自分が自分を見失い、今が何時で、ここがどこかも忘れてしまえる。一欠片の幸福も感じられない人生なら、この緩やかな破滅に脳を溶かしても構わないだろう、と、何時ものように嘲笑した。
結局自分は、誰かに顧みられる価値すらない人間だった。この小さな部屋で死して朽ちて消えるべき程度の、生まれるべきではなかった人間だったのだ。
あの鉄格子さえ無ければ、すぐにでも終われるだろうに。
そう、グルグルと回る思考の中で、再び酒瓶を手にした時、
──ドゴォォンッ!!!
と、扉が轟音を立てながら木っ端微塵に吹き飛んだ。
バラバラと木屑が頬を掠めて雨のように降り注ぐ中、あまりの驚きに椅子から転げ落ちたルドウィグは、煙越しにその珍獣を眼にした。
一歩一歩、足を踏み出し、悠々と姿を表すのは、長い黒髪を頭頂部で結った、若い女。
こちらを睥睨するかのような赤い瞳を向けるそいつは、挑戦的にニヤリと笑い、宣ったのだ。
「ハロー、新しい旦那様。花嫁が迎えに来てやったわよ」
……これは、若きゼルツ辺境伯である少女レオノーラと、引き籠もりの年上男性であるルドウィグが、最愛の伴侶同士となるまでの物語である。




