表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

コミュ障OL、会社に向かう

………♪……♪…♪


平日朝6時にいつも流れる聞き慣れたメロディ。

目は閉じたまま枕元のスマホを探し当て、画面をスワイプする。

ブルーライトを強制的に浴びて薄目を開け、今日も今日とて深いため息を吐く。




私、多田杏奈(ただあんな)はどこにでもいる普通のOL。

大学を卒業し、そのまま第30志望あたりの会社に就職した。

社会人歴は3年目に突入したが、特に成果も上げていないし成長もしていない。


同僚とは仲を深めることもなく、業務以外の会話は「おはようございます」「お疲れ様でした」の2言のみ。

あと35年以上働き続けなければいけないという事実に日々絶望している。



しかし生きるためには働かねばならない。

温い布団からどうにか抜け出し、うがいをして喉を潤すべく水を飲む。


そして間髪入れずに冷たい水で顔を洗う。

ぬるま湯で洗った方が肌に良いと聞くがそんな時間は無い。

少しでも睡眠時間を長く確保するため、朝の身支度は20分と決めている。



オールインワン化粧品で気休め程度に肌に潤いを与え、日焼け止め兼化粧下地を顔全体に塗る。

ムラや摩擦は気にしない。


どうせ眼鏡&マスクで顔の8割を覆うので、残り2割の中心となる眉毛だけ最低限ざっと書く。

髪の毛は結ぶだけ。

整える時間を省くために前髪は作っていない。



美意識高い系女子に知られたら悲鳴を上げられそうな工程で身支度を済ませ、台所に大量にストックしているバランス栄養食を1つ抜き出す。


お行儀良く椅子に座って食べる時間はもちろんないので、最寄り駅に向かうまでの道で歩きながら胃におさめるのだ。


センス皆無の民にはありがたいスーツを着、ストッキングだけ破れないよう慎重に履く。

昨日から玄関に置きっぱなしのカバンを持ち、薄汚れた黒いヒールに足を通して家を出た。



最寄り駅までは歩いて20分。

安月給の身では駅近と築浅を両立できず、圧倒的インドア派として家の綺麗さが優先された。


早足で歩きながらこそこそとバランス栄養食を食べ、駅に着く頃には額に汗がじんわりと滲んでいた。

まだ4月にも関わらず、最高気温は25℃を超えるらしい。春は消えたのだろうか。



駅のホームでイヤホンをつけ、電車に乗り込む。

満員電車のストレスを少しでも減らすべく、お気に入りのアニソンを流し世界観に浸る。


アニメは良い。

フィクションの世界と魅力的な登場人物たちが、虚しい現実を忘れさせてくれる。

そんな素晴らしいアニメを作り上げているのは同じく社会人戦士たちだと考えると少し複雑な心境になるが…。



2度の乗り換えをこなし、8時過ぎに我が社へとたどり着いた。

始業は8時半だが、15分前には業務開始していなければならないという暗黙の了解があるため、既に社員の半数以上が出社していた。

悪しき風習である。


朝起きてから初めて発するか細い掠れた声で、周りの社員に挨拶をする。

同じくか細い声でちらほらと挨拶が返ってくる。

本日の業務外会話、半分終了。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ