表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海姫  作者: 乱 乱太郎
9/14

9話 巫女かもしれない老婆

 あれから30分ほど歩かされ、たどり着いたのは古ぼけた神社だった。


 こんな森の最奥とも言える場所にあるなんて、どんな神を祀っているのか気になって先輩に聞いてみたが「ん?私も知んない」と返ってきた。鳥居の額束(がくづか)――所謂、鳥居にある、神社の名が書かれている板――も、苔が生えて掠れており、解読も出来ない状態になっている。


「先輩は、俺をここに連れてきたかったんですか?」


「……分からない、私にも。何でだろうねっ」


 先輩は晴れやかで、それでも寂しそうに笑った。


 俺と先輩は、鳥居をくぐり、境内に入った。ここの神社で何の神様を祀っているのかを調査するために。調査と言っても、そんな大した事は出来ない。何か、境内にあるヒントを探すぐらいしか出来ることはない。


 そう思い、探してみても、特に何かが見つかることはなかった。


 何と言っても、境内にあるのは、ボロボロの小屋(はいでん)――簡単に言うと、本殿を拝むための場所――だけ。これでは見つかるものも見つからない。


 ボロボロの拝殿の扉は壊れており、何か書物――恐らく和綴じ本――らしきものが転がっていた。俺と先輩は好奇心を抑えられず、中に入ることにした。


 ギシギシと、歩くたびに鳴るほど木は古くなっている。すると古ぼけた巫女服のようなものを纏った老婆が「くぅらあ!!!」と、活を入られたと勘違いをするほどの声量で叫んだ。

 俺と先輩は身構えたが、この神社の管理人かなにかなのだろうと解釈し、素直に謝った。


 老婆は案外悪い人ではないらしく、許してくれた。


「して、嬢ちゃんとそこの坊主、名はなんと申す?」


 神社の階段を降りようとしたとき、いかにもババアと言った口調で話しかけてきた。


「私は入方 小夜(いりがた さよ)。そこの彼は朝明 晨(あさけ しん)と申します」


 すると巫女姿の婆さんは「朝明に入方……」と呟き、嫌な笑顔を作った。口角が軽く吊り上がり、何かおかしなことでもあったのか、眉も歪んでいる。

「ひっひっひっひっ……」と老婆は魔女のように笑いながら俺と先輩の肩にぽんと手を置き「頑張りな」と震えた声で一言だけ言った。


 その後は「ほらっ!帰った帰った!!」と俺と先輩を神社から追い出した。


「あの婆さん、何だったんですかね」


「……昔から仕えてる巫女さんじゃない?」


 俺の疑問に先輩はそう答えたが、俺は「そんなまさか!」と否定の言葉で返した。


「案外そうかもしれないよ?」


「ふーん………」とため息のようなものを返答として先輩に返した。


「……それで―――あそこの神社は何を、何の神様を祀ってたんですかね?」


「そうだね……―――海の神様とかだったりしてね」と先輩の冗談半分本音半分といった言い方をした。


「…ほら、海姫伝説ってこの地方であるじゃない?おとぎ話として語り継がれてる、本当に起こったことを元にしてる話」


 海姫伝説―――という単語を聞いた瞬間、俺は少し身体に動揺が表れ、肩が揺れてしまった。


「ぇ…えぇ。聞いたことはあります」


「私、あの話に出てくる"海の怒り"って、海を神様として扱ってたって意味だと思うんだ」


 そう先輩が言ったとき、図書館で調べていたときを思い出した。

 なるほど、神様として扱っていたなんて考え方があったのか。……でもなんでその"巫女"なんかを、余所者(よそもの)なんかに任せる?尚更分からない。


「じゃあ、あそこの神社は、話に出てくる"海"を祀っているかもしれない、ってことですか?」


と俺が言うと、先輩は「そうなるね」と簡単に答えた。


「……帰ろうか」


 先輩は宝石のようにキラキラと光る微笑みをこちらに向け、そう言った後、俺の手を引いていった。



 そのまま俺と先輩は学校へと1時間30分ほどかけて戻り、危惧していた通り、担任と生活指導に叱られた後、日常へと戻っていった。



―――放課後 写真部の部室にて


「こっぴどく叱られましたね……」


「……そだね」


 俺が言うと、先輩は悪びれる様子もなく、ペラペラと雜誌をめくりながら平然と言ってのけた。先輩のそういうところは痺れもしないし、憧れもしない。というより出来ない。


「1時間半ですよ……?」


「……うーん」


 こちらを見もせず、適当に答えているようにも思えるその返事は、少し俺を苛つかせた。

 俺はため息を付いたが、先輩との対話は諦めていない。


「先輩、冬休みが近いからってこんなこと……」


「……まあいいじゃない。いい思い出になったでしょ?二年の美人の先輩と、学校から脱走して山奥へ!なんて浪漫(ロマン)が溢れ出てお釣りが返ってくるよ」


 いい思い出になったでしょ?という先輩の気持ちが、溢れ出、顔に表れていた。


 何ていうか、こう、男としての浪漫(ロマン)がないよな……。まあ、先輩といられるなら別にいいんだけど。


「……まあ、はい」と、納得いかないといった気持ちが表れたのか、俺は不貞腐れたような声でそう言った。

読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ