4話 崖から落ちるようにピンチで
―――中間試験まで後一週間
「なーんにもしてないな…」
誰もいない――何故かテスト期間でも、部活動ができる――写真部の部室で、反応を待っているように呟く。いやでも後一週間あるし!と開き直りかけるが、それすらも失敗してしまう。
俺は成績が良い方ではない。学年で100人いる中の、53番目ぐらい。53番目というと、良くもなく、かと言って悪いと言われればまぁ。程度の成績だ。
毎回のテストの目標は、320点。基本的に俺が目標に届くことはない。いつも大体305点ぐらい。ギリギリの300点台をよく取っている。
留年する訳では無いが、進学には少し困る程度の成績。所謂中途半端と言うやつである。
得意教科は、国語と理科。大体70点台を毎回キープしている。苦手教科は、残り全部。40点から60点台。
うちの高校は、40点未満が確か補習対象で、それになったことはない。まだ。運が悪ければ、といった具合だ。
「こんにちはー」
ガラガラと、古い扉を開け、入ってきたのは写真部唯一の二年生。入方 小夜先輩。
普段は先輩と呼び、俺が慕っている女性だ。
そういえば、先輩の成績を聞いたことがない。どんな具合なんだろうか。文武両道そうな感じがする。
「先輩って成績どんな感じですか?」
「なんだい急に」
「いえ別に」と俺が適当な返しをすると、「そうだね〜。大体中の上ってとこかな」と先輩は返した。
40位ぐらいだろうか。思っていたのとちょっと違うな…
「失礼な」
急に先輩は不機嫌そうな顔でそう言った。「ど、どうしたんすか…?」と俺は動揺しながら言う。
「今、思っていたのと違うな…って思ったろ!」
「いいえ?」
俺はもちろん否定する。肯定なんてした暁には自分の身がどうなっていることか………俺は自分が一番大切だ。
「思ったねぇ?」魔女のような口ぶりで話している。俺をとても力強く睨みつけながら。怖い。
やはり俺は「…いいえ?」としらを切る。美人である上に意地悪だなんて、何と言うか、なんだか……ずるい。
「ふんっ」と言い、先輩はふんぞり返った。今ので機嫌が悪くなったのか、そっぽを向いている。
俺はそんなことは気にせずに、なんとも言えない気まずさをかき消すように、雑誌を読み続ける。パラパラパラとめくりながら、先輩の様子を伺う。
………結局気にしているじゃないか。
写真部は部員が俺含めて二人だし、嫌われたらこれから毎日しんどい思いをするだろう。つまりは未来のためだ。
と無理くり都合のよい理由を作り出す。
「機嫌なおしてくださいよ〜先輩〜!」
後生だからと言わんばかりのテンションで先輩の方に前屈みになる。
すると先輩は「……………」と、喋らないながらも、こちらをチラッと片目だけで見ている。目で、本当かい?と言っているようだ。
「ホントにお願いですって〜!」
涙目ながらも、俺は先輩に訴えかけるのを止めない。許してもらえるまでだ。こういうことに関しては俺は慣れている。子供の頃から人のことよく怒らせてたし……
それはともかく、謝ることに関しては、人並み以上。周りの人より長けていると言っていいだろう。
「………いいよ、もう。分かった。許すよ」
俺の努力が実を結んだのか、はたまた、俺の謝罪、誠意が伝わったようだ。先輩は両手をバンザイして、諦めましたと言いそうな格好だ。
「……で?こんなこと聞いて何をしようとしてたの?」
「勉強教えてもらおうかと…」
「なるほど」と先輩は言い、少し迷う素振りを見せながらも、了承してくれた。
「でも、先輩、一年の内容なんて覚えてます?」
「当たり前だろ〜?なんたって、私はもう受験を考え始める時期なんだから。復習ぐらいしてるよ」
その言葉に俺は安心しつつ、ある提案をする。
「じゃあ、放課後にここで勉強会、じゃないですけど、ちょっと見てもらってもいいですか?」
すると先輩は「いいよ」と微笑みながらそう答えた。
そんなこんなで、俺と先輩は、放課後の部室で、勉強することとなったのだった。
案外先輩は、勉強ができないわけではなく――公式なんかも覚えているし――ただ、やる気がないというか、なんというか。やれば出来る人なんだろうな、とは思った。
何気に教えるのもうまいし。気だるげな古典教師とか向いてるんじゃなかろうか。
それにしても、気だるげで美人な女の古典教師…………
イカンイカン。
その後も、勉強は続き、俺は分からないところを先輩に教えてもらいながら、課題等を進めていった。
結果、テストの順位は6位ほど上がった、47位となった。苦手な教科も教えてもらったからか、点数が前よりも上がっている。
俺の株価が上がるってもんだ。何いってんだ俺。
……先輩さまさまだな。俺は改めてそう思った。
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