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風に溶けた詩  作者: karon
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「お前はいったい何をやっている」

 メイフェザーはいら立ちを隠さず女をなじる。

「私のせいじゃないわよ、あの小娘が悪いのよ」

 女は唇を尖らせた。

 あの小娘と言われて首をかしげる。

「どれだ?」

「真ん中なんじゃないの、この家の人間は娘を私たちに近づけようとしないけれど」

 おん名は最初にメアリーに目を付けた。明らかに田舎の暮らしに飽き飽きした様子にくみしやすしと考えたのだ。

 街の話をすれば釣れると考えたのだがメアリーはとにかく扱いにくかった。

 こちらが吊り上げようと察したのか明らかに聞けそうにない無理難題まで繰り出してきた。

 しかしそれでも根気よく聞きだしたところメアリーは父親の仕事に何の興味も持っていないということが分かっただけだ。

 そしてメイフェザーがバドコックを外に連れ出してその間に書斎を探るという仕事も最初はバドコック夫人によるおしゃべりという名の尋問を受けた。

 そしてそれにずいぶんと時間を取られようやく書斎にというところでアリスと出くわしたのだ。

 アリスはメアリーより素直で質が悪かった。

 アリスは正直に自分の見た儘をメイドに話し、メイドたちはあっさりとそれを信じ女に対する監視が強まった。

「だったらお前バドコックをひきつけろ、そうしたら私が書斎を調べる」

 女は顔をしかめた。

 バドコック夫人は完全に女を疑いの目で見ている。

 うかつに近づこうとすればどれほどの騒ぎになるかと。

 まったく不本意だ、誰があんなつまらない男が欲しいものか。質素に暮らしているなら金を持っているかと思えばそれほど貯めこんでいないようだ。

 あんなつまらない男をたぶらかせとかあまりに情けない。

「いいからやれ」

メイフェザーは無常に命じる。

 この男は欲しいと思ったものは手に入れなければ気が済まない。

 バドコックが持っているものが何なのかわからない、だがそれを手に入れるまでここを動くつもりがないことはうかがい知れた。

 もううんざりだ。

 見るものはただただ畑と森だけ。

 買い物もままならないし出てくる食べ物もまずくはないが単調だ。

 そのうえかわいげのない子供の相手もしなければならない。さらに退屈な男の相手までしなければならない。

 メイフェザーは女をつまらなそうに見た。

 欲しいものを手に入れた後はこの男はただ死蔵するだけだ。

 女の伏せた目の下で反抗的な光が瞬いていることに気づかなかった。


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