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花の乙女  作者: 姫柊ほの
19/19

桃の乙女編 17

 「はぁ~~・・・。」


 漣は大きなため息をついた。

 自意識過剰ではないつもりだが、自分目当てに来ている女生徒が居ることは気付いていた。

 だから、普段は西館の出入りは人の多いところではなく、人目に付かない場所を選んでいたほどだ。

 だが、今日は美櫻を図書室まで送っていったため、多くの人(特に女子生徒)から注目を集めてしまった。

 もともとそういう好奇の目に晒されるのは苦手だ。

 他人と、特に女性と関わるなど面倒でしかない。

 だが、美櫻といると、何故かもう少し話をしてみたいと思ってしまった。


 「ちょっとした気の迷いだ。」


 そう言ってはみるものの、校門付近での騒動の場に出てきた時から不思議な「気」を纏っていたので気になっていた。


 「さて・・・、どうしたものか・・・。」


 漣は後方の気配を探ると、後を付けてくる女生徒が多数いる。

 自分の容姿が整っているという自覚はある。

 だが、こうも注目の的にされてしまえば煩わしいとさえ思ってしまう。

 全く気にも留まらないほどの存在ではあるのだが、ストーカーのごとくずっと付け纏われるのは面倒だ。

 漣は来た道を戻り、西館の裏手に向かった。

 女生徒達は、やはり後を付けてくる。

 漣は校舎の裏手へと続く角を曲がった。

 人気が無い場所なので、女生徒達はそっと様子を伺うように覗いてみるが、そこに漣の姿は無かった。


 「もぅ~! また居なくなった!!」

「いつもこの辺りで姿が消えるよね?」

「抜け道でもあるのかしら?」


 女生徒達は付近を探ってはみるが、どこにもそれらしき痕跡はない。

 毎度毎度煙に巻かれるのはモヤモヤするが、逆に「次こそ絶対に行方を突き止める。」と盛り上がって引き上げていった。


 漣はその様子を、西館の屋上から見ていた。

 自身の持つ能力で屋上まで跳躍した後、気配を消し、様子を伺っていたのだ。


 (毎度ながら、騒がしいものだ・・・。)


 漣自身、注目を集めたいわけじゃない。

 こうして姿を現すたび、騒ぎになるのも辟易としてる。


 (そういえば・・・。)


 ふと、漣は美櫻を思い浮かべた。

 自分を前にしても騒がない異性は親や近くにいる者以外は初めてだった。

 普段から漣は他人に興味がない。

 自分と一緒にいることで、女生徒の視線を集めたい輩や、少しでも近づいて接点を持ちたいと無理矢理寄ってくる異性の姦しい姿しか見たことがなかった。

 だが、美櫻だけは自分を前にしても普段と変わらない態度を見せているように見えた。


 (まさか・・・、この俺が興味を・・・?)


 他人に興味を持たない漣が、自分でも驚いた。

 こんなことは今まで無かった。

 だが、漣を前にしても変わらない彼女の凜とした姿は、どこか不思議で魅力的な雰囲気を醸し出しているように感じる。


(あの(騒ぎ)時、「乙女」ではないと言っていたよな? ならは「魅了」が使える訳ない筈だし、そもそも俺に生半可な「魅了」を使っても効く筈などない・・・。)


 「花の乙女」でもなくとも、漣に対し猛アピールしてくる女子大生も多数いた。

 最初は丁寧に断っていたが、あまりに多くなってきたので、姿を隠す術を覚えた。

 と言っても、今回のように自身の能力を使い、離れた場所に跳ぶだけだが、それでもストーカーごとき付き纏う輩に対しては、かなり役に立つ。

 そんな事を考えながら、ふと眼下を見下ろすと、さっき図書室の前まで送っていったばかりの美櫻が、朝の騒ぎの中心にいた「乙女」に腕を絡め取られながら東館に向かっている姿が見えた。


(そう言えば、あの「乙女」とは幼馴染みだと言っていたな・・・。)


 美櫻にこの後起こり得ることはなんとなく予想できる。

 普段なら気にすることなどないのだが、少し引っ掛かる。

 気のせいだと自分に言い聞かせながら、漣は建物の端に足を掛け、そのまま少しジャンプするように屋上から飛び降りる仕草をしたように見えたが、そのまま忽然とその姿を消した。


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