表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フォアゲットレイン  作者: 火金音
1/1

出会い

日光に照らされて金色の光を反射しているバターののったトーストを焼く。

私の毎日の日課、というか朝ご飯はいつもそれしかない。

せわしなく動く私の体には、片手で食べられるこれが丁度いいのだ。

口に咥えたトーストを、器用に食べながら駅へ足を進める。

「はあっ、はあっ、間に合った…!」

駆け込み乗車をしてしまったようだ。

はあ、疲れた。

今日は私以外誰も乗っていない。

電車を独り占めできる贅沢感と優越感、乗れたという安堵、目的地までの長い道のりを教える電光板。

そういえば昨日はネットサーフィンしすぎて寝不足だったんだ…。

「7時30分だから…30分は眠れるね。」

30分ほどでこの電車は、1周回った上で戻ってくる。

タイマーを20分から5分おきに設定して、私は睡魔へと体を委ねた。






タイマーの音がする。

ゆっくりと目を開けてタイマーを止める。

なんの変哲もない操作、行動だが、非現実的なことが紛れ込んでいた。

時計を見ると、寝始めたときの時間と変わらない、スマホが言うには7時30分49秒ちょうどで、まるで壊れた時計のように止まっている。

スマホが壊れているだけだ、そうに違いない。外の景色を見てみよう。

「えっ…嘘…」

左から右に流れたはずの景色が、また左からやってくる。

がたん、がたん。

電車の揺れが、夢じゃないぞと訴える。

一人しか乗っていない車両が、不気味さと寂しさを醸し出す。

一人だけの「永遠」に恐怖を覚えた私は、他に誰かいないか、と、後ろの車両に向けて走る。

最終車両まで走る。

誰もいない。

「なら運転手に…!」

運転車両まで走る。

「…そんな…」

運転車両には何もいなかった。

呆然と立ち尽くす私の目の前を、同じ景色が何回も通り過ぎた。


しばらく席に座って考える。

この状況に陥ってもう1時間ほど過ぎただろうかというところで、一つのアイデアが思いついた。

そうだ、寝てこの状況に陥ったんだ。

もう一度寝ればこの状況が治るかもしれない。

私は起きた時に戻っていることを願って、静かに目を閉じた。








目を開けると、そこは私の家のベッドの上だった。

時計を見ると、7時5分。

夢だったのだろうか。

朝の支度をして、バタートーストを咥えて、鞄を肩にかけて、駅に走る。

電車に乗り込む。

また車両の中には私一人。

時計を見る。7時29分。

まずい、あんな悪夢を見たから寝不足なのかも。

眠気が…んまあ、30分くらいは寝れるな…



目を覚ます。

夢の中と同じ光景だ。

後ろ、前、どの車両にも人はいない。

運転席にも。

夢じゃなかったんだ。

嗅いだ匂い、見られる変わらない景色。

私の驚いたまま固まった顔がガラスに反射する。


どうしたらこの空間から出られるか考える。

がたん、がたん。

そうだ、夢の中だと、寝ればもとに戻る。

目覚めれば元の時空であると願い、再び眠りについた。


目を開けると、部屋の天井が見えた。よかった。とりあえず戻ってこれた。

うるさく鳴るスマホのタイマーを止める。

いつもどおり、パンを口に咥えながら、長い髪を、鏡を見ながらとかす。

そこで私は気づき、疑問が頭に上った。


私は7時30分に出発するあの電車に乗るからではないのか?


では、30分発でない電車に乗ったらどうなる?

他の人と一緒に乗ったら、眠ったらどうなる?

学校に行かなかったらどうなる?

電車の他の交通手段で行ったらどうなる?

眠らなかったらどうなる?

私はいつもより早く出て、歩いていくことにした。電車で行って1周目で降りる場合10分ほど。歩きで30分ほどだ。

…意外にも、普通についてしまった。

普通に学校が始まり、普通に終わる。

友達はいなく、無口なため誰とも話さなかったけど。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ