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Bloody bullet ー血塗れし弾丸ー  作者: なのはな
6/6

狙撃数5弾目

ごめんなさい!時間がかかりました!!それでは本編へ、どうぞ!!!

「ん、ようつぼみ。おかえり」



「……ただいま、姉さん」





 心なしか表情が暗い蕾。それに対し、姉の翠は頬をだらしなく緩め、明るい様子だ。





「……何? ガチャでいいものでも当てた?」




「んあ? __ああ、そうなんだ。課金一万でこの収穫!! いやあ、なかなかにいい方で」



「そんなこと言って! 姉さんはまた、『これも任務の一環なんだ!』とか、言い張るんでしょうけど、銀行の貯金は家族共通なのよ。無闇やたらに手を出さないで」



「冷たいなァ……」






 翠はそう口を尖らし、手元の携帯を見つめた。








「それに、こういうのも、立派な仕事なんだぜ?」




「嘘ばっかり。それ、ただのスマホゲームじゃない」




「“ただの(・・・)“じゃ、ねえぜ。よく見てな。ちょうど今頃だから」








 翠はそう蕾の目の前に画面を突き出した。蕾は仕方なさそうに姉が示す場所を見つめる。








「何よ、単なるゲーム画面じゃ__ッ、!?」








 蕾の瑠璃色の瞳の中で、画面に『交換成立いたしました』というメッセージが浮かぶ。






「……なあに、これ。確か__FFOでいうところのトレード成立画面……?」



「ああ。そうだろうな」



「でも、これ……いつ!? 姉さん、いつこんな操作したの。少なくとも、私が帰った時には、それらしい操作はしていなかったはずだもの」



「甘いなあ。帰ってくる前にしていたかもしれないだろ」



「そんなことないわ!」






 蕾はそう声を荒げ、記憶を彷徨わせた。





「確か……最高でも、1分かかるかどうかってとこでしょう。アイテム選んで、トレード申請して、相手のイエス待って……イエスが来たら、それで成立。意外と時間はかかるものでしょうけど、交換の際は、大概相手もログイン中だし、それに……」





「コイツァ、ハッカーの風上にも置けねえよなあ」





「……なに?」




「あのなつぼみ。コイツは、スマホゲームとかで他人のアカウントを特定し、そこからアイテムやらチート並に強えキャラをぶんどっていくやつなんだ」









 蕾が「なっ……」と息を呑む。翠はそれに少し笑った。










「あ、やっぱしFFOでもそういうのはマナー違反なんだなァ。それでな、そんなんじゃあ、会社からしてみりゃあ、大きすぎる損害だろ? だからアタシに頼んだのさ。“毒をもって毒を制せよ“って、いうじゃねえか。あれと同じなんだよ。アタシは、サイバーに強いから、この任務を頼まれた。んーけど、ちょっとめんどいなァ」





「め……めんどいって、そんなこと言ったって、意味はないでしょ。というか、そうやって制するの? まさか姉さんもアカウント特定……とか?」




「ああ、したくはなかったがな」









 そう、翠はカラカラと笑う。そして、長々しく捲し上げた。









「そもそも、ハッキングするくらいなら、あっちもセキュリティはガッチガッチなわけだ。それの穴を見つけるのはな、すっげえめんどい。でも、できないわけじゃねえぜ? ほら、特定って、案外簡単だからよ。んでも、匿名だからな。そういうのって、めんどいよな、会社に守られてっから。一回、解除してくれって、頼んだんだけどな、『信用が足りない』だとよ。まあ、仕方ねぇよな。__で、信用も努力も足りない翠お姉さんは、もう才能でやるっきゃあないと、そう考えたわけですよ、お嬢さん」



「でも……でも、セキュリティ破りは、姉さんの大得意技じゃなかった?」



「あー……そういやそんなことも言ったっけなあ。でもな、そういうこともありつつ、やっぱり得意なのはゲームな訳よ」










 翠は、妹の前で恥ずかしがる様子もなく、言い切った。蕾はそれに大きく深いため息が出る。











「……それで、その自称プロゲーマーさんは、今回どんな報酬が出たの? お金とかがいいけれど、電子マネーとか言わないでね、難しいから」



「いんや電子マネーよ? 現金なんて、んなもんもらう意味すらねえし」













 マグカップを傾け、翠は躊躇う意味すらもない、とでもいうふうにそう言い放った。蕾は「うげ」と声をもらす。

 そんな妹に、姉は「そういえば」という前置きとともにカップのふちから淡い色合いの唇を離した。











「学校は、どうだったか? なんか変なこととか……あぁあと、ボロは出さなかっただろうな」



「ああ……ん、うまくやった。あ、あとね、友達もできたよ。ちょっと派手な子達。それと__勇気に、あったよ。うん」



「あァ? “勇気“だァ? お前なあ、そんな抽象的なこと言って、ほんとは友達ができた、それは自分の勇気のおかげだとかなんとか」



「違うよ! あのね……兄さんは、いないよね?」














 蕾は続きを言う前に、あたりをキョロキョロ見回す。翠はカラカラ笑った。













「ああ、いないぜ。……ああ、そういうことな。ほぉ、あの天下の美少女つぼみさんにもついに春がと」



「あ〜もう!! そうじゃないってば。いやそうだけど。あー違くて!」



「何が、どう違うんだよ」












 姉がニヤニヤと笑う。それを逃れることはできまいと、蕾は肩を落とした。











「あ……あのね、前の幼馴染に、“ゆっきー“って子、いたでしょ?」



「ああいたなそんなやつ。__あいつも命拾いだよなァ。今そんなことしたら、明らかに賢に殺されるだろうに」



「う……やっぱり、そうだよね」












 翠が「そーそー」と苦笑いを浮かべ__ギョッと目をいた。












「ま、まさかつぼみ。お前……」



「そ、そーなのっ。で、でもでも! 私、勇気に迷惑かけたくないし!! こここ、恋人どーしになんかなりたく」



「__そうか、よかったなあ」












 蕾はハッとして振り向いた。紺色の髪が宙を舞う。











「に……にいさ」


「俺の可愛い妹(蕾)がどこぞのクソ野郎の家になんか嫁いだら、俺、泣き寝入りしちゃうもん」











 蕾の夜空のような瞳の中で、蕾の兄、霧凪賢きりなぎけんは目を細め、にこにこ笑った。翠が、「このくそシスコン長男が」と毒づく。












「いやあ、びっくりしたなあ。つぼみが帰ってきたってんで、翠が言うから慌てて任務を終わらせてきたら……俺も浮かばれないなあ」



「ち、違うの。兄さん……!」



「違う? 何が違うんだい、俺の可愛い天使」













 紺色の髪を一房すくい、鼻で吸い込む。「いい匂いだ」などと呟けば、たちまち蕾の顔に嫌悪の表情が浮かんだ。












「あ……あのね、兄さん。私は」


「__蕾が誰かと付き合うというならば、その相手を殺そう」


「!」


「そして、交友関係も潰そう。この世には、同性愛というものがあるからね。女も男も、関係なくやるさ。大丈夫」


「__っ」


「そして、もう一生、外に出ないようにしよう。それが一番だ。それが最善……さあつぼみ、お兄ちゃんに『うん』とそう答えなさい」


「う……ううん、兄さん。私は」













 賢は鋭く目を細めた。










「相手は誰かな?」


「相手なんていないわ」


「友達の名前は?」


「私がそれを滑らせることは今後一切ありません」


「……つぼみ」


「な、なによ、にいさ」










 振り返ることもなく言った蕾の華奢な背中に抱きつくキモい兄、賢。蕾は小さく悲鳴を上げた。










「__俺な、知ってるんだよ。新しいクラスに、いるんだろう?」


「な……なんのこと」


「お前の初恋相手さ。あいつとはどうやらえにしを結んだようだが、それを断ち切らせてもらうために俺はあいつと接近する。もちろん、お前が自主的に切るのなら、それで構わないが」


「そ、そんな……こと」











 蕾の顔が硬直する。その姉、翠は賢の余裕面よゆうづらにスマホを投げた。










「きめえよ、テメェ。蕾はあんたの所有物じゃねえ。__わかんだろ」


「……痛いな、すい。もう少し、長男を労われ」


「優しい長男だったらな。お前は__尊敬できねえ」










 翠の、ほんのり薄い瑠璃色の瞳が、長男の水色の瞳を射抜く。長男・賢は、さして気にする風もなく、目を細めた。











「おかしいなぁ。尊敬できずとも、『最初に生まれた兄または姉を尊敬する、敬愛する』……これは霧凪うちの家訓だろう?」


「何言ってんだ。だったらオメェもアタシを尊敬し、敬愛しろ。最初に生まれたってこたぁつまり、長男長女のことだろーが」










 翠は蕾が拾ったスマホを受け取る。蕾は兄を睨み、敬愛など一切滲まぬ瞳孔を保ったまま、凛として言い張る。












「私は、兄さんのことなんて、鼻から尊敬できないし、敬愛できないわ。その代わり、姉さんのことは尊敬して、敬愛する。……兄さんに与えるのはせいぜい嫌悪くらいね。そんなもの、受け取ったって」


「嬉しいなあ。つまりは相思相愛。お互いに思い合ってるからなあ」


「キモッ! その考え方、キモッ!!」












 翠は連写しながら吠える。そして、『……ザザッ……あ、つまりは相思相愛……いに、思い合っているか……あ』という、お世辞にも綺麗とは言い難い音声を流した。賢は小さく眉を潜める。














「……翠? なんでそんなもの」


「ハハッ、これをネットに晒してやるさ! それで一件落着。おめえ、社会的に死んだなァ、なあ賢!」


「く……ッ、返しなさい、翠ッ!!」













 翠は鼻で笑い、「やだね」と返す。蕾も頷き、最愛の姉の後ろに隠れた。













「兄さん、私は……」


「蕾、お前は何を求める? 兄ちゃんだろう? そうだ、兄さんと……そういえッ」













 蕾に詰め寄り、賢は叫んだ。蕾の瞳孔が、恐怖に染まる。翠は叫んだ。











「つぼみ! 部屋に鍵かけて、立て籠もれ!! そんでFFOに逃げろ!!」


「う……うん!」











 賢の腕の中をするりと抜け、蕾は自分の部屋へ走った。ドアを乱暴に押し開けてから鍵をかけると、柔らかいため息をつく。そして、脳に干渉するヘルメットタイプのゲーム機を頭に被り、蕾はわずかに見える視界を頼りにベッドに倒れ込んだ。

  ふぅと息を吐き、一種の魔法の呪文を大きく唱える。













「リンク・スタート」














 ぐごご、と音がなり、ベッドが床に沈んだ。そのまま、地下へと落ちる。そんな大掛かりな仕掛けに、すでに妖精の国へと旅立っていた蕾は、ついに気付けなかった。



















次はずんずん書いていく予定(あくまで予定)ですが、やはり時間が足りません。ああ、一時間が二時間になったらな……。次は一週間以内投稿、目指します!

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