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Bloody bullet ー血塗れし弾丸ー  作者: なのはな
5/6

狙撃数4発目

今回はちょっと短めです。時間切り詰めで書いたので。

 待ってくれ、おかしいだろこんなの……。



 放課後、勇気は一人こもり、布団の中で何度も呟いた。




「今日……転校生が来て……スパイだって情報。そんでその転校生は……蕾だった!? __はん! 馬鹿げてる。それに、だったらあいつのコードネームはなんだ? あいつは……変なあだ名はついてなかったはずだ」





 そこまで考え、勇気はため息をついた。自身の母親に、頼んでみようと思ったからだ。




 __勇気の母は、好き好みで集めた情報を売る、情報屋。その名も、《シンシーベア・コニー(目敏いうさぎ)》。偉大なる殺し屋、晴鳥(かける)には、とてもふさわしい経歴を持つ女だ。当然、勇気も当てにするし、尊敬はしている。それを口に出さないだけで。






「え? あの“つーちゃん“が?」






 だから、その夜珍しく家族揃った食事会の際に、そう問いかけてみた。






「ん……もう、“つーちゃん呼び“はしない。今日から蕾。そう決めたんだ。__で? 何か知らない?」




「あーはいはい。よくある思春期真っ只中男の子の心情ね。……んーでも、私はそんなこと、知らないわ」




「……本当にか? おふくろの勘違いじゃ__」






 そう訝しむ勇気の目の前に、素早く爪楊枝つまようじが突きつけられる。

 勇気の母親は、ため息をついた。






「……あのねえ、勇気。あんたは知らなかったかもだけれど__お母さんは! 好き好みで集めた! 情報を! 売るお仕事なの! ……勇気が“客“として頼みに来るなら、もちろん、死に物狂いで集めるわ。__でも、あんたのその態度は何? まるで、身内に聞く態度じゃないっ。そんなものじゃあ、《シンシーベア・コニー》は調べません。動きません。……それがこの世界(裏社会)の在り方よ」




「……」






 勇気はしばらく押し黙り、口を開いて、やめた。それから、空いていた母親のコップにワインを注ぐ。






「む、なによ。これくらいで__」



楓佳ふうか、そろそろやめなさい。全く、実の息子をいじめるとは……」



「私はいじめてないのっっ。むしろ、裏社会(この世界)での生き方を教えてあげてるのよ!! __ね? 正当な母親でしょう」



「……俺、もう寝るわ」






 夫婦喧嘩を始めたところで、勇気が席を立つ。卓上のコーン・スープの水面が、少し揺れた。






「そうか。おやすみ、勇気。あとそれと、母さんのことだが……」



「オヤジ、俺はオヤジのこと、いい父親だと思ってるよ。__嫁におふくろを選んだこと以外にはな」






 勇気はそう捨て台詞を残し、ダイニングを後にした。







「「……」」







 残された両親が、唖然と黙る。






「な、何よあのくらいで。あのくらいで怒るなんて、勇気もまだガキね」



「……楓佳、一度詳しく話し合おうじゃないか。知ってるんだろ?」






 やっと口を開いた楓佳に、翔が問いかけた。






「え? なんのこと??」






 楓佳が、白々しくとぼけて見せる。しかし、長年の夫の勘は、鈍るばかりか、より洗練されるものだった。







「言われなくともわかるだろう。__蕾ちゃんだよ、勇気の幼馴染の。あの子が、この業界に関係がある態度だったな、ん?」




「……そうね。私もまさかとは思ったけれど、もしかしたら……その」




「厄介なコードネームなのか?」




「ええ……とても厄介よ。翔はともかく、勇気はまず、生きて帰ってこられないところだわ」






 翔が、自身のスプーンを落とした。軽い金属の音が、ダイニングに響き渡る。






「ま、まさかとは思うが……!!」



「多分そのまさかね。__ええ、そう。《荊城いばらじょう》が関わっているかもしれないわ」






 __楓佳の声が、明るい部屋に、暗く響いた。











 














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