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Bloody bullet ー血塗れし弾丸ー  作者: なのはな
4/6

狙撃数3発目

「やあやあ恨め(羨ま)しい奴め。あの美少女と、知り合いなのかい? それとも、まさか幼馴染じゃあ……」





 そう少年がいうところを見て、蕾は少し、安心した。





(よかった……私以外にも友達がいて)






 正直勇気は、子供の頃は独りもいいところだった。友達が一人もおらず、もし蕾と幼馴染でなかったら、あの時はどうなっていたことやら。

 __しかし、その必要はもはやないのだ。






「つー……いや、蕾。久しぶりだな、何年ぶりだ?」



「ゆっ__ううん、勇気。それは今することではないわ。先生、私の席はどこですか?」







 蕾はその瑠璃色の瞳を隣の老教師に向けた。対し草野は白い髪を後ろに撫で付け、「そうですね……」と呟いた。






「では、後ろに席を作りましょう。__《瓜生伊吹うりゅういぶき》さん。学習室から机と椅子を持ってきてください」





「あ、ウィーっす」






 勇気の隣の少年改め伊吹は、そう立ち上がり、ふわぁ、と欠伸あくびを漏らした。

 そしてそそくさと教室を出る。

 蕾はそれに続こうとして、「あのさぁ」と止められたため、立ち止まった。






「……なんですか?」






 髪を金色に染め、瞼にはこれ以上ないほどにアイメイクが施され、唇は、何かを塗っているのかピンク色に光っている、なんとも派手な女の子だ。その後ろには、取り巻き的な子たち二人もいる。






「あんた霧凪だっけ? __ちょっと今日、ツラァかせよ」







 蕾は軽く息を呑み、こくんと頷いた。








「いいよ」












「__でさぁ、ソイツなんて言ったと思うぅ?」



「えーなんて言ったの〜??」



「『あーワリィ、忘れてた』だって……普通女の子との約束忘れる!? 忘れないよね!?」




「ぅわーお……」





 蕾はそう声を漏らし、ドリンクを飲んだ。蕾が今いるのは、洒落たカフェテリア。あのあと有無を言わせず(放課後に)連行され、ここに連れてこられたのだ。

 それに派手派手ガール__如月(きさらぎ)七音(どれみ)(すごいキラキラネームだ)は、特に申し訳がることもなく、自分の恋愛事情を真裸にさせた。





「それでさ! 霧凪は男経験もダテじゃないだろ? いい男の選び方、教えてくんねぇ?」




「いい男? そんなこと言ってもなあ……私は初恋をずっと引きずってるっていうか、そんな感じで……」





 そう、蕾が語尾をかすかに濁らせると。





「そうそう! 霧凪さんって、晴鳥くんと幼馴染なんだよね? 霧凪さん的に、どうなの? アリ? ナシ?」





 今度は別の女子が質問した。






「へっ!? ゆ、勇気とってこと……??」



「当たり前だよぅ〜。みーんな気になってるんだよ。晴鳥くん、無口だけど優しいし、結構イケメンだしぃ?」



「霧凪はビショージョだしさぁ……みんなってより、男子が、て感じぃ?」






 テーブル上の皆がニマニマと蕾を見つめる。蕾はウッと喉を詰まらせた。






「んー……と、まあアリかナシで言ったら……アリ、かも?」






 その一言で、女子の甲高い悲鳴が「きゃあ〜!」と上がった。





「やっば、マジやっば!」「私はそう思ってたんだよね〜っ! やっぱ二人お似合いだわー」「ヒューヒュー!!」





 __そして一息つき。





「私たちさぁ」「そんな霧凪さんを応援しようと思って〜」「なんかこう、仕組もっか?」





 急に協力的になった。





「仕組むって……何するの?」



「そりゃあ、定番のやつっしょ。掃除当番とか? 一緒にしたり〜」





 間髪入れずにどれみが答える。蕾はそれに「えっ」と声を上げた。






「そ……そ、そんなことできるの?」




「そりゃあウチらだもん。そんくらいらくしょーよ楽勝」




「それにさぁ、どことなーく晴鳥くんって、掴みにくいんだよね」




「掴みにくい……?」




「うん、そ」






 髪を黒髪と赤髪のメッシュで染め上げ、耳元の金色のイヤリングを揺らした少女__胡桃(くるみ)姫星(きてぃ)は、こくんと頷き、続けた。






「さっきも言ったけどさあ。晴鳥くんって、イケメンじゃん?」



「あ……うん、まあ……?」



「だからそりゃまー狙う女子は増える一方よ。一時期はファンクラブまでできる始末。でもね、晴鳥くんは、どっちかっていうと、涼しい、そよ風みたいな子だったの。みんなに優しくはするけれど、それだけ。誰かと特別な関係になったことはないし、本人も、それを嫌がっている雰囲気だもん。まるで好きな人がいるみたい__だからウチらはびびーんときて、ああ、それは霧凪さんだなって思ったワケ」




「それって……みんな……?」




「うん」「そりゃね」「むしろそれ以外に? って感じ」




 皆の多種多様な答えを聞いて、蕾はズーンと肩を下げた。







「本当にそうなのかなあ……だったらその、う……嬉しいと言いますか、疑わしいと言いますか」




「ショージキじゃないなぁ。ま、それが普通っしょ。むしろ可愛い方ってか?」







 どれみのその一言に、その場の皆がきゃははと笑う。







「霧凪さんは、嘘下手だもんね! まあそこがいいところだけどぉ??」







 きてぃもそういい、蕾はただ、嘘じゃないなとそう思った。







『霧凪さんの恋、応援してあげたいっ』



『霧凪は素直じゃないし、うちが引き出さないとね!』



『すごい、綺麗な子だなあ。晴鳥くんと並ぶなら、それはもう、絵になるんだろうなあ』








 蕾の頭の中に、いろんな声がこだます。

 脳がキーーーンとなるその状況に、蕾は眉をひそめて精神を集中させた。

 これである程度は収まるだろう。

 蕾は振り切って尋ねた。







「みんなは! ゆっき……勇気のこと、好き……なの?」




「「「え????」」」







 びっくりしたように緑色の瞳__もちろんカラコンである__を見開き、桜色の唇をもちあげ少女……夏秋(なつあき)姫凛(ぷりん)は言った。







「なんで、そう思うの」




「え___っ? な……なんとなく」







 蕾は慌てて返し、口にストローを突っ込んだ。

 そこにぷりんは、「__……い」と掠れる声でつぶやいた。







「ん? プリン、何か




「ずるいよ、そんなの!」




「__ッ」







 急にぷりんがそう叫び、500円玉をテーブルに荒々しく置くと、カバンを担ぎ、ガツガツと歩いて行った。







「__ど、どうしちゃったんだろ」








 蕾はそう呟くために唇からストローを離し、他の二人を見つめた。

 対し二人は、さもありなんと言うような表情で肩をすくめて見せた。まあ実際、蕾の耳には、その声がはっきりと聞こえたのだが。







「霧凪は、ビショージョだから。さっきもそれ、言ったでしょ」



「霧凪さんは、嘘が下手だから。みんなわかっちゃうんだよ。あれ。さっき言わなかった?」







 二人はそう笑い、どれみが卓上の500円玉を手に取る。







「ま、いいっしょ。__プリンは特に気性が荒いからさ。あんま気にすんなって。いつものことだし」




「うん、そうだよ。ぷりんちゃんは、ちょっとその……自分の気持ちに、蓋ができなかったっぽい」







 そう、きてぃは、財布から出した500円玉をどれみに預けた。蕾に手を差し出すので、慌ただしく500円玉をどれみの白い手に乗せた。

 __その全てが、蕾の未体験だった。







 






















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