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Bloody bullet ー血塗れし弾丸ー  作者: なのはな
2/6

狙撃数1発目

毎日投稿、第二弾です! 

「……変な夢見たな」





 そう少年__《晴鳥勇気はるどりゆうき》は寝癖のついた髪を撫でつけ、あくびを漏らした。






(昔の夢とか、あんま見てなかったのになあ……)






 不思議な感慨にとらわれながらも、勇気はアラームを止めた。

 途端すぐ移動し、軽く運動。それから愛銃の感触を確かめ、ふところに収めた。





 __彼は殺し屋だ。それも由緒正しい、名家の殺し屋。





 故に特訓も音をあげてしまうものばかりだが、不思議と少年にはそんな感情はなかった。

 なぜかというと、彼も“裏“ではいわゆる人助けをしているのだ。これで文句を言うほど、彼は悪人ではあるまい。





「そう、だから《つーちゃん》のことを考えるの禁止」





 そう気持ちを改め、勇気は手早く着替えを済まし、食パンを口に突っ込んだ。

 今日は両親がいないはずなので、「いってきます」は小声もいいところで、外に出る。

 物理的にも情報的にも開けられないよう、鍵をかけ、勇気はたまたま通りかかった友人に挨拶をした。友人も挨拶を返す。



 __殺し屋の友達も殺し屋。そんなことがあり得るのはせいぜい漫画、アニメの中くらいだ。実際は殺し屋にも普通の友達はいる。





(__でも、普通じゃないやつが一人いたな)





 勇気はそう考えながらも、友人の話にうまく合わせた。その間にも、次々と襲いかかってくるライバルの殺し屋をささっと始末する。




 __その“普通じゃないやつ“は。





(絶対言わないけど) ……勇気はそれでも気を抜かず、友人にバレない程度に処分した。





 __勇気の。





(最近会ってないし) ……銃を引く指が微かに遅くなる。





 __唯一の想いびとと言っても過言ではない。




 ……と言っても幼稚園生のそれと同じ心持ちであるが。





 幼い頃から全く会ってなかった彼女に会える日を夢見て。





(また会いたいな……__)





 少年はただ心を焦がした。











「ん……はるほほふぇぃ……」





 ベッドから身を起こし、少女は紺色の髪を揺らし、奇妙な声を漏らした。

 寝ぼけ眼をこすり、そっと時間を確認する。




「っ!? 7時!?」





 黒髪の少女は、その長い髪を大きくなびかせ、時計を投げ捨てた。

 クローゼットから破れそうなほどの勢いで制服を取り出し、そのまま身に包む。







 __少女の名前は《霧凪蕾きりなぎつぼみ》。名家のスパイで、人の心を読める、超能力者でもある。







 蕾はため息を呑み込み、階段の手すりに手をかけ、そのまま勢いで手すりの上を滑った。







「よぉ、つぼみ。今日はよく寝たなぁ。おはよ」





 慌ててリビングに入ると、蕾の姉、すいがいたため、蕾はそのままダイニングに移動し、相変わらずヘッドフォンとスマートフォンを離さない姉に少し苦笑して返す。





「おはよう、姉さん。__全く、起きているのなら起こしてほしいわ。朝ご飯は?」




「ん、起きたんじゃなくて、徹夜してたんだよ。__それと朝飯ならけんが作ったいったぞ。今日は任務があるとか言って、出かけていっちまったが……まあ、いいだろう。食べようぜ」




「ふうん、任務? 平日から大変だね、兄さんは」





 そして席につき、あっと口を開き、目の前の姉を見据えた。





「ねぇ……さっき、徹夜って言った?」




「言ったが?」




「ほら、やっぱり。__任務も大切だけどさ、体の健康とか、色々考えてよね。大体、姉さんがちゃんと仕事をこなせるのか私、すごーく心配」





 翠はしばらくキョトンと蕾を見つめ、やがてかっかっと乾いた声で笑い、目元の涙を拭いた。





「妹に心配されるほど、アタシは初心者じゃないさ。__それに、今一番気にすべきなのはあんたの方だと思うけどね、つぼみ?」




「う……ん、それは、そうなんだけど…………」




「いいかい、つぼみ。お前は高校生と言っても、霧凪家の人間なんだ。その意味がわかるか?」





 蕾は驚いたように目を見開き、こくんと頷いた。

 翠はそれに構わず、サンドイッチにかぶりつく。





「ほれなら__んく、今やるべきこともわかるだろう」




「わかってるわよ。……銃の勉強、それとピッキング能力とか__」



「それだけじゃない。お前には才能があるんだ、つぼみ。__超能力はね、うちじゃあ結構珍しいんだよ」






 そう翠は、壁に貼られている『我が家家系図!』に目を向ける。蕾もそれに合わせて視線をずらした。





「銃使い、人形遣い、刀使い、合気道……うち、《霧凪家》には、多くの才能が集まっている」




「うん、そうだね」





 蕾は姉が読み上げる項目をもらすことなく見た。ともに相槌を打つ。






「わかるよ。この中には『超能力者』の人はいない……そう言いたいんでしょう?」




「それもそうだが、それだけじゃない」





「えっ……?」






 蕾ははじかれるように目の前の姉を見つめた。翠はまだ家系図を見つめて、つぶやいた。






「いいか、つぼみ。時代っていうものはね、移りゆくものなんだよ。__アタシの能力、《ハッカー》も、この時代特有で、他にはない」





「そう、だね。でも母さん達は…………『これは、特別じゃない』、そう言っていたわ。あれはなぜなの?」





「それは…… 昔でも、《ハッカー》みたいなやつがいたってことだ」




「みたいなやつ……?」





 軽く首を傾げる蕾にうなずき、翠は朝食を食べるよう、うながした。





「いいか、例えばね。__昔にも、人間はいただろう?」




「ん、何年前かは知らないけど……」




 蕾は自身なさげに眉を下げると、翠はそれでいい、と笑った。




「昔といっても、最初に誕生した日とかじゃない。……そうだな、例えば江戸あたりとか。__知ってるか?」




「エド……ええ、知ってるわよ。侍とかがまだいた時期でしょう? 着物とか着て」



「着物は知らんが、まあいい。__それでその江戸な。江戸時代あたりから、霧凪家はあったんだよ」



「ふえぇ〜」





 蕾がパンを呑み込みながら言う。




「結構伝統ある家なのね。実感はないけど」




「そうさ。実感は別に持たんでいいが……まあそれくらいから、《ハッカー》に似たやつはあったんだよ」




「うっそだぁ。だってハッカーって……パソコンがないと成立しないじゃない」




「__だから似たやつなんだよ。同じじゃないさ、言ったろ? 『時代は移りゆくもの』って」




「そういえば言ってたね、そんなこと」





 蕾は牛乳を一飲みして、続けた。





「でも似てるものって言ったって、何をするのよ? 昔の人って、そんなに頭が良かったの?」




「今の人類も頭はよくねえよ。ただ単に歳を重ねて、小賢しくなっただけだ。__それと、当時のやつも、それなりにゃ良かったはずだぜ? なんせ、《歴史》があるんだからな」




「歴史……私、そういうの苦手。昔の物語掘り起こして、一体何が楽しいんだか」




「はは、それはよく知らねえが。__ま、いっか。とにかく《超能力者》なことは隠せよ? じゃないとまぁた引っ越すことになる」




「ほえんまはい……」





 蕾が歯ブラシをくわえて戻ってくる。

 翠はその様子に苦笑し、続けた。





「あとうちが《スパイ》なことも、いうの禁止な? じゃないと何が起こるか溜まったもんじゃない」




「わはっへうっえ。__今日転校してきたのは、重罰の殺し屋……コードネーム・《クラージュ》を仕留めるためでしょ。バレちゃ、しょうがないもんね」




「ああ、そういうことだ、《いばら姫》。あとそれと、お前の知名度底上げ計画でもあるからな」




「その名で呼ばないでちょーだい。__じゃ、行ってきます」




「行ってら。__悪いな」






 そんな姉の様子に蕾は一瞬目を見開き__。





「ふふっ」





 まるで実を落とす花のように儚く、微笑んだ。








どうでしたか。殺し屋の勇気と、スパイであり、人の心が読める(その割にはわかってなさそうでしたが)蕾。二人の今後に乞うご期待!

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