テスト終了、バンザイ!
軽やかな鐘の音が聞こえる。
「はぁぁぁぁぁ〜…………。」
大きく息を吐いて、セシリアは机に突っ伏した。
やっと期末テスト期間が終わった。
長かった。
例によってメイベルを巻き込み、ニ週間、毎日勉強を頑張った。
メイベルは最近、変な魔術を使うようになって、勉強を始めると自室から外に出られなくなる。何魔術って言うんだろう?
メイベルがドアを押さえている訳ではないのに、ドアが開かなくなるのだ。
窓も開かない。
人の気配も無い。
幽霊でもいるんだろうか?
でも、毎日、きっかり夜中の一時までの缶詰状態。
トイレとシャワーは部屋に付いているから、さしたる問題は無いんだけれども。
30分も机に向かうとイライラするセシリアが、ドアに魔力をぶつけてみたが、ビクともしなかった。
ただし音は凄かったので、次の日に寮監の先生からお小言を言われた。
良くやった。私。
メイベルの嫌味にも、小言にも耐えた。
後は一週間後に成績表を貰って、長期休みだ!
そう自分を褒めて、セシリアは立ち上がる。
「よし!これから青春するぞ〜!!」
両腕を挙げたセシリアを、クラスの同級生達が呆れた顔で見ていた。
ーーーーーーーーーーーーー
テストが終了して、約ニ時間後。
「……本当に約束を守ってくださるんでしょうね。」
メイベルは、サミュエル殿下に詰め寄っている。
「勿論。ルーベンス孃は退学にしない。」
ロズウェル先生の個室のソファで、メイベルとサミュエルは対峙している。
サミュエルの隣で護衛騎士のドレークがハラハラしたように二人を見る。
ドレークは茶色の目と髪を持つ、ヒョロッと背の高い少年だ。
その見た目から、本当に護衛が出来るのか、ちょっと怪しい。
サミュエルと共に剣の鍛錬をしているらしい。
部屋の主、ロズウェル先生はコーヒーを飲みながら、
「フェルマー、サミュエル殿下も約束しているんだから。」
メイベルを嗜める。
メイベルがサミュエルに約束させたのは、セシリアが今回のテストをちゃんと受けたなら、退学させないというもの。
サミュエルから皇太子や王様、学園長へ掛け合ってもらった。
『セシリアだってやれば出来る』とメイベルが見栄を切ったのだ。
散々、皇太子や高位貴族の子息を追いかけ、他のクラスの授業を妨害し、自分の授業をサボったセシリアは、本来なら退学ものである。
待ち伏せも多かったから、下手をすれば、国に諜報員と怪しまれて、牢屋行きもありえた。
メイベルは、セシリアから聞いたゲームの話、イベント等の情報を逐一サミュエルを通じて皇太子へ報告し、他国の諜報員という疑惑を晴らした。
(そのお陰で、攻略対象達は極力セシリアを避けられた。)
その為に、ロズウェル先生の部屋でサミュエルとメイベルは頻繁に会っていた。
ロズウェル先生にメイベルがセシリアの愚痴を言っていたあの日。
メイベルは、サミュエルの乱入に驚き、自分の能力が目覚めた。
その能力は、結界の魔力だったのである。
つまりメイベルはサミュエルを結界の箱の中に咄嗟に閉じ込めたのだ。
結界の魔術は一年生の終わりくらいに、全員が習う。
それは部屋に鍵をかけたり、薄い防御膜を自分の周りに張るというもの。薄いガラスのようなもので、強い攻撃魔力を当てられると、直ぐに割れてなくなってしまう。
しかし、メイベルのそれは、対象を完全に箱で覆ってしまい、人の出入りはおろか、魔力も通さない。それは『鉄壁』。
勉強を続けていけば、封印や封印解除も出来るようになるだろう。
これだけ強力な結界魔術を持つ者は、滅多にいない。
メイベルは自分達の寮の部屋に鉄壁の結界を張り、セシリアを缶詰にして勉強を教えた。
その甲斐あってセシリアの答案用紙は、9割埋まった。
合っているかは、また別の話だが。
ただし、全てそのまま今まで通りと言う訳には行かない。
セシリアは成績に関わらず、強制的に別の専門クラスへ編入となる。
そこで徹底的に礼儀作法を教育されるという。
エルセリア魔導学園は、貴族が多い。
礼儀作法をキチンとマスターし、頑張っていれば何処かの玉の輿にも乗れる可能性はある。
「しかし……不思議だな。あんなに迷惑をしていたハズのメイベル孃が、セシリア・ルーベンス孃を庇うなんて。」
サミュエルはテーブルの上の紅茶を取り、一口飲んだ。
紅茶はメイベルが入れたもの。
メイベルとドレークの前にも紅茶を入れたカップがある。
「……うん。上手い。」
紅茶にうるさい王族のサミュエルに褒めてもらえて、メイベルはちょっと赤くなった。
「単純に、私が後味の悪い思いになるのを回避しただけです。」
そう、自分のエゴでもあるのだ。とメイベルは心の中で呟いた。
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