ある日の日常 その3
2度あることは3度ある。
バタバタバタバタバタバタ……
バタバタバタバタバタバタ……
カチャ
「行ったか?」
ドアの外にいる男子生徒が、口の前で、人差し指を立てる。
どうやら、まだ近くにいるらしい。
皇太子はゆっくりと音をたてないように掃除用具のロッカーの戸を閉めた。
暫くモップに囲まれてジッとしていると、外の方からガヤガヤと声がする。
女の声もする。
「は〜な〜し〜て〜!!!」
「今日は、補習の予定でしょ!いい加減にしなさい!」
「メイベルの意地悪!」
「アンタの方がよっぽど意地悪!アンタのせいで私まで補習なんだから!」
大きな声だ。
皇太子 アルフレッドはやっとロッカーを出た。
「ふぅ。」
なんで皇太子が掃除道具入れに隠れにゃならんのだ。
そう思ったが、咄嗟に隠れる場所が思いつかなかったのだ。
この学園は古く、幾つも騒乱を乗り越えてきたので、隠し部屋や隠し通路が沢山ある。
しかし、いきなりで思いつかなかった。
今日は午後に、研究室で重要な講義がある予定だったので、昼食後、王宮から戻って来た。
そこへ突然、セシリアの乱入である。
今日は、ケネス(公爵子息)に突撃する予定と思ったが。
ケネスが上手く隠れたから、此方に来たという事かもしれない。
まったく。
迷惑な事だ。
落ち着いて授業を受けていられない。
思えばセシリアには、今年の入学式前から迷惑を被っていた。
(やっと二人きりになれたと思ったのに!)
皇太子の周りには、クラスメイトは勿論、いつでも護衛やら側近がいる。
婚約者の周りにも。
その日は、会場に不審物が無いかチェックする為に、側近達が出払っていて、婚約者と二人きりになるタイミングが出来たのだ。
(二人きりになる目的は………まぁ、健全な男子ですから。)
「あの時は、邪魔されたが、その後、取り返したから、まぁ良しとするか。」
アルフレッドは、セシリアを理由にして、婚約者を王宮に隔離した。(軟禁とも言う)
王宮でなら二人きりになる事も出来る。
奴の事だ。
婚約者のレイチェルに接触すると、何を言い出すか分からん。
レイチェルは、貴族の令嬢に珍しく気が優しい。目下の者にも優しく接する。
そのレイチェルを捕まえて
「虐められた!」
と言い出すに違いない。
バカバカしい。
セシリアの外見は、アルフレッドの目から見ても整っていると思う。
しかしそれ以上の気持ちを抱く事は無い。
他の迫られている連中もそうだった。
第一、行動が子供っぽくて、相手なんてしていられない。
それに皆、婚約者が居るし、下手に他にうつつを抜かしたら問題になるに違いない。
アルフレッドは、ほわりと微笑う婚約者の笑顔を思い出す。
「早く帰って、レイチェルに癒してもらおう。」
そう決めた。
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