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ある日の日常 その2

「ねぇ、もういい加減に諦めなさいよ。」

「何を?」

私はセシリアの席の前に立ち、セシリアに向かって言った。

「……あ、プリントなら、諦めた。」



セシリアは、先生によって椅子に縛り付けられている。

魔法もかけられているから、簡単には解けない。


「……違うわよ。皇太子殿下達を追いかけるのを、諦めるの。」

「……嫌。」


授業をサボっていた補習として、セシリアと私は先生から渡されたプリントを、放課後に教室で書いていた。

(私はセシリアを捕まえる為に、授業を休んだのであって、決して故意ではない!)


周りには、まだ帰らない生徒がちらほら残っていた。


私は先にプリントを埋め終わり、セシリアを待っている。

セシリアが終わり次第、先生を私が呼びに行き、セシリアを縛り付けている縄を解いてもらうのだ。


「何でそんなに意固地なのよ。」

「だって、私がヒロインなんだもの。」


セシリアのプリントは七割程しか埋まっていないが、諦めたと言うから、そろそろ先生を呼びに行った方がいいかもしれない。

飽きてきたようで、鉛筆をクルクル回している。


「……私、カワイイもの。其処らの男の子じゃ釣り合わないわ!」


………呆れた。

自分でカワイイと言いよった。


私は眼鏡の奥で睨みながら、

「………其処らの男の子が、可哀相じゃない。」


「えー?ちょっと私がニッコリすれば、其処らの男の子なんてメロメロよ!」

「よく言うわ!」


私は教室を見渡す。

ジュースを飲みながら、談笑している男子生徒が何人か居た。

ふと私と、真ん中にいる男子と目があった気がした。


「……あそこに男子が居るから、メロメロになるか、笑いかけてみたら?」

「えー………。」


セシリアは体を向けると、「ニッコリ」笑って見せた。


すると、男子生徒のうち一人がジュースを吹き出し、椅子から転げ落ちる。

慌てて教室の外に出る者も居た。

皆、顔が青ざめている。


「…………。」

「ほら!きっと皆、私の可愛さに恐れおののいたのよ!」


いや、多分、違う。

彼らは何か悪口を言っていたのだ。ニッコリ笑って見せた事で、バレたと慌てたのだろう。

私は溜息をついた。


ーーーーーーーーーーーーー


「………やっべー!なんで勘付いたんだよ!ルーベンスの奴!」

同級生 男子Aが校舎から出た所で、焦って言う。

同級生 男子Bはジュースで汚れたシャツを拭きながら

「………これ、直ぐに洗わないと。」


同級生 男子Cは

「流石、変人と噂されるセシリア・ルーベンス。地獄耳スキルを持っているのかもしれない。」

「……怖っ!」

同級生 男子Dが寒そうに身体を擦る。

半袖でも暑い時期なのに。



彼らは、放課後、セシリアとメイベルを見ながら談笑していた男子生徒である。

そこでは「セシリア・ルーベンスは、誰を捕まえるか」について話をしていた。


「一年生の癖に、上級生に迫ってるって?」

「なんでも、授業にまで乱入するってな。」

「………馬鹿なんじゃないか?」

「黙っていれば、カワイイかもしれないけど…………無いな。あれは。」

「あんな変な奴じゃなー。」

「今だって、縛られなきゃ、しらばっくれるだろう。」

「人として、どうなんだ?あれ。」

「ないわー。あんなのに迫られたら………俺じゃなくて良かった。」

「……まぁ、お前にゃ迫らないと思うけどな。」


「なぁ、誰がルーベンスと恋仲になると思う?」

「……賭けてみる?」

「俺、『全員に相手にされない』に。」

「俺も。」

「俺も。」

「……賭けにならねぇ!」

「だって、いくら顔が良くても迷惑だもん!あの女!」

「だよなー!」

「………ルーベンスだったら、俺、フェルマーの方が良い。」

「だなー。地味だけどな。」

「ルーベンスのお守りを良くやってるよ。」

「眼鏡を外すと、結構、いい線だと思うぞ。メイベル・フェルマー。」

「笑えばカワイイと思うんだ。笑ってくれないかな。」


等と言っているところに、セシリアがこっちを向いた。

男子がギョッとした所で、セシリアがニコッと笑ったのだ。

(うわ!聞かれてた!)

と思い、慌てたのである。


その後、「セシリア・ルーベンスは地獄耳」とまことしやかに囁かれ、一時的に影口が止んだという。


お読みいただき、ありがとうございます。

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