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チート待て

一応、主人公はメイベルです。時々、自分でも間違えます……(苦笑)

時は少し前になる。

第三王子サミュエル・ガードナー・グローディアスは、退屈をしていた。



サミュエルは、金髪碧眼のザ・王子様である。

しかし兄達に比べ、キラキラしくない。地味で影が薄い。

金髪は茶色よりだし、身体も小さいし、身長も低い。顔も童顔で少し女性っぽい。

その為、来客から言われるのはいつも当たり障りのない

「お可愛らしいですね………。」


そう言われてもサミュエルは、表面上は黙ってニコニコと笑って居る。

しかし、その裏ではあかんべぇをしている、あまり可愛くない性格だった。


おまけに趣味も可愛くない。

人の悪巧みを暴くのが大好きなのだ。

幼い頃から、母である王妃に付いて、お茶会などに出席していた為、噂話をよく聞いていた。

その上、身体が小さいので狭い隙間やカーテンの裏等、入り放題。

つまり、陰口や悪巧み、噂話は聴き放題。

それ等を自分で吟味し、調査し、纏め、何処かの席で爆弾を放つ。

その時の相手の驚いた顔が、堪らなく大好きという。

この2年でサミュエルによって、数名の高官が餌食になっていた。(=失脚した。)


しかし、エルセリア魔導学園に入学してから、あまりそういった活動が出来ていない。

まぁ入学したてだし。

おまけに最近、関節が痛い。

何か無茶な運動したっけ?



そして入学式から、二ヶ月過ぎた頃。


ある日の放課後、サミュエルは偶々、担任のロズウェル先生に明日の授業の相談をしようと、先生の個室の前に来ていた。

いつもなら護衛騎士で同級生のドレークが一緒なのだが、昨日、腹を冷やしたらしく、トイレに籠もってしまった為、一人で、である。


(近々、奴に腹巻きをくれてやらねば。)

明日、遠方から来客があり、歓迎式典がある。サミュエルもそれに出席するのだが、そういった場面でトイレに駆込まれては、主人としても恥ずかしい。



そんな事を考えながら、ドアをノックしようとした。

すると、中から声がする。

女生徒と先生の声の様だ。


(まさか、女生徒に破廉恥な事をしているのではあるまいな。)


ロズウェル先生は20代後半の焦げ茶の瞳と髪の男性。

ちょっとタレ目で、ぶっきらぼうだが、生徒には人気があった。

ヨレヨレの白衣と、無精髭。足元がいつもサンダルなのは、ちょくちょく自分の研究室に泊まりこんで研究しているらしい。


だらしない格好をしているのが、年上の女生徒には魅力的だそうで

「構ってあげたい」No.1だそうだ。


(面白い。)

ニヤリと口角をあげて、サミュエルは聞き耳をたてた。


ーーーーーーーーーーーーー


「……先生。セシリアのお守り、他の人に代わってもらえませんか?」

女生徒は先生に懇願する。

対するロズウェル先生は、

「そうしてやりたいのは山々なんだがな……。」


どうやら女生徒は、寮でセシリアと同室のメイベル・フェルマー孃の様だ。

同じクラスのセシリア孃は、兄の皇太子や宰相子息、公爵子息等を追いかけ、度々授業を抜け出していた。

そのセシリア孃を捕まえるのは、いつもメイベル孃である。


メイベル・フェルマー孃は栗色の髪を引っ詰め、眼鏡を掛けた令嬢だ。

目立たず、誰かと仲良くしているのを見たことがない。

いや、いつもセシリア孃を追いかけていて、休み時間はいないか。

校内をセシリアと疾走する姿は、サミュエルも幾度か見ている。

(そうか。あれは先生の頼みだったんだな。)


「でもな、フェルマー。これは君の為でもあるんだぞ。」

先生が言う。

「わかっています。先日、魔法の授業で点数が悪かったから、その補習ですよね。捕まえれば、少し点数を大目に見てくださるという。」

「そうは言ったが、それだけではなくてな。」

「じゃあ、何なんですか。」


メイベル孃は、ハッキリさせる性格の様だ。

オブラートに数十枚と包んで話す貴族の女性と違う。

出自は、どういう女性だろうか。

サミュエルは、メイベルに興味を持った。


「最近、セシリアのお守りが忙しくて、勉強が出来ないんです。おまけに初級魔法の授業で赤点なんて………。」

「いや、君は魔法の素養がある。お父上は素晴らしい魔術師だったし。今はまだ目覚めていないだけだと思う。それを目覚めさせる経験をとして……。」

「経験になります?これが?」


メイベルは尚も続ける。

「……本当は、寮の部屋も替えてもらいたいくらいです!」


メイベル孃は興奮し、少し涙声になってきた。

どうせこれから延々とロズウェル先生にセシリア孃の愚痴をこぼすのだろう。

あまり実にならないから出直そうとサミュエルが思った時。


「……自分は、転生者でヒロインだ、なんて言い出すし。夜中にちょくちょく起こされるんですよ、私!」


「!」

サミュエルは思わず、扉を開ける。

「そ、その話、詳しく聞かせてくれ。」


ロズウェル先生とメイベル孃は、サミュエルの突然の乱入に目を見開き、息を飲んだ。


次の瞬間。

ガチン、と音がして。


何故か、サミュエルは透明な箱に閉じ込められていた。


お読みいただき、ありがとうございます。

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