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何で私が?!

前方から上級生らしい女生徒が数人、見えた。

すると彼女達は、


「あ!いたいた!」

「ちょっと!飼育係さん、遅いわよ!」


ん?今、なんか聞き捨てならない事を言われたような………。

上級生の女生徒が続けてまくしたてる。


「あの娘、三年の実技の授業に乱入してきたの。火の魔法の実技授業なのに、危なくて。テレンス様がいないかって煩く言ってくるのよ。」

「えー!?今、授業はどうなっているのですか?」

「先生があの娘を捕まえようとしてる。その間、自習。」


テレンス様とは、三年生の侯爵子息だ。

その容姿は、男性とは思えない程、細く華奢で可愛らしい。

男子の制服を着ていなければ、女子に間違えられる。


モチロン、学園のアイドル。

初日の夜にセシリアが言っていたゲームの攻略対象の一人だ。




あの日以降、目覚めたと言って、セシリアは、当然の様に奇妙奇天烈な行動を取り始めた。

自分の授業そっちのけで、学園のアイドルに接触を図ったのである。

校舎裏で、待ち伏せしたり。

別学年の授業に飛び入り参加したり。

果ては男子トイレの個室に籠もったり。

毎日、何かしら誰かに突撃している。


本人曰く。

「好感度は毎日会って、コツコツ稼ぐのよ!」


勿論、そっちに忙しくて自分の本来取るべき授業は半分程しか受けていない。


その為、学年教官や他の教官、生徒達から、苦情が毎日、担任のロズウェル先生の所へ来ているのだ。

胃薬を飲みながら、ロズウェル先生は言う。

「今日も五年の主任から、授業にならないと苦情が……。」


セシリアよ。

実は、「コツコツ(ロズウェル先生に)嫌がらせしている」の間違いではなかろうか?


そしてその度、私がセシリア回収を言いつけられるので、私もいい迷惑だ。

何で私が!?


ーーーーーーーーーーーーー


私は先輩女子達に連れられて、近くの広場へ急いだ。


「まーちーなーさーいー!!!」

「いーやー!!」


そこには、土埃をあげて駆け回る生徒と先生が居た。

生徒達は遠巻きにして、その二人を見ている。

中には

「先生、頑張れ〜!」

「金髪の娘、逃げ切れ〜!」

「二人共、負けるな〜!」

などと呑気に声を掛けている者も居る。


このクラスの魔法の先生は、年配の女性。

先生は、背中まである黒髪がチリチリに焦げ、鬼気迫る表情でセシリアに迫るが、なかなか追いつけない。


「この!待てと言ったら!」

「待てと言われて、待つバカはいない!」


セシリアは、右に左に進路を変えながら、すばしっこく動く。

流石、13歳。

息があがっている先生に対し、少しも息が切れていない。


先生は埒があかないと、とうとう手を振り上げた。

その掌には、小さな火の玉が見える。


それに気が付いたセシリアの目は丸くなる。


「待て〜!」

そう言った先生は火の玉をセシリアへ放つ。

火の玉はセシリアの直ぐ横に落ちた。

火の玉が落ちた場所で、火柱が上がる。

当てないつもりだろうが、結構な威力だ。


「………ひ、卑怯〜………」

「それはこっちのセリフよ!先に私に光の魔法を当てたのは貴方でしょ!」

「だって、出ていけなんて意地悪を言うんだもん!」

「自分の授業じゃないのに受けている上に、私の説明の邪魔するからでしょうが!」

「だって、休み時間にテレンス様に会えないんだもん!授業なら居ると思って……。」


私は頭が痛くなる。

コイツ、頭が良いのか、悪いのか。

確かに授業ならテレンス様は居るだろう。

しかし、無理矢理、授業に押しかけたらテレンス様の心象は悪くなるに違いない。


先生は、手を振り上げた。

するとセシリアは

「……そっちがその気なら………!」

セシリアも手を振り上げる。


(ヤバい)


咄嗟に私は腕で目を覆う。


カッ


次の瞬間、腕で覆ったのに、光が目に入る。

眩しい。

視界が真っ白になった。


あー、これ、先生からのお小言で済むかなぁ。

校内で授業と緊急時以外に攻撃魔法を使うのは、校則で禁止されている。


目を開けると、周りの生徒達は一人残らず、のたうち回っていた。

「眩しい〜!」

「目が、……見えない〜。」


セシリアは、先生の火の魔法に相対するように、自分の魔力で出来た光の球を打ち出したのである。

そして、それは見事に先生の魔法を打ち消した。

相殺する時、もの凄い光量を出して。


そこまでは良かった。


「ひぃ〜……目、目がぁ〜〜………見えないぃ〜〜!」

セシリア本人も、光に目がやられて、のたうち回っているのである。

………勿論、先生も。



私はセシリアの腕を掴むと、引きずって歩き出す。

「ほら!ロズウェル先生が呼んでるから!」

「……まだ、テレンス様に会ってない〜!」

「授業にいなかったんでしょ!?今日はもう会えないわよ!諦めなさい!」



(さっき、女生徒の中に、女装したテレンス様が居た気がしたけど。うるさいから黙っておこう。)

歩きながら、私はそう決心した。



お読みいただき、ありがとうございます。

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