エピローグっていうオチ
最後は、長めです。
セシリアが移籍して数カ月後、私メイベルの元に一通の手紙が来た。
サミュエル殿下経由開封済みなので、一応検閲をしたのだろう。
セシリアの手紙の内容はこうだった。
『ハーイ!メイベル。
元気にしてる?私は元気よ!
聖女、神官養成コースは礼儀作法に厳しいけど、イケメンが多いから頑張れてる!
あっちもイケメン、こっちもイケメンで、ウハウハよ!
でもライバルの女の子も多いの。
皆、他校から転校して来た娘で、私はヒロイン!って言ってる。
ヒロインって私だけじゃなかったのかな?!
まぁ、いいや。
頑張ってイケメン神官のお嫁さんになるわよ。
じゃあね。 セシリア』
………セシリアは相変わらずだった。
私が眉間の皺を伸ばしていると、サミュエル殿下が苦笑している。
「もしかしてセシリアみたいな娘、他にも居るんですか?」
私が聞いたら、サミュエル殿下は凄い話をしてくれた。
「いる。光魔法を持ち、王族や高位貴族に迫り、周囲を混乱させた挙げ句、聖女、神官養成コースに転入する女生徒は、毎年20名ほどいるようだ。」
「………うわ。そんなに多いんだ………。」
光魔法の保持者は珍しい。
……と行っても、20人に一人は居る。
ロズウェル先生は『無詠唱で鉄壁を使える奴の方が、よっぽど珍しい』と言う。
「でも、余りに酷い犯罪をした者は処刑されたり、退学になったり、王族に迫らず引きこもったりしているから、『転生者』とやらはもっといると推測するぞ。」
サミュエル殿下は、
「それに、兄に迫った『セシリア』は今回で四人目だった。」
「え?」
と、言う事は、今までも、勘違い娘がいるってこと?
っていうかセシリアって名前の娘が、前にも皇太子殿下に迫っているって……
どういう事?!
「毎年、一人二人居るようだな。性格が違うから、行動パターンは異なるが。
しかし、共通して皆『自分は転生者でヒロインだ』と言う。」
うわー。実は何かの病原体が流行っているか、呪われているのでは?
「これは我が王家に伝わる禁忌事項なのだが……。
数百年前に、皇太子や高位貴族の数名が、『セシリア』という名の一人の女性に振り回された事件があったようだ。色気のある美人だったらしい。
その時の皇太子は、婚約を破棄してまで、その女性と一緒になりたがったが、教育と忍耐が足りず、結果、政治に混乱をきたし、国が危ぶまれた。
記録には、皇太子と女性、二人でお忍び旅行に出かけた先で、大水害に巻き込まれ、二人共亡くなったとある。それが元で後継者争いが起き、その間にまた災害が起こり………という具合だ。
やはり女性は、自称『ヒロイン』で『転生者』だったという。
そういう事例が三代続いた。王家の男子が減って、大問題になったそうだ。
以降、王族には『セシリアという名の女性に、王子は近付くな』という掟が出来た。」
私の顔は引きつっている。笑うに笑えない。
「大体、皇太子が学園に入学する頃から、『セシリア』が湧くんだよなぁ。
父上の時も、『セシリア』という娘が、七人、秋波を送ってきたそうだ。」
そんな、人を虫みたいに。
「他の国では違う名前のようだ。」
おいおい。
皇太子は、学園を卒業したら、直ぐに婚約者の侯爵令嬢と結婚するという。
セシリアにかこつけて王宮に軟禁するくらい、皇太子は婚約者にベタぼれとサミュエル殿下が言っている。
そう言えば、セシリアが皇太子を追っかけていた時も、婚約者の令嬢を見かけた事がない。
王宮に軟禁してたのか。………いや、それ、ちょっと病んでる気がしますけど。
私とサミュエル殿下は、セシリアが移籍した今もロズウェル先生の部屋で、頻繁に会っている。
私が隣国の皇太子妃の妹なのに、侍女や護衛が付いていないので、問題があると困るからと言っている。
他国の王族が入学した場合、大抵、侍女や護衛も一緒に入学するらしい。
(そんな事、言われても。元々、下位貴族の娘だし。)
サミュエル殿下も護衛騎士のドレークさんも同じクラスなのに、問題が起こる?
問題があると困るなら、セシリアのお守りさせる時点で、大分問題では?
色々矛盾を感じつつも、まぁサミュエル殿下と話すのは面白いので、会うことに否やはない。
入学してから一年が過ぎようとしていた。
この部屋で、初めて会った時、私とサミュエル殿下の身長は同じくらいだったのに、今は大分、越されてしまっている。
関節が痛いと言っているから、まだまだ伸びそうだ。
私だって成長期なのに。
サミュエル殿下は、教室では目立たないようにしている。
教室では『殿下』と言わせない。
その真意は明言していないが、恐らく何か腹黒い事を考えている………?
怖いので深読みはやめよう。
今日もサミュエル殿下は、放課後、私が入れた紅茶を美味しそうに飲んでいる。
ドレークさんは、またトイレに籠もってしまった。
ロズウェル先生は論文を読みながら、ウトウトしている。
部屋のソファに毛布があったから、昨日も泊まり込んだんだろう。
長閑な放課後、サミュエル殿下はもののついでみたいに、いきなり爆弾を落とした。
「あ、そうそう。メイベル孃、婚約者がいないなら、私と婚約しないか?」
「はい?」
「ほら、私と結婚すればジェルマとの交流になるし。」
私は驚いて、固まった。
ついでに鉄壁の結界も展開している。
殿下は、結界にもう驚かなくなってしまった。
「私は三男だから婿に行ってもいいしな。なぁ、好条件だと思わないか?」
ニッコリ。
な!何でそうなるの?!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




