メイベル
今回はシリアス、説明回です。
メイベルは、エルセリア魔導学園の在る国の隣国 ジェルマ王国の出身である。
父マーベリック伯爵は軍人で、遺跡の調査中に魔獣に襲われ亡くなった。
その時、メイベルはまだ5歳。6つ上に姉が居た。
母は未亡人になり、小さな領地は父の弟に譲り、実家へ二人の娘と共に戻る。
実家には祖父母と、母の弟がいた。
母と姉はおっとりした気質で、あまり考えていない所がある。
貴族とはいえ、一気に三人も食い扶持が増えるのは祖父母の負担になる。
そう考えたメイベルは幼い頃から、自分はしっかりしなくては、と決意した。
身の回りの事は自分でやり、礼儀作法も勉強も頑張った。
それどころか、祖父にくっついて領地を回ったり、領地経営の話をしたり。
姉のドレスの着付けも、侍女の様に手伝うので、使用人達は苦笑いした。
祖父からは「男の子だったら良かったのに」と何度も言われた。
姉は、妹のメイベルの目から見ても美人で気立てが良い。
彼女が笑うと場が華やかになる。
一方で、自分は理屈っぽく、可愛げがない。
縁談は無理だと勝手に諦めた。
メイベルが9歳の時、先にデビュタントをした姉は、いきなりモテた。
十数家から花束や贈り物と共に、貴族子息が次々と屋敷に訪れる。
人の良い姉はそれ等一人一人に、丁寧に対応してしまったから、さあ大変。
彼らは姉に熱を上げ、数カ月後に、姉を取り合って決闘騒ぎ。
果ては顔立ちから妹のメイベルを特定し、誘拐して脅迫する犯罪まで起こしてしまった。
(おかげでメイベルは、人前で素顔を晒すことがトラウマになる。)
最終的に、それを治めたのは王族である。
皇太子が姉をかっさらって行ったのだ。
皇太子の魔術指南役が父で、幼い時に家に遊びに来ていた。
所謂、幼馴染と言うやつである。
姉と皇太子は婚約をすることになった。
そこからメイベルと母と姉は、生きる世界が変わってしまった。
まず、家格が釣り合わないということで、王国は幾つかある公爵家に姉の養子先を探した。
すると、夫人に先立たれた公爵が名乗りをあげる。
政治勢力的にも中立な公爵家だったし、その上、公爵家は母も後添いに欲しいと言い出してきたので、渡りに船である。メイベルの母と姉は快諾した。
実は、公爵家は子供がメイベルよりも幼く、母が必要だったのだ。
メイベルは、母と姉に請われて、公爵家に養子に入った。
新しく出来た弟妹は四人。5歳の長男と、3歳の次男と双子の乳飲み子。
母は乳母や使用人達と一緒に四人の子の世話に追われ、メイベルは姉の妃教育に付き添った。
妃教育は多岐に渡る。
外国語、世界情勢、地理、歴史、護身術、ダンス、マナー、縫い物等……
祖父母の計らいで、社交デビュー前、ずっと家庭教師に勉強は教わってきた。でも、比べ物にならないくらい覚える事がある。
姉は勉強が嫌いではなかったが、一人で受けていると気が滅入るようだった。
メイベルは姉の勉強を手伝い、姉が落ち込むと皇太子との逢瀬を取り持つ事まで行った。
妃教育を始めて2年。
姉が18歳になり、晴れて皇太子と結婚する。
メイベルは12歳になり、新しい父とも、弟妹とも仲良くなっていた。
だがメイベルは、このまま公爵家に居ても良いものか、気が引けていた。
姉が結婚した今、自分はこの公爵家に必要ないと。
そこでメイベルは一世一代のワガママを言う事にする。
「エルセリア魔導学園へ入りたい。」
学校はジェルマにも幾つもあったが、エルセリア魔導学園は実父の母校である。
何度も家族会議を行い、「離れたくない」と反対する家族。
しかし最後の決め手は、また皇太子だった。
「エルセリア魔導学園は入学試験がある。
王家や公爵の名を出すと無試験で留学できるが………。
偽名で受験してみればよかろう。
受からなければ入れん。受ける前から反対しても仕方ない。」
そういった経緯で、メイベルは偽名でエルセリア魔導学園の入学試験を受け、合格したのだ。
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余談ではあるが、ロズウェルは、メイベルの実父の後輩で、教え子でもある。
実父は高名な結界師で、遺跡の封印、解除に定評があったので遺跡の調査に駆り出された。
メイベルはその血を受け継ぎ、結界の才能が現れたというわけだ。
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