厨二病の弱点
少し短いです。
その頃、セシリアは寮監や見知らぬ年配の女性や男性達に囲まれていた。
「な、なに?」
テストも終わったし、意気揚々と皇太子が行きそうなカフェへ向かっている最中。
「セシリア・ルーベンス様ですね?」
「は、はい。」
その異様な雰囲気に、セシリアは息を飲む。
寮監以外、全員白を基調とした制服で、金糸や銀糸が使われている事から、結構、高価な衣装の様だ。
「……ルーベンスさん。貴方は、強力な光魔法の使い手と伺いました。」
寮監の隣にいる女性が言う。
「……いや、ま、まぁ。」
確かに、一年生で光の魔力球を詠唱なしで気軽に出せる生徒はいない。
照れたセシリアに女性は厳しかった顔を、フッと崩した。
「貴方は、聖女候補として神職クラスに編入することになりました。」
「え?!」
そして後ろの者を見やる。
女性の後ろから、長い金髪の美形の男性が前に出た。
キラキラオーラがもの凄い、絵に書いたような美形である。
「貴方は選ばれました。さぁ、行きましょう。」
そうニッコリ微笑まれれば、セシリアの目は途端にハートになった。
手を出され、自然にエスコートされる。
もう、有頂天。何も考えない。
皇太子や攻略対象の事など、頭からすっかり抜けて、『選ばれた』『聖女候補』『イケメンにエスコートされる』というワードにセシリアは夢中になっている。
そしてそのまま、馬車に乗せられ、セシリアは学園をあとにした。
その様子を、数名の者が建物の窓から見ていた。
その中にいた皇太子は、ホッと一息、安堵の溜息を漏らしたという。
ーーーーーーーーーーーーー
「今頃、神職クラスの担当が、セシリアを移送させている。」
サミュエルは、紅茶を啜りながら言う。
聖女候補や神官候補が俗世を離れ、修行するため、神職クラスはエルセリア魔導学園の最奥、山の上の建物にある。
そこまで行くのに広い樹海を通らなければならない。
空を飛ぶ馬車で、一日はかかる距離。
もう陸の孤島と言っていい。
サミュエルは策士だ。
皇太子達と話を進めたとはいえ、セシリアの弱い言葉を的確に突いた。
『選ばれた』、『聖女候補』でおだて、『イケメンにエスコートさせる』………
この国の王室は、侮れない。
メイベルは思った。
「ところで。」
サミュエルは、紅茶のカップをソーサーに置き、メイベルを真正面から見据える。
「そろそろ、正体を明かしても良いのでは?」
ロズウェル先生が咽る。
コーヒーを吹いた。
ちょっと汚い。
メイベルもサミュエルの言う事が分からないと言うように、首を傾ける。
「何のことでしょう?」
「分からないフリをしても、無駄だよ。ああ、ロズウェル先生は知っているんだね。」
ニヤニヤ笑いながらサミュエルは言う。
メイベルの背筋を冷たい汗が流れた。
やっぱり、侮れない。
「メイベル・フェルマー。いや、メイベル・マーベリック・フェルナンデス孃。
隣国ジェルマ王国 皇太子妃の妹君。」
サミュエルは愉しそうだ。
「兄上、第二王子がジェルマに一年、留学しててね。王宮で皇太子殿下から『義妹が留学しているから、よろしく』って言われたらしい。」
ああ。バレていた。
あの皇太子め。
メイベルは、観念したように目を閉じた。
お読みいただき、ありがとうございます。




