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シロネブリと鳥籠

 いきなり問題が発生した。

 帰宅後夕食をとり、ゆっくりと命の洗濯を済ませた後に自室へ戻ると、籠に入れていたはずのシロネブリが見当たらない。

 唐突に思い立って捕まえてきてしまったので適当な檻などなく、とりあえずの措置として昔使っていた鳥籠に入れておいたのだが。はてさて、いったいどこに消えたのか。

 針金と針金の隙間の幅は私の指先と同じ程度であり、手のひらサイズのシロネブリが通れるとは思えない。

 出入りの扉の鍵はきちんと閉まっているし、籠の中身は必要かどうか不明なものの暫定的に置いてみた水入りの浅い小皿だけなので、隠れられそうな場所もない。

 これはもしや、知られざるシロネブリの能力の一端を早々に発見してしまったのではないだろうか。

 姿消しの魔術か、あるいは縮小化? さすがに転移はないだろうが、シロネブリとて歴とした魔物だ。魔力を持つから魔物なのであり、魔力を持たなければそれはただの動物なのである。つまり、シロネブリが魔術を使ったとして、それはなんらおかしなことではない。


 とにもかくにも、逃げ出してしまったシロネブリを見つけないことには話が進まない。幸い、念のためにと張っておいた結界があるためシロネブリはこの部屋から出られないはずだ。

 もし部屋の中にいなかったら? そのときは素直に負けを認めよう。私の結界よりもシロネブリの逃走術が優れているというのなら、それはそれ。また別の個体を探してきて、今度はその術の研究をするまでだ。未知の術を調べるのは、いつだって楽しい。

 はたしてシロネブリは部屋にいるのか、いないのか。年甲斐もなくわくわくしながら魔力探知の魔術を使う。

 ――――いた。

 本棚の一番下、今ちょうど枕元に置いてある読みかけの本が入っていた隙間に潜り込んで隠れている。

 さすがに結界は越えられなかったのか、それともそこまで逃げる気はなかったのか。シロネブリの心の内など私に分かるはずもない。

 孫の手を取り出し、シロネブリを本棚からかき出す。コロリと転がり出てきたところを摘み上げて手のひらにのせれば、おとなしくじっとしたまま動かない。されるがまま一切の抵抗を見せないのは何故なのだろう。捕食される危機感などは覚えないのだろうか。

 シロネブリに関する疑問が増えていくが、観察を続ければ追々分かるようになるだろう。とりあえずの所今解明したいのは鳥籠からの脱出方法だ。


 鳥籠を机の上に置き、その中に再びシロネブリを入れる。

 いったいどのようなすべでもって脱出を図るのか。一瞬たりとも見逃すまいと、じっと視線を注ぐ。

 籠の中のシロネブリは、しばしうろうろと――――そういえば、シロネブリには足がないがどうやって移動しているのだろうか。また一つ疑問が増えた――――ふちに沿って動いてから、おもむろに柵へ体を押し付ける。

 にゅるん、と。搾り出されるように変形しながら、シロネブリが隙間を通り抜けた。

 あっけにとられ思わず目が点になる私を気にも留めずにシロネブリは直進。鈍足ながらもえっちらおっちら机の端までたどり着いたところで、ようやく我に返った私の手により捕獲され再び手のひらの上へと帰還することとなった。



 観察結果「シロネブリの体は存外に柔らかくできている」

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